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レッドクリフ part II 未来への最終決戦 (2009/中国)(ジョン・ウー) 75点

2009-04-18 10:31:13 | 映画遍歴
有名な三国志を材料に多少主役を変え人間味豊かな、且つ手作り娯楽作に徹した大作だ。

この映画のミソは今まであまり歴史に登場しなかったトニー・レオンとその妻リン・チーリンの抜擢であろう。この二人が脚光を浴びることにより赤壁の戦いがフィクションとしてジョン・ウーの独自性を発揮することになる。

しかし、まあトニー・レオンと金城武の2大スターの出番が多いのは仕方がないが、レオンの主君チャン・チェンが全く人形になってしまったのはいたたましい。もっとセリフ的にも色づけは欲しかったところだ。

逆に女性がこの映画では変に活躍する。レオンの妻リン・チーリン。誰が見てもぞっこん美しい。中国の秘蔵っ子女優だろう。彼女が夫にも言わず俄然一人で敵国に乗り込むなんて、漫画っぽく驚いたが、色気で勝負ではなく茶道で敵の君主を陥れるなど思い切り過ぎとも言える大サービス。史的にはあり得ぬハナシだが、見せ物映画的には十分面白い。

もう一人の女性、チャン・チェンの妹役のヴィッキー・チャオ。彼女も一人敵地にまぎれて隠密工作員をやり遂げる。映画では戦は情報の早い方が勝ちと言うところか。うまく、鳩を使っている。現代版レーダーだ。

これほどの大作なれど、不思議なことに泣き所がチャオと蹴鞠の達人である青年の痛切な別離というシーンだけだったのも少々腑に落ちない感もする。

でもウーはこの映画でハリウッド映画を目指さなかった。CGを極力避け、生の人間の行動に終始する。映像に映るはびゅんびゅん飛び交う銃弾ではなく、紛れもなく動き回る人間の身体だ。ボタン一つで発射するゲーム感覚の戦争ではなく、風の向き一つで作戦が変わる自然への愛着だ。生の人間像であった。

この映画を見ていて思う。戦争って、敵も味方もなく、ただ相手が憎いからではなく、ただ人を殺し合うだけのことだ、と。悲しい性だと思う。人間って悲しい。でもそこには真実のぶつかり合う本当の人間がいることに気付く。

また一方、病死した兵士を敵地に送り込み伝染病を蔓延させようとする非情の君主とは別に、病人をいたわる人間性を持つ君主の姿もある。同一人物である。果て、好色心が存在し、戦時の重要な一時を惑わされる君主の辛らつな姿がある。滑稽でさえあるが、しかしそれもそれなりに人間味が感じられるではないか。

レッドクリフというよりレッドブレイズというべき一面の火焔の戦場風景。その延々たるリフレイン。確かに映画的な美は感じるが、やり過ぎの感もないではない。

また、パート2で期待していた劉備や張飛、関羽、趙雲などのアクションシーンなどはおざなりだったが、主役ではないから仕方がないのかなあ、少々残念。

とはいえ、全体的に冗長といえばそう言えないこともないが、人間臭むんむんたる古代の戦闘絵巻はそれなりに楽しめました。ジョン・ウー一流の人間復古映画なんだろうなあ、と思う。そういう意味で快作です。

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