私はエロコンテンツの話をよく書き、風俗にもバンバン行く人間だ。だからというわけでもないが、別に自分が女性なるもののよき理解者だとは思わないし、また努めてそうなろうとしたこともない。
しかしながら、セクハラやレイプ被害に対する「お前にも責任がある」的発言には違和感しかない。これについては、瀧波ユカリが「女性に『身を守れ』というアドバイスが的外れすぎると気づいた話」で描いている話が興味深い。
彼女は、「女性に自衛を促す声は多い」として次のように絵で描いている。
①夜にひとりで歩くもんじゃないよ。タクシー使えば?
②露出の多い服装やめたら?ふしだらだと思われてもしかたないよ
③セクハラは上手に受け流す!それが大人の女
④レイプドラッグを盛るような男には最初から近づいちゃダメ!
これに対し、「それって有益?いや、けっこう的外れっていうか・・・」として
①タクシー毎日使えるわけがない!
②シャツのボタンをあけていただけでも誘ってると言われるんだよ。どうしたら?
③セクハラされてどんな気持ちになるか知ってる?簡単に言わないでほしい
④犯罪者が見た目でわかれば苦労しない!
と描いている。
どう考えても瀧波の応答の方が理にかなっていて、説得力がある。というより、レイプはもちろん、セクハラや付きまといも犯罪であって、その責任を被害者に帰する発想がおかしい(この件はパワハラなどと絡めて私も書いたことがある)。そういった事件が100%無くなることは考えにくい以上、防止策をどうするか、それを許さない社会風土や被害者を救済する土壌をしっかり作ることに力を注がなければならないことは言うまでもない(老婆心ながら書いておくが、「どんな時も女性が正しい」とか「被害者の訴えを100%信じるべきだ」などという話をしているのではない。そういう別の意味で偏った視点の弊害については次回取り上げる予定)。なるほどそれらを徹底した上で、オレオレ詐欺のように「~というケースがあるから気を付けてください」という啓蒙活動をするのなら理解できる。だが、そのような防止策を先に論ずるのではなく、むしろ粗雑な自己責任論を垂れ流すのは、被害者を追い込み犯罪をのさばらせ、もって社会状況を悪化させるという意味で「反社会的行為」とさえ言ってよいだろう(たとえば、「恰好が多少隙のある服装だったら犯罪行為をされてもしょうがない」という類の意見については、「ヤクザの恰好をしていたら器物破損や暴力行為をしても許される」といった言説と変わるところがない。そんなもので合法・違法がどうして変わることがあるだろうか)。
ところで、先の自己責任論の背景にある「隙を見せたお前が悪い」・「誘惑したお前が悪い」的な視点て、実は(つい先日まで女性が運転免許証さえ取れなかった)サウジアラビアなどと同じだ、というとその異常性が少しは伝わるのだろうか。そんなバカなと思うだろうか?しかしサウジでは、強姦されたら誘惑したお前が悪いってことで罪になったケースもあり、国際問題にまでなった。また、イランではエレベーターや車の中で男性と二人きりになったら罰せられる法律もある。これらを聞いてあなたは驚愕するかもしれないが、日本との違いは、司法がそうなっているか、言説(世論、世間)がそうなっているか、という点だけではないだろうか・・・と脊髄反射的な自己責任論を聞いているといつも思う次第である(まあ司法の方も代用監獄制度や可視化の問題など含めしばしば中世的と批判されてきたわけで、別に褒められたものではないが)。
こういった奇妙さは、別に阿部謹也や川島武宣などを読んでなくとも、十分気づけるものではないか。そう思えるくらい、自己責任論の多くは実現可能なのかを検証したとは思えない条件反射的で無責任な「突っ込み」の域を出ない。そういった「反社会的発言」がまかり通り、被害者の自罰と忍耐で問題が先送りされる社会はいい加減やめにしないか?とそう思う次第である。
[蛇足]
被害女性に対して、「男とはそもそも狼であるのだから、自衛に気を付けない方に責任がある」、という理屈が通るなら、そもそも男性には次のような「措置」が施されてしかるべきである。
1.突然凶暴化する恐れがあるので、飼い犬のようにリードでもつけて暴走しないようにしておく
2.「時計仕掛けのオレンジ」のアレックス如く、欲情しそうになったら身体が拒否反応を起こすように肉体改造する
3.性犯罪者にそうするように、GPSをつける
といったところか。もちろん、賢明な読者諸兄はこのような「措置」ができるはずもないと理解しているだろうが、つまりは男性のコントロール不可能性を土台にした女性の自己責任論は奇妙極まりない、ということである。
というか、こんな現状で「女性は感情の生き物」とか言ってる人間もいるんだから、へそで茶が湧くというものだ。ならば男はさしずめ「表面が理屈っぽいだけの原始人」というところだろう。
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