セントの映画・小演劇 150本

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セラフィーヌの庭 (2008/仏=ベルギー=独)(マルタン・プロヴォスト) 80点

2010-09-18 13:38:26 | 映画遍歴
映像を前面に出した演出方法がいい。前半は特に敢えて説明を省き、ほとんど映像でぐいぐいと引っ張っていく。映画とは小説ではないのだから、なるべく映像で説明すべきと僕は思っている。そんな映画の文法の教科書でもある作品である。

その映像の何とりりしく優雅なことよ。どこのシーンを取っても一流の絵画である。素晴らしい感性を持った作品である。風にそそぐ木々の葉の揺れが命の揺らぎを感じさせる。

画家とは何なのか。自分で絵具を調達し、自分の色を作り、キャンバスも木で作る。そして本当の自分の気持ちををキャンバスにぶつける。出来上がった芸術品が万人に賞賛されるかどうかは別として、自分の頭の中にある何かをキャンバスに投げ出したものが絵画であり、原稿用紙にぶつけたものが小説であるのだろう。

そんな、芸術の本質のようなものをこの作品では感じることができる。だが、この作品の芸術家は現実をそのまま直視することのできない繊細過ぎる人であったがために、狂気の世界に入ってしまう。けれど、何枚かの絵画はしっかりと後世に残したのだ。

最近の映画ではちょっと孤高の作品であるように思う。僕はこの作品の、色、構成、枠、本当に映画本来の基本に立ち戻ったかのような出色の出来に、まだまだ映画はいつでも原点に戻ることが出来るのだ、と淡い喜びを持った。何故なら時代は過ぎても人の心はそれほど変わることはないという期待を持っているから、、。

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