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カインの末裔 (2006/日)(奥秀太郎) 80点

2008-07-23 19:29:28 | 映画遍歴
ものすごく暗い映画であります。全編通してずっと暗く、最後まで救いのない映画であります。これほどの暗い映画を見るのも久しぶり。でも、最後まで集中力を欠けさせない秀作でもあります。

川崎の外れの工場街のスモッグと臭気と人いきれが強烈なエネルギーを伴いこの映画の全編を覆っている。青年が集塵の街を歩いている。ジャンパーで頭を覆っている。

青年は親殺しで少年院に長くいたようで今日就職先の工場に出向いている途中だ。道路際で車が揺れている。セックスに夢中の男女。青年は興味深げにそれを見つめている。醜いなあと思う。人間って汚辱にまみれているように思えてしまう描写だ。

ハンダ付けの連続という単純作業の仕事内容。映像がほとんど出ず音声だけの壊れ気味テレビ。監獄より狭く劣悪な青年の部屋。工場街での最低生活の様子。見るだけでへどが出るまさにこの世の末。

現実はこんなに苛酷なのか。毎日を生きている現実は僕らは見て見ぬふりをしているだけで実際は地獄模様なのか、、。青年は過去に殺人を犯している。さらに今、新たに偽造ピストルで間接的に殺人に関係している。カインが人類史上初めての殺人者だとされているから彼はカインの末裔なのである。

セックス描写が過激でかなり驚いてしまったが、描かれている現代の過酷さに比べたらバランスは保たれている。ラストの映像もスタイリッシュで美しい。この映画で唯一の美しいと思われる描写であります。青年の殺戮シーンなのに美しいというのもこれまた自虐的な屈折感がある。後になるほど強烈なイメージが蘇る恐い映画であります。

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