ひぐらし祭囃し編~鷹野の躊躇いとその意味~

2009-02-04 21:19:48 | ひぐらし
前回の覚書で予告したとおり、ここでは鷹野のモノローグを引用しつつそれに対するコメントを書いていきたい(なお、今回の話題に関する最も古い記事は「祭編における鷹野の扱いについて」である)。


◎野村の作戦で富竹の扱いに躊躇いを見せる鷹野(cf.「鷹野と梨花ママ、そしてオヤシロさま」)
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結局、私は彼の好意におじいちゃんの代わりを求めているだけではないのか。
祖父に甘えた。祖父が私の生きる目的を教えてくれた。それに甘えた。
小泉のおじいちゃんに甘えた。私の夢をかなえるために協力してくれた。それに甘えた。
二人のおじいちゃんが亡くなり、…私はその面影を彼に求めているだけではないのか。…私は保護者に飢えているのか…。
幼い頃に両親を突然なくしたトラウマが未だ癒せず、…常に身近に、保護者的存在がいないと心の安定が保てないくらいに、…私は幼いままなのか。
私だって医者の端くれだ。自己分析くらいできる。
…それが、いつまでも幼いままのみっともない心の表れであることくらいわかっている。
…そこまでわかっていて、…なおこの期に及んでジロウさんに保護者の姿を求めるのか。
彼の死を含む計画を進めながら、…都合よく彼の背中にすがろうというのか。
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以上の部分では、保護者に守られてきたことを鷹野自身が理解しているとともに、それについて負い目を持っていることがわかる(「甘えた」という言葉がそれをよく表している)。これはおそらく、誰かに頼ることへの罪悪感とその結果としての彼女の孤独というレベルまで繋がっているのだろう(自立と孤立、自己責任と孤独…)。そしてそのような鷹野の考え方・状況が、圭一たち部活メンバーのそれとコントラストをなすものとして描かれていることは、スタッフルームにおける作者のコメントからすれば疑う余地はない(別の記事で掲載予定)。あとはこのご時世なので付け加えると、リバタリアニズムとリベラリズム、自己責任と実力主義、派遣社員の状況etc...といったものと繋げて考えることもできるだろう。


◎善悪の彼岸
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…神を目指す反逆者のつもりなら、最後の最後まで悪党らしく小憎らしく。
…寂しがりやの少女のつもりなら、最後の最後まで少女らしくしおらしく。
そのどちらであろうとも、それが自分の生き方だと言うならば、誰にも責めることなどできないだろう。
だって、自分が正しいと信じているのなら、誰が批判しようとも耳を貸さず、その道を突き進むのみなのだから。
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ここで鷹野は自分のこれからやろうとしていることを悔い、また祖父の研究を無に帰してしまうことを悔い、さらには自分が祖父と出会ってしまったことを悔い、最後は施設を出られず死んでいればよかったのにと言うが、でもそれでも生きたい…そして症候群の発症(?)という展開になっている。

この描写は勧善懲悪的な展開を自明のものと考えながらプレイしている人たちを冷静にする意図があると思われる(鷹野の罪悪感自体は無論のことだが、彼女にあえて両極端を志向させることもまた、プレイヤーに違和感を持たせる契機となる)。これは突然出てきたものではなく、圭一が鷹野を疑うことに罪悪感を抱くシーンで伏線が張られていることに注意が必要(「陰謀の背景」を参照)。そしてここから鷹野の扱いをどうするのか?という疑問が生まれ、エンディングへと繋がるわけである。

なお、これは単に善悪の位置づけの問題だけでなく環境要因と罪の問題(症候群、トラウマなど)と絡むことも指摘しておく(どこまでが本人のせいでどこからが環境のせいなのか。そもそもそんな二項対立で考えること自体が不可能ではないか[だから鷹野は今の状況を生み出した要因を探ろうとしてメビウスの輪にはまり込むわけだし]……という具合に考えられるが、環境要因は自己正当化といった巨大な危険を内包しつつも[虐待の記憶には作り出されるものも少なくないという]、底の浅い全能感や先入観に基づいた無理解に対する有効なカウンターであり続けるだろう)。


以上で鷹野のモノローグに関する記事は終わり。次回は決戦の日について述べていきたい。

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