セントの映画・小演劇 150本

観賞数 2025年 映画 06本、 演劇 06本

彼女が消えた浜辺 (2009/イラン)(アスガー・ファルハディ) 80点

2010-09-25 16:10:45 | 映画遍歴
あの、浜辺で聞こえる波の音。それは不安感を募らせ見ている者の神経を逆撫でする。

見終わってから、僕は2時間ずっと波の音を聞いていたような気がするのだった。単純な話なのである。イランではタブーなんだろう、未婚の男女を家族旅行に誘う。しかも泊まり込みで。それはイランでは宗教的にも許されない行為なのだろう。

だからこそ、婚活サポーターの主人公は家族にも彼らが婚約者同士であるように装う。この常識では考えられない行為がこの映画のキーの部分である。何もそこまでやる必要のないことをやらせる。

やはり気が進まない女は帰りたがる。当たり前だろう。しかし、映画はなぜか主人公が女を帰らせないようにする。何で?

観客は苛々する。

波の音が高まっている気がする。

そして、夜の長い時間を紛らすジェスチャーの退屈な時間を延々と見させられる。

観客は苛々する。いい加減にしてくれ。

そして怖い子供だけの海水浴シーン。何故男たちはどうでもいいビーチバレーに興じているのだ。苛々する。波が高いじゃないか。

厭だ。いやだ。イヤダ。こんな映画見なければよかった、と思う。

そして映画はこの苛々を延々とラストまで続け、観客をぐったりさせる。

これは練りに練られた心理スリラーである。観客は否が応でもそれに嵌まることになっている。仕掛けがあちこちに埋め合わされている。

波の音が急に止まり、そして事件も終わる。当たり前に女は死んでいたが、それも普通、日常よく見るドラマの一部なのだ。

厭な映画から解放される。でも、この2時間の異常な厭な心理的興奮は何なのだ。

新しいイラン映画である。監督の策略に観客は否が応でも嵌められる。

でも、やはり秀作なのである。それが映画なのである。後々残る映画なのである。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« シークレット (2009/韓国)(... | トップ | 十三人の刺客 (2010/日) 80点 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

映画遍歴」カテゴリの最新記事