幕が開く。最近はこういう幕がない演劇も多いとふと考える。目の前にあるアパートの2室。シンメトリーの部屋だ。精緻だ。思わずため息がつきそうだ。観客に向かって縁側まで用意してある。これがタニノ演劇なんですね。もう目がきらきら光ります。
2組の部屋の住人の話である。どこにでもころがっているような、けれど真実の日常がとくとくと描かれる。みんなけなげに生きているが、ゆとりはない。普通の人々の日常に潜む喜びと苦悩。何気ない会話と仕草でしっとりとこちらに伝わってくる。
超リアリズムである。演劇の中の、まるで映画のようでもある。演出自体が実にきめ細やかなのである。もちろん映画のようにカットはないが、時折幕間があるその時がカットのようでもある。
ひたすら演劇のすごみを体験する2時間。これは本当にすごいものを見た感が強い。この劇を見たことを恐らく忘れることはないだろう、、。秀作。
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