森の案内人 田所清

自然観察「独り言」

レウィシア(スベリヒユ科)

2006年03月07日 | 自然観察日記
 花言葉が添えてあった。「熱い思慕」。なんとなく気にいった。愛らしい花で北米産の高山植物なのだそうだ。見るからに乾燥に強そうな植物だから、日差しの強い瓦礫地にでも生育しているのであろう。
 畑の雑草にスベリヒユというのがあって、夏場になると至る所に発生しその勢いは凄まじいものがあるが、秋涼しくなるとあっという間に消えてしまう。温度条件ものの見事に素直に反応する。レウィシアは高山植物とあるから、夏場の暑さは苦手であろうが、スベリヒユ同様最適温度下では生育力はおおせいなものがあるのではないだろうか。


クラッスラ(ベンケイソウ科)

2006年03月06日 | 自然観察日記
 「金のなる木」のほうが分かりがいいかもしれない。多肉植物で鉢物が多く出回っている。結構大株になる代物で時たま大鉢での栽培を眼にする。個人的には「金のなる木」という名前が好きでない。葉が丸くお金に見えるのだろうか。縁起物のような扱いをされるようだが、名前だけならまだしも、五円玉を葉に通して鑑賞する態度は私にとっては理解しがたいものである。
 ベンケイソウの仲間は多肉植物が多く、越後でもキリンソウなどいくつかの仲間があり、いづれも乾燥に強いので岩場などに生育している。いづれにせよ、長い年月を経て地球のあらゆる環境に適応する植物の中で乾燥化に適応し生きる方向を見出した一群といえよう。

ムキタケ

2006年03月05日 | きのこ・菌類
 陽気に誘われて、一年ぶりの早春の渓流に踏み入った。先日の淡雪のせいで雪原は凍みていず柔らかく歩きにくい。渓流の清流に浸されながら小沢を登っていくと、エナガの群れが梢から梢と渡りながら飛んでいる。ホンドリスも顔を見せてくれた。残念ながらイワナの当たりは無く昨年に続き初回はボウズである。
 川の岸にサワグルミの大木が倒れていて、その表面にムキタケが凍てついた状態で付いていた。昨年の遅くに出たものであろう、大きく成長する前に寒さのほうが先に来て中途半端な状態で生育できなくなってしまった。
 しかし、私にとっては一つポイントを得たわけで、今年の秋はここへ来れば間違いなくムキタケを採取できるわけだから、自然の恵みを独り占めできることになる。美味しいキノコだから嬉しい限りである。
 ところが、山の神はときどき無理難題を押し付けることがあって、貢物をしないと許してくれない。今日は大切なデジカメをこのムキタケを撮影したあとで沢の水底に落としてしまった。たっぷりと水を吸ったデジカメは再び電源が入ることは無く、山の神の貢物になってしまった。幸いミニディスクは生きていて映像を取り出せた。高価な代償を払ったのだから、今年はきっといい思いをたくさんすることが出来るのだろう。

キンセンカ(キク科)

2006年03月03日 | 自然観察日記
 まるで太陽の日食でも見ているような感じになる。周囲のオレンジはさしずめコロナかプロミネンス。あるいは直接黒塗りのガラス越しに見た太陽の表面の様子だろうか。はたまた仏事に使われる紋章のようにも見えてしまう。同じ花でも視点を変えてみるといろいろなものに見えてくるのが楽しい。たまたま入った園芸店にあったキンセンカの切花を間近で見たものだ。
 キクの花は一つの花に見えるけれど、たくさんの花が集まった頭状花といわれる集合花である。そして、タイプの違う2形の花を持つシステム化されたものなのだ。周辺に並ぶ花弁を持っている舌状花、花弁がない中央部にたくさん集まるのが管状花という。構造からして進んだ形の花を作る一群で、非常多くの種類を有するグループである。
 一説に、変異の多いもの、種類数の多いものは今まさに発展途上の植物群であり、生育する範囲を拡大していると考えられている。その逆に種類数が少ないグループは絶滅への方向に進んでいるのである。

ケヤキ(ニレ科) その3

2006年03月02日 | 自然観察日記
 ケヤキを取り上げるのは3回目になる。今回はケヤキそのものというより、「技」とでもいおうか一つの造詣についての想いだ。
 群馬榛名山の山麓、水沢観音の境内にあった大きなケヤキである。枝分かれしたのであろう、その2本の幹が少し上で癒着してしまって再び1本の幹のようになったものである。幹の途中に穴が開いているように見えるから、近寄って確認した。こんな芸当ができるのも樹ならではのとこであろうか。この造詣を産むまでにはそれなりの時間が必要で、それも一定の方向へ一定の意思とでもいおうかある力が継続されなければならない。
 このケヤキを見ながら、命の不思議さを感ずる一方で、「何事もひたすら努力する中でこそ一つの形(人格)が生まれてくるものだ」という人のあり方なども教えられる想いである。飽きっぽい人間などは、到底このような感動を与える「形」を作り上げることは無理なのである。


ナノハナ(アブラナ科)

2006年03月01日 | 自然観察日記
 さて、どんな名前が付いているのか判らないが、いわゆる「ナノハナ」の鑑賞用に作られた品種。このまま御浸しにでもして食べてもいいかもしれない。今日から弥生三月。少し肌寒いけれどずいぶんと雪の量は減った。日も長くなったし、確かに春はもう直ぐである。スーパーの玄関先に春の色と香りが溢れていた。
 ナノハナの仲間、アブラナ科の植物の花は十字花で非常に特徴的である。サクラなどは5を基本にした花弁を持つがこの仲間は4を基本にする。おしべも同じで4を基本にしている。分類的にはいずれも離弁花植物だが、この4と5の分かれ道はどんないきさつがあるのだろうか。きっとおもしろいドラマが隠されているに違いない。
 一日一日がドラマである。今ある姿は過去に遡ればその原因があり、必然としても結果でもあるということだろう。花の歴史同様、自らの歴史もドラマの連続なのだと心して充実した日々を過ごしていきたいものだと思う。