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ボローニャの夕暮れ(2008/伊)(プピ・アヴァティ) 80点

2010-08-05 14:37:59 | 映画遍歴
ちょっと不思議な映画なんですね。まずベースはイタリアの戦争末期の解放期。レジスタンスとムッソリーニ体制側との闘争。そしてレジスタンスによる体制側への処刑。日本では想像できないぐらい激動期でもあった。

そんな不安定な時代に、娘可愛さのためボーイフレンドまで買収するぐらい娘を溺愛する父親。美貌であるがゆえに家庭の鞘に納まらない妻。そんな母親を無意識に嫌悪する娘。そして情緒不安定な娘は恋愛騒動を起こし恋敵である友人を殺してしまう。

普通の家庭の設定では全くない。でも、映画の雰囲気がいかにもイタリアの庶民の普通の姿を浮かび出させる。娘に一度も面会に行かない妻。それを気にする娘。娘が病院に入院すると転地までして娘に尽くす父親。やはり普通ではない。変だ。

さらに父親は大親友に妻を任せて娘の下に去ってしまうのだ。妻の気持ちを察知していたという夫の勝手な行動。けれど妻は従い、残る。映像は淡々と庶民の生活を綴っている。色彩もちょっとカーキー色で、いかにも戦時中というイメージの映像だ。

戦争も終わり、妻と暮らしていた男は体制派だということでパルチザンから処刑される。妻は男を見殺しにする。女には愛情というものが欠乏しているのか。ただのエゴイストなだけなのか。驚くシーンである。

娘はやっと病院から退院する。そして父親と元のアパートに戻る。勿論、妻はもうすでにいない。妻のいない夫。母親のいない娘。寄り添うようにつつましく生活を始める。そして、、。

と、本当に分かりやすい映画なのだが、淡々とした描写の中に人生の真実を描いたものすごい映画だとも思えるし、ただ自信のない男が家庭をむしろ潰してしまったやり切れない映画とも取れる。母親と娘の確執は【ベルイマン】も『秋のソナタ』で描いたように本源的なものなのかもしれない。

でも、やはりダメ男が一つの家族を壊してしまっていたのだと僕には思える。映画では不思議なことにこの家族はまた再生するのだが、それが一番異常なことのように僕には思えた。深い映画とも思えるが、むしろちょっとキモイ映画のようにも取れる。実に何とも不思議な映画であった。

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