昨年はムシトリスミレを見る機会が数回ありました。八方尾根もそのうちの一つです。頻繁に見られる花ではないのですが場所とタイミングが良かったのでしょうか。スミレの仲間かという質問があってスミレの花に似ているところから付けられた全く別系統の植物だと説明しましたが、確かに似た雰囲気を持っています。水生植物のタヌキモの仲間に分類されています。八方尾根のムシトリスミレは決して多く見られるわけではないのですが、気を付けているとえぐれた土の剥き出しになっている場所で見つかることがあります。ロゼット状態の葉を持つ関係でしょうか、他の植物が繁茂している場所ではあまり見かけません。やせ地でやや湿り気のある場所が生育適地のようですが、意外にも岩がごろごろしているところでもみられます。
葉を拡大してみると舟型になった葉の内側に小さな虫が捕えられています。食虫植物の一種で葉の表面に粘液が出ていてこれによって小さい虫を捕えて消化液で硝化し葉の表面で栄養を吸収しているものと思います。一般的には植物が必要とする必要4大元素がC(炭素)、H(水素)、O(酸素)とN(窒素)で、CとOは二酸化炭素(CO2)、HとOは水(H2O)で大気中や土中から簡単に取り入れられますが、Nについては普通は硝酸塩(NO2+やNO3+)の形で土壌中に存在するのですがこれが無い場所があるため、そこで暮らす植物がNを動物(昆虫)を捕えて確保するという形の進化を遂げたとされます。生物の不思議を味わう場面です。