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本谷有希子さんの作品は演劇ではすこぶる面白いことで定評があります。常に狂気をはらんでおり、見る者を即ジェットコースターに連れて行ってくれる。そして今回は映画です。実に等距離から寧子を見つめています。
冒頭からのあの僕らを苛立たせる寧子は鬱の症状なんでしょうが、ある程度慣れてくると精一杯の彼女の自分を守る防御なんだということ分かってきます。同棲中の男も実は心に闇を持っている現代人の代表のような男であり、この二人の関係は原子構造でいうと原子核と電子のようであるとも言える。いわゆる似た者同士でもあり、二人で一人の人間の存在のようなものです。
僕が一番あれっと思ったのは、寧子がかろうじて覆っていた鎧を脱ぎかけた時、見透かされたと気づき我に帰る時です。こういう行為は鬱でなくとも我々人間には鎧という防御服を多少にかかわらず常に身に着けていますから、いやというほど分かります。
ということはこのドラマは単なる鬱を病んでいる男女の愛の形というより、私たち普遍的な人間の心の状態を無理やり覗き込んでいるようにも思えて来ます。私たち人間は鎧を外して生きることなんぞ出来ないわけですから、、。
そう、本谷有希子さんはいつも狂気をはらんだ人間を登場させてはいますが、それは取りも直さずある特殊な人たちなどでなく、私たち自分自身のあられもない姿なのです。だからラスト彼らを見て、親近感が溢れ、心情も同化してしまうのでしょう。
面白い作品でした。趣里もよかったけれど、仲里依紗の毒々しさあふれる独壇場ぶりはそれこそ我が脳裏に静かに住みついている狂気をくすぐるものがありました。
日本映画今年豊作ですね。
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