ゲームと現実：社会という巨大な「ゲーム」

「ゲームと現実は違う。現実には命は一つしかないし、人生もまた一回限りのものだ」という意見がある。なるほどまったくその通りである。


ところで人生が一度きりのものである以上、それを規定する要素に対して敏感になるのは当然であるように思える。取り返しがつかないものの方向性を決める非常に重要なものだからだ。さて、人生を規定する要素とはどのようなものだろうか？例えばこだわりや好みの傾向といった主体的・内的なもの、あるいは行動や思考に対する規定、すなわち常識・規範・慣習などの外的なものなどが挙げられるだろう。そしてこれらが拠って立つところを知ることは、人生を取り巻く状況を、すなわち自らを知ることに他ならない。


しかしそうすると、一回的なくり返すことのできない生を生きているのに、自らが拠って立つところ(根底にある論理やその歴史性)を深く考えようとする人間がほとんどいないのは不思議に思える。人生を規定する要素、すなわち自己の内面や時代状況の拠って立つところを考えない人間は、人生が一回限りのものだと本当に理解しているのだろうか？「ゲームとは違う」と言われながら、実のところ多くの人間が「ゲーム」の中にいるのかもしれない…そんなことを思う。なお、人生を規定するものを深く考えないくせに「ゲームとは違う」と自らが言う人間は、表層的な違いを指摘しただけで本質的な部分、つまり「違うからどうなのか」という点については無頓着であると言える。


ゲームと現実の違いを知っていると言っても、現実の一回性を理解して現実の規範などを考えなければ、違いを理解していることにはならない。そしてただ違いを知っているだけでは、結局仮初で虚ろな「ゲーム」を生きているのと同じなのだ。巨大な「ゲーム」か特殊具体的な「ゲーム」か…所詮は大同小異であると言えよう。