とある記事を書くついでに椎名林檎の「眩暈」を聞きつつ色々調べていたら、たまたま「作業松」というイメージソング集の動画を見つけた。
「おそ松さん」が相当な人気になっていることは知っていたので、ちょっと見てみたら・・・完全にハマりました!全体的にギャグのノリがツボにはまったことが一番大きいが、もう一つは・・・十四松カワイイよ十四松(*´ω`*)
「明るい狂人」とも呼ばれる異様なハイテンションとどこか憎めないそのキャラクターを見るのはまるで五歳ぐらいの子供を愛でている感覚になる(実はこれで20代ってとこもミソなのだがそれは後述)。
とここで俺はこの作品が特に女子から人気が出た理由が納得できた気がした。もちろん、六つ子それぞれの関係性(たとえば暗い一松と底抜けに明るい十四松はなぜか仲が良い)や女性向けアニメが少ないとか様々な分析があり、それはそれで納得ができる(人気の理由を分析したものとしては、東洋経済の記事やORICONSTYLEの記事などを参照)。がしかし、もう一つ重要な要素として、主人公たちに対する庇護の感情があるのではないだろうか?
例をいくつか挙げてみる。たとえば「日常」というアニメで最も人気を博した「はかせ」。本来頭はいいはずなのだが、まあ気まぐれというか我がままというか・・・でもそれがまたかわいいんだよ(←溺愛パパ視点)!またたとえば、「おおきく振りかぶって」や「Free」に関して『俺たちのBL論』の中で言われていること。そこでは、勝ち負けではなく頑張っている選手たちを母親的な視点(「うちの子」的感覚)で応援することに重きが置かれるようになったことが言及されている。最後にジャニーズ。今の職場にジャニーズ好きの子がいてずっと嵐を応援しているのだそうだが、成長を見守っていく中でファンであると同時に母親的な感情も持っているというようなことを言っていた。おそ松さんにはどの六つ子が好きかに関して「推し松」という言葉があるくらいだが、そこには今述べたような親的目線で応援する感情・愛でる感情が深く関係しているように思われる(ジャニーズに関しては、そもそも第一話に「F6」なるものを出してきた時点で言わずもがなだろう。あれは女子層を強く意識した作品であることを打ち出したことでも重要)。
しかし、ちょっと待てと思われる向きもあるだろう。さっきの例で言うと、「はかせ」は天才とはいえ8歳だし、「おおきく振りかぶって」や「Free」のキャラは学生である。しかし、この六つ子はすでに二十歳を過ぎた「いい大人」ではないか、と。それはまさに正論なのだが、こと人気という点に関しては、むしろそれはプラスに作用したものと思われる。
具体的に言うとこうだ。六つ子たちの絵柄は、大人だと言われれば一応納得できるが、学生と言われても十分通じるものである(キャラの基本造詣がほぼ昔のままだからまあ当然のことではある)。だから実際には成人していても、彼らの行動はどこか子供の戯れ的なものとして安心して見れる部分がある。しかし、「昔からお前ら全然成長しないねえw」・「これでいいのだ!」的な「終わりなき日常」のような話(ビューティフルドリーマー!)なのかと言うとそうでもない。第二話の「就職しよう」が典型的だが、彼らはずっとそのままでいいと(個人差はあれ)思っているわけではない。加えて、折に触れて描かれる各キャラの陰影がそれと重ね合わされる。たとえば一松なら「就職しよう」で叱られた時にすぐビビる姿やチビ太に本当のことを言えない姿は、普段のカッコつけた態度が自信のなさの裏返しであることを伺わせるし、十四松の明るすぎる様は「実はとてつもない闇を抱えているのでは?」と兄弟から疑惑の目を向けられた(「恋する十四松」や寒い時の行動変化からすると、「闇」かどうかはともかくハイテンションな行動が彼の全てでないことは確かだろう)。この他、チョロ松は序盤こそ常識人として突っ込み役を担っているが、後にそれは「チョロ松ライジング」と名付けられ、見事に梯子を外された。これは単にからかわれているのではなく、その正しい認識が全く行動には結びついていないという鋭い指摘である。ここからすると、チョロ松は常識という名の「正しさ」で自分を守っているという見方ができる。さらに「ドライモンスター」のトド松、友人を作ろうとしないのは自分に自信がないというのが本当の理由の一松etc...というように、表層が全てではないことを意識づける演出がそこかしこに描かれている(ちなみに陰影が唯一描かれてないのがおそ松なのだが、それはそれで差別化になっている。)。
この二つの要素が掛け合わされると、無邪気な、あるいは困り者の子供にも見えると同時に、陰影を抱えた大人にも見える。つまり表層(見た目・表立った行動)に萌えたり愛でたりしつつも、その背景(自己認識・関係性)に想像をたくましくすることもできるのである。このような状況に加え、六つ子間の微妙な人間関係、つまり一松×十四松やカラ松×チョロ松などを加えると、もう想像のバリエーションが多すぎてくぁwせdrftgyふじこlp
・・・しばらくお待ちください。
・・・もうしばらくお待ちください。
ただいま戻りました。
つまり、おそ松さんたちが子どもっぽいと同時に「いい大人」でもあるのは、そのギャップを意識した描写とも相まって想像力の余地を大きく残すこととなり、これが人気の要因になったのではないかと思われる。まとめると、昔のままのビジュアルで「おそ松くん」をリニューアルしたこと、しかし成長はしていること、そのギャップによる陰影を意識した話を盛り込んでていること、女子層をターゲットにしたこと、これらが上手くかみあっておそ松旋風とでも言うべき大人気につながったのではないだろうか。
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