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ガールフレンド・エクスペリエンス (2009/米)(スティーブン・ソダーバーグ) 80点

2010-08-11 15:23:27 | 映画遍歴
『トラフィック』以外、僕と相性の悪い【ソダーバーグ】の新作。さて今度はどんな作品を、と思っていたら何と40年ほど前に時間を遡ったかのような懐かしきアート映画であった。

所は文化、経済の中心地ニューヨーク。所得多きビジネスマンは高級エスコート嬢を得て日夜仕事に励む。男たちと接するチェルシーもある意味すべて男たちと対等だ。へりくだることなく報酬は受けるが、ただ悩みを聞いてあげるだけの女の子ではない。セックスも食事も、ビジネス会話もお金ですべてを解決しようとするニューヨーカーたちの欲望を知り抜いての成果に対しての報酬である。

とてつもなくクールで美貌の【サーシャ・グレイ】。もう見ているだけで醒めたビューティを感じさせる。そこらの映画女優にはいない種類の超美人である。まさにアドリブ的なセリフの多い画面展開。今流行りの時間軸の多様さ。そして緻密なデジタル映像カメラで撮ったピカ一のニューヨーク光景。もう見ているだけで耽溺している自分を感じる。

意外や、この、現代でも実験作と見えてしまう映像処理は、1960年時代後半ではヨーローッパで多用された技術でさえある。例えば【アンナ・カリーナ】をただカメラで追いかけ回して撮っていた【ゴダール】を思い出してしまう。あの、ドキュメンタリー手法である。

ただ、【ゴダール】と違って【ソダーバーグ】は生身の人間に拘っていない気がする。この超セクシー女優にしてセクシーさから、うんと遠ざけている。彼女もそれを楽しんでいるところがある。すなわちこの映画からはセックスの匂いがしない、むしろセックスを欠落させている。そういうシーン自体ない。そこから浮かんでくるのは、現代ニューヨーカーたちの殺獏とした漂流光景だけである。

金を得る女と金を放出する男。それは現代においてはセックスではなく、むしろビジネスの一形態に他ならなくなっている。そんな、虚無感まで感じられる【ソダーバーグ】の新作である。僕はなかなか面白く拝見しました。

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