ここで初の観察ですが、キジムシロの変異種がありました。エチゴキジムシロは山手には比較的普通に観察できるのですが、この個体は長く伸びるツルが出ています。ツルエチゴキジムシロという名がついているのだそうで、白沢の不安定な河床の草付きに自生が見られました。花はなくてうっかりすると見過ごしそうな個体ですが、同行しているメンバーの鋭い観察眼には舌を巻くばかりです。この種がどういう分布をしているのかについては不明で点々と出現するようです。
ツルエチゴキジムシロが目に入ってから、オオイタドリなどの高径の草原の林床に分け入り所々のギャップに面白いものを見つけることができました。これはそのうちの一つで、ノウゴウイチゴ。経験的に2000m以上の高山尾根筋で出会ったことしかなく、いつも夏場で赤く熟した実を美味しくいただいたものです。それを、この草深い沢の一角に見つけると何とも不思議な気がします。予想は鳥甲山の稜線近くに自生していたものが崖の崩落でこの沢の底に落ちてきて細々と生き延びているものではないかと考えています。大きく発達した群落にはなっていません。