ある町工場。大阪とともに工場も人間たちも疲れ始めている。屋上にある立派な庭園を老父母の要望でエレベータ造りにするため大改造することになる。今までの手作りの我が家の歴史、思い出、すべてが消えてゆく、、。
高橋はある工場を一つのモチーフに、人間の生きてきた営み、その喜び、苦しみを切り取ってゆく。
それらは観客の心と重なって融合し、舞台の終わり近くになったとき、自分の心が暖かく、そして濡れていること . . . 本文を読む
学生演劇では珍しい自前の脚本で舞台を仕立てる劇団である。若い人の脳裏にあるものを中心に劇は創造されるんだろうが、今回はだらだらしたある夏のSF研究部室から起こる空想劇を仕立て、見事にオモシロ演劇になっている。
その自由さがいい。のびのびと広がる若い人の特権のような青い空。そのまた奥を行く飛行機雲。そんな感じかな。大道具仕立ても立派。まず舞台を見て目を見張るほど。ほとんどの演劇部員が出演しているの . . . 本文を読む
困惑する題名。難しそうな気配。翻訳劇だろうなあと思ってみてみると、雰囲気はまさにそうで、けれどとても面白く作ってある。戦争という極限にいる者たちの平和と不安と時間のリフレイン。これはなかなかすごい!
衣装を風のたなびきに任せた演技が印象に残る。このシーンが中盤と終盤に2度あり、閉塞感の永遠性が示される。面白い。感動的。人間の営みの悲しさをよく表していた。
俳優陣は匿名劇団のお二人がやはりセリフ . . . 本文を読む
太陽ではなく月が全体のモチーフとなっているのがみそです。
登場人物はみんな繊細な神経を持った優しい人たち。どこにでもあるような、どこにでもいるような人たちが繰り広げるストーリーなんだが、逆にこういう設定の演劇が珍しいのか、本質の展開に入っていくのに時間がかかった。
中盤からは彼らの気持ちは手に取るようにわかるが、でも自分の気持ちがそこまで浸透できない何かを感じてしまっている。なぜだかわからない . . . 本文を読む
小さな劇場公演だが、中身はどっしり演劇臭が詰まっている秀作劇です。夫婦という仮面の中に息づく人間のもろもろの本性を暴いてゆくその手法はやはりアメリカ、イギリスの方が優れていますね。
この種の劇は映画化されているようで、この作品も「地獄のパーティ」として上演されたらしいが見逃している。古くは「ヴァージニアウルフなんか怖くない」など、作家は違えど、名作もあった。この作品のマイク・リーといえばイギリス . . . 本文を読む
シャンソンが全編流れる。何かノスタルジア多きバーでの出来事。登場人物が13人と多く、観客としてはそれぞれが消化できない感じもする。エピソードの積み重ね風演劇という設定だが、狙いはいいと思う。
でも90分位これだけの話を入れようとしたら、ちょっと詰め込み過ぎ感がないでもない。ラスト近くになってすべての真実がわかる展開だが、なるほどそうであるなら、ランタイムをもっと長くするか、それか敢えて何人かの話 . . . 本文を読む
ピーターパンのお話。だが、作が別役実だからまともなわけがないと思って、鑑賞する。そしてそれは当たる。かなりあちこちで別役の一流エスプリが散らべられているのだが、さすがこれは子供向けのミュージカル、それはそれほど目立たず、劇は進行する。
でも、だって、ピーターパンは少年ではなく、初老のおじさんなんですぞ。もうそれだけで、別役の意図がわかるというもの。全般において楽しかったけれど、やはり生きてゆくこ . . . 本文を読む
ウイングフィールドという小さな劇場だが、さすがグランドロマン、この劇場を使い切っていて、90分あっという間だった。
演劇論に至る結構まじめな試みをこの劇団一流の昭和時代のつぶやき風をぶつぶつ吹き回し、ウフフと笑わせる仕組み。ただ、そんなエスプリも、考えていたら劇はさっさと先を進んでいるので、置いとけぼりに遭ってしまう。
テーマは演劇の8・1/2だと思うんだが、途中で教育現場が入ってきたり私は整 . . . 本文を読む
若い劇団。総勢11人ほどで、小さな舞台を大きく見せるテーマがいいね。
話は、なんとなく途中で分かってしまうが、でも若い人たちが昔物語よろしく日本の伝統の妖怪たちや妖精を現代によみがえらせたのがうれしい。2時間近い劇だが、みんなセリフにとちりもなく、練習十分。主人公の少年も途中までは女性と気づかないほど少年してた。みんなうまいね。
敢えて言えば、あの豪華絢爛な妖怪たち、ダンスでもあればなお良かっ . . . 本文を読む
土田氏の作品だから見ておこうと見た演劇でした。とても卑近な話で、また会社勤めをしたことのある人ならだれもが悩む事柄を、実に等身大の距離感覚を持って演じられました。
登場人物がみんなキラキラ輝いており(それなりにみんな影を持ってはいるが)、2時間強の劇はアッという間に終わってしまう。いい小説を読んだ後に残る読後感もさわやか。素晴らしい演劇でした。
前半からちょっといい加減人間めいた役柄だった人た . . . 本文を読む
旗揚げ公演でここまで完成度が高いとまず驚きます。設定は少々異常だが、不気味で哀しい現代をしっかりと描いていると思う。時間も90分越え。立派だねえ。頼もしい劇団が誕生した瞬間をしかと見た。
暗幕が始まる寸前に使用した小道具をすべて大切に堀炬燵のような空間に放り込む。これが面白かった。最後は主人公までも同じく空間に放り込む。これは何を意味するのか不明だが、今まで見てきた劇では皆無の手法だ。次作がもう . . . 本文を読む
幼稚園の大きなイベントが終わり、後片付けをしている先生たち。何気ない会話がとても高尚で、私には天から聞こえる啓示にも思えるほど、ひとつづつセリフを噛みしめ聞いている。幼児とはいえ、相手をよく見ており、知っている。
途中、バタバタする小事件が続くが、全体として、この劇は一つのポエムだと思えてきた。詩情が流れているのだ。美しい。けれどところどころ怖い。いい劇だ。敢えて言えば、どこかに笑いもあればなお . . . 本文を読む
学生演劇、もちろんみんな若い、若いからこそできる芝居もある。ところがこの劇、いたっておじさん風設定の怪盗黒頭巾こと朧小僧のお出ましだ。500年先の月よりの使者も駆けつけ現代風をアピールしているが敢えて昭和風時代劇ともいえる。
でも楽しいのだ。時間はゆうに2時間を超えるが、気にならない。俳優陣も総勢30人ほど。タテも練習十分、気迫がみなぎっている。敢えて言うと、後半がエンタメ十分なのだがが、前半は . . . 本文を読む
総勢18人による架空の国の戦乱もの、というか全編ファンタジーゲームを見ているかのよう、目まぐるしく変わる話が一つ一つ魅力的だ。
私のような老爺からはヤング好みの演劇だが、それがとても分かりやすく見入ってしまった。それはみんなセリフのトチリもなく、練習十分だということ、さらに俳優陣のそれぞれの役割もきちんと描けていて、主役が何人もいるかのように多彩でもあることによる。
主役の3人は言わずもがな、 . . . 本文を読む
学生演劇では既成の脚本を演じる演劇がほとんどだが、今回は立派にちゃんと脚本を書いた劇である。その本もなかなかユニーク。趣向も凝らして見栄えがする舞台である。雨蝶天さんはなかなか才能がありますね。70分、十分緊張感も切れず、いい舞台でした。
セリフ回しは少しぎこちない役者さんもいるけれど、でも聞き苦しくはない。何しろみんな大いに若い。その若さがあ全般的にこの劇のかさ上げをしている。パワーがあるのだ . . . 本文を読む