桃は、丸くてかわいらしく、豊満な体をしており、水気もたっぷりあって、実に色っぽい。
桃の皮は薄い。爪で簡単にはがすことが出来る。
薄着の娘が簡単に脱ぐようなものだ。
身を護ろうという気があまりないようだ。
果物屋では、クッションでくるんで保護している。
このような待遇を受けるのは、桃のほかには高級果物の代表であるメロンとマンゴーくらいのものである。
桃は、過保護娘で、身持ちは悪いが、むちむちしたみずみずしい体で色っぽく、男心をそそるところがある。
さくらんぼは、小さくてめちゃくちゃかわいい。
思わず、食べてしまいたいほどかわいい(食べるけどね)。
桃のような色気はないが、上品で清楚なお嬢さんといった感じがある。
棒の先にペアでぶら下がっているところもかわいらしい。
神様が、ていねいにデザインを考えて作ったようだ。
世間に出てくるのが年に1回というのも、深窓の令嬢のようで気になる存在である。
皮をむかずにすむように、皮ごと食べられるよう気を使っているところも好もしい。
それに、種飛ばしという楽しい遊びも出来る。
一方バナナはどうか。
容姿は、桃やさくらんぼよりも劣る。
果物というのは普通丸いもので、それが果物のかわいらしさ、愛らしさとなっている。
ところが、バナナは棒状である。
棒状の果物って、他にあるだろうか。
皮は厚くて、身を護ろうという気はあるようだ。
しかし、脱ぐときは桃に負けず大胆である。バナナの皮はつるりと簡単にむける。
その肌は、桃のようなみずみずしさはないが、クリーミーでねっとりとしている。
人間が食べやすいように種は退化しており、おいしくて栄養もあり値段も安い。
いじらしいまでに、人間に気に入られようとしている。
桃子ちゃんとさくらちゃんとナナちゃん、それぞれの魅力があって、私としてはどちらともお付き合いをしたい。