ご当地映画、低予算という制約の中で、製作者のこういうものが作りたいなあという想いが随所に表れていると映画だ思う。前半部は少々演技的にも美術的にもぎこちないところがあったように思うが、香川の100年を観客も共有するうちに、ずっぽりその世界に入り込んでしまう仕掛けがいいね。
50年前の哀しき恋愛もなかなか琴電といういい素材を使いすこぶる美しい。抒情的である。ちょっと水彩画過ぎるような気がしないでもなかったが、弁当という素材も生きている。
圧巻は琴電の電車内での100年イベントだろう。これはむくるめく時代を映し、人間の営みを悲しいまでに伝えてくれる。100年前というと、大震災後の不景気、日本国が戦争にまっしぐらに進み行く暗い時代であった。
多数の登場人物の中でも、夫を戦争で亡くし、弟との結婚を拒否しながらもそのまま嫁いで来た家に残った小林トシ江が印象に残る。やはりこの女優も日本映画を支えてきた重要作品に出ていた人だから、眼力が違いました。ある意味だからこそ浮気味ではあったけれどさすがです。
ただ100年と言っても1970年以降は短いショーみたいでこの時代に1910年以降との重みを比較するとそもそも軽いのか、それとも手を抜いたのか、ただ時代を駆け抜けてしまったかのようなイメージで少々残念でした。
木南晴夏とミッキー・カーチス との取り合わせも初々しく素敵で安心して見ていられました。佳作ではないでしょうか。いい映画です。
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