それを近視眼的って言うんやで:恵まれた日本の状況を理解することと、それがこれからも続くと考えるのは別の話である

2023-03-30 11:20:50 | 生活

 

 

外国に対する無知ゆえ、必要以上に自国の状況をシビアに見積もったり、事態を深刻に捉えたりする行為はまま見られるが、日本の治安の良さであったり、(値段と比較した場合の)サービスの質の高さを正しく理解することは重要である(まず最初に重要なのは、ユートピアなどどこにも存在しないと正しく認識することだ)。

 

しかし、「こんなに良い環境なのだから、一体何の不満があるのか(文句を言うな)?」という発想をしているなら、極めて近視眼的で愚かであるとも言える。

 

なぜなら、

1.その環境がどのようにして成立しているのか?

2.それはどの程度持続可能なものか?

という視点が欠落している可能性が極めて高いからである。

 

例えば配達システムに関しては、以下のような未来がすでに予想されている。

 

 

 

 

 

要するに、廉価で高度な仕組みは、他者の過酷な、もっと言えば「奴隷的」労働によって成立しているのであり、そこには技能実習生や中小の下請け企業なども含めることができるだろう(もちろん、日本だけがそういう非人間的な搾取の構造を持っている、というわけではないんだが)。

 

このようにして成り立っている今の状況は、少子高齢化による国内の人手不足はもちろん、外国人労働者の枯渇によって近いうちに限界を迎え、どんどん劣化していくことになるだろう。もちろん、そういった未来予測から例えば日本が早晩にホンジェラスのような環境になると想定するならそれは余りにも極端で馬鹿げているし、そもそも日本の現状が余りにも恵まれており、そんなレベルのサービスは必要ないのではないか、という点も大いに考慮すべきだろう。またこれは、格差拡大を問題として取り上げることは重要だが、一方であるべき姿が「一億総中流化」の頃のようなものであれば、それは福祉国家システムがすでに無理ゲーと化した昨今では絵に描いた餅でしかない=そこを基準に善し悪しを語ってもしょうがない、といった話と関連する)。

 

ちなみにこういった状況の打破はDX化などで可能になるとも言われているが、日本企業の大半を賃金を上げることすらままならない中小企業が占めている状況では、机上の空論で終わる可能性が高い(そして中小企業が賃金を上げることができないのは、安価で質の高いサービスを提供しているため、という循環構造にあるのも問題の解決を難しくしている)。

 

この他、2025年問題をはじめとして様々な状況の悪化が取りざたされており、素晴らしきものと認識している環境もどんどん瓦解していくことが目に見えている。ゆえに、「他国と比べてこんなに素晴らしい状況を理解しろ。それに何の文句があるのか」などのような見解は、単に現実逃避的な思考停止だと言えるだろう。


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