「ミロ展」でひかれた作品をいくつか取り上げるつもりで延び延びになってしまった。
この2枚は1917年ジュアン・ミロ(1993-1983)が24歳の作品である。初期の作品である。いろいろと試行錯誤の時代だと思う。
第二次世界大戦が膠着状態から終焉にいたる時期につくられている。
私はこの作品が今回展示された初期の作品群の中で一番印象に残っている。ふたつの作品は明るい色調と暗い色調で正反対の印象があるが、共通点がある。構図上もよく似ている。空や雲の配置、うねるような地面や畑の表現と、それらと建物の配置の類似である。
同時にうねるような土や畑の表現に私は「紫」の効果的な配置がとても気に入った。紫の色はこれ以降の作品からは消えてしまう。少なくとも今回の展示の作品には出てこない。紫の本の少しの色調の違いや黒の縁取りで画面がこんなに明るくも暗くもなるものかと驚いた。
解説によるとミロは「一枚の草の葉には、一本の木や山と同じだけの魅力がある」と語ったという。ふたつの作品に出てくる緑や黄の微妙な色調の変化もむろん見比べると変化に富んでいて見飽きることがないが、同時に紫の色がそれを引き立てているのに驚く。
一つの色の配置が作品にさまざまな表情を与えるいい見本のように思えた。使われている色彩は多くはないが、実に豊かな表情に見える。