少子化問題について:解決は不可能…?

2006-11-20 21:44:14 | 感想など
(はじめに)
少子化問題、特に出生率の低下を社会保障などによって回復しようとする人々の意識を批判する形で述べる。なお、私は娘が欲しいと思っているし、さらに三人は子供が欲しいとも考えている。それも前提として読んでもらいたい。


(本文)
ご存知のように、日本では少子化が問題になっている(出生率が1.0を割っている韓国になど比べればまだマシだが)。さて、少子化とは何が問題なのだろうかと考えると、税金(年金など)の歳入が減り、労働人口と消費者が減って企業の利潤が減少し、地方の過疎化が促進される、などが思い浮かぶ。よってこれを個人に対して「子供の数を増やすべし」と奨励する観点で書き換えると、

政府の収入と企業の利潤が減り、地方の過疎化も進んで困る。だからもっと子供を作りなさい

となる。少々悪辣な書き方に見えるかもしれないが、つまるところ少子化の「問題」とはここにしかないと思う。だとすれば、これでは改善するわけがないと思われる。確かに政府の収入だとか企業の利潤というものは自分にも様々な形で関係してくるのであって、その意味では自分の問題とは言える。しかし、それが強い危機感として子供を生もうという個人の(そして社会の)傾向に繋がるかといったら、どう考えても無理だ。例えば昔の「産めよ増やせよ」というスローガン(?)を聞いてあなたはどう思うだろうか(そこには国家や経済への貢献というニュアンスが含まれている)。そしてそれが自らに対して言われたら?おそらくほとんどの人が拒絶反応を示すのではないかと思う。


これに対して、「社会保障とかも考えている今と昔を一緒にするな」と言う人がいるかもしれない。なるほど一理ある。しかそれでも、出生率を上げていこうという主張が「産めよ増やせよ」というスローガンと本質的には同じだと考えなければ、出生率を上からの政策で回復していく困難さは理解できない。また「自分の事ばかりでなく国家の事も考えろ」といった主張はわからなくもないが、例えば「何で子供を産んでないのか」「なぜ一人なのか。もっと作れ」と言われたらおそらく誰もが腹を立てるだろうことに思いをいたすべきだ。さらに現在は娯楽が増え、子供がいなくても、いやむしろいない方が快適に過ごせる環境ができあがりつつあるように思われる。その中で、「自分の娯楽に使う金を、政府と企業の将来のため、出産と育児に回しなさい」と言われて誰が従うだろうか、誰も従わないのである。


要するに、どれだけ煽ったり憤ったりしたところで上からの出世率の回復は非常に困難だということだ(人間の本来あるべき姿などと言って出産・育児の重要性を説くに到っては愚の骨頂と言える)。今日本には一億二千万の人がいる。この数字から「多すぎるから少し減った方がいいんじゃないの」と言われて反論できる人はいるのだろうか?言い換えれば、増え続けることが、あるいは現状維持が理想的だとする根拠を提示できるのだろうか?もし出世率を増加すべしとして人を説得していきたいと思う人はその辺りを考えていかないと、結局は遠くて感覚的な危機感にしかならず、誰も説得できないまま終わるだろう。
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