早咲きのサクラ以外にも街のあちこちでサクラが咲き始めた。一昨日の冷たい雪と雨でいったんは身を縮めてしまったような気もするが、やはり咲くときは自然に組み込まれた体内時計に従って咲くのであろう。
★つなぐ手にをさなの湿り夕ざくら 千代田葛彦
★目瞑りて眠るにあらず花のもと 下村梅子
★水の上に花ひろびろと一枝かな 高野素十
第1句、サクラを詠むとき、空気や水は思ったよりも冷たい、というような読まれ方が多い。例えば「手をつけて海のつめたき桜かな 岸本尚毅」のように。しかし小さい子どもの汗に濡れた温かな手がこの句ではとても似つかわしい。特に「夕ざくら」であることが、遊びまわったこどもの底知れないエネルギーと、サクラの旺盛な花を咲かせるエネルギーとか響き合っていないか。こどもと手をつないで初めて実感できる体験である。父親としての驚きも感じる。
第2句、目を瞑ってサクラの旺盛な生命力を感じているのだろう。春の陽射しや暖かみなど春の躍動感を静かに感じている姿勢が私には好ましい。「眠るにあらず」という語が上滑りしていない作者の感情を丁寧に表現していると思った。このような句をつくりたいものである。
第3句、一見あまりに写生的過ぎて、一度は敬遠してみた。しかし、川の護岸から秘話に向かって大枝を伸ばしているサクラではなく、ひろびろと伸ばしているのは「一枝」であるという。若いサクラの樹なのかもしれない。若いがゆえに「ひろびろと」なのであろう。よくこなれた作りの句なのではないか、と思うようになった。
★つなぐ手にをさなの湿り夕ざくら 千代田葛彦
★目瞑りて眠るにあらず花のもと 下村梅子
★水の上に花ひろびろと一枝かな 高野素十
第1句、サクラを詠むとき、空気や水は思ったよりも冷たい、というような読まれ方が多い。例えば「手をつけて海のつめたき桜かな 岸本尚毅」のように。しかし小さい子どもの汗に濡れた温かな手がこの句ではとても似つかわしい。特に「夕ざくら」であることが、遊びまわったこどもの底知れないエネルギーと、サクラの旺盛な花を咲かせるエネルギーとか響き合っていないか。こどもと手をつないで初めて実感できる体験である。父親としての驚きも感じる。
第2句、目を瞑ってサクラの旺盛な生命力を感じているのだろう。春の陽射しや暖かみなど春の躍動感を静かに感じている姿勢が私には好ましい。「眠るにあらず」という語が上滑りしていない作者の感情を丁寧に表現していると思った。このような句をつくりたいものである。
第3句、一見あまりに写生的過ぎて、一度は敬遠してみた。しかし、川の護岸から秘話に向かって大枝を伸ばしているサクラではなく、ひろびろと伸ばしているのは「一枝」であるという。若いサクラの樹なのかもしれない。若いがゆえに「ひろびろと」なのであろう。よくこなれた作りの句なのではないか、と思うようになった。