ある町工場。大阪とともに工場も人間たちも疲れ始めている。屋上にある立派な庭園を老父母の要望でエレベータ造りにするため大改造することになる。今までの手作りの我が家の歴史、思い出、すべてが消えてゆく、、。
高橋はある工場を一つのモチーフに、人間の生きてきた営み、その喜び、苦しみを切り取ってゆく。
それらは観客の心と重なって融合し、舞台の終わり近くになったとき、自分の心が暖かく、そして濡れていることに気づく。人は毎日を生きているが、死ぬことで生きることを確認しているのだという。死んでいった先人たちを想いながらも、自分自身の時間が流れていることを確認する。
妹役の徳田はいつも通り、的確な演技。光と影。陰影ののあるすばらしい演技でした。
南河内万歳の福重はいつもとは全く違う人間像を出していた。生きることに否定的な嫁との夫婦愛をやさしく見つめている。愛があふれている。新しい福重を見る。
休日の午後の舞台。75分。それはポエムのようでもあり、まさに切り取られた自分自身の時間の投影でもあった。秀作でした。
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