森の案内人 田所清

自然観察「独り言」

ナツグミ(グミ科)

2006年06月19日 | 自然観察日記
 グミの花は花冠が4列する合弁花。子房はその下につく(花が下向きに垂れ下がるから、上になる?)。葉の裏もそうだが、花全体に独特な銀白色と褐色の鱗片が混在している。拡大鏡でこれらをみると独特な形をした毛で覆われている。喩えが悪いかもしれないが小さなイソギンチャクのような感じで鱗毛という。グミ科の大きな特徴である。
 ナツグミは比較的実が大きく、中でも特大のものが選抜されて「びっくりぐみ」という商品名で流通している。


ミヤマカラマツ(キンポウゲ科)

2006年06月18日 | 自然観察日記
 先週イワナと遊んだときに出会った。一般には高山植物に近い捕らえ方をされるようだが、むしろ深山性と考えたほうがいいようだ。花弁のない植物。雄しべが平たくなって多数花弁状になってついている。モミジカラマツと違い群生することがなく、ポツンポツンと点在する。
 写真の個体は花付が非常によい。一見「なんだろう?」と疑問に思った。いつも見かけるミヤマカラマツはもっと楚々とした印象をもち存在感はあまりないのであるが、これは好条件に恵まれたのであろう、花房を大きくアピールしていた。これからがカラマツソウ属の花の時期である。

ノアザミ(キク科)

2006年06月17日 | 自然観察日記
 春から夏に咲くアザミはノアザミだ。山間に紅色の花が林立する姿が美しい。個体数の多い少ないはあるにせよさほど珍しい景色でもないのかもしれないが、ごく当たり前の自然がどんどん失われているから、気がついたらノアザミもいなくなったなどということのないことを祈る。
 私の年代はフォークソングの世代だと思うのだが、もっと前に聞き覚えた「あざみの歌」が自然に口に出てくる。
 「山には山の 愁いあり 海には海の 悲しみや ましてこころの 花ぞのに 咲きしあざみの 花ならば 」
 アザミの花を見ながら口ずさめばかけがえのないものに逢えたようである。しみじみとした情感がいい。 
 山好き花好きの人は私と同じ嗜好を持っている方が多いような気がするがいかがであろうか。

ウツギ(ユキノシタ科)

2006年06月16日 | 自然観察日記
 少し前にフルムーンとしゃれ込んで奈良に出かけ、興福寺の阿修羅像に見入った思い出がある。そればかりでなく秋篠寺の伎芸天立像も忘れがたいものがある。その秋篠寺の駐車場にこの純白の八重咲きのウツギが咲いていた。
 越後にウツギは普通にあるが、八重の個体を見たことがなかったので、新鮮な感じがして一枝頂いてきたのが咲き出したのである。まだ小さな株だが数年もすればそれなりの大きさになるだろう。秋篠寺の伎芸天立像をいつまでも忘れないですむ。
 その後知ったのだが、桃色がかったサラサウツギというのがあるそうだが単なる園芸種なのか野生にもあるものなのか教えたいただけたら幸いである。

コウライテンナンショウ(サトイモ科)

2006年06月15日 | 自然観察日記
 平たく言えばコンニャクの仲間。あるいは清楚な高原のイメージのミズバショウの仲間。しかし、テンナンショウの花は一種独特で、綺麗とか可愛いという印象には程遠い。少々近寄り難い雰囲気があるような気がする。マムシグサなどというものもあるからますます引いてしまう。もっとも、花というのは画像では見えていないけれど、中央のこん棒状のところに付着している小さなものであって、外側のものは苞葉である。
 植物のさく葉標本(押し葉)を作った経験があるのだが、このテンナンショウの仲間の乾きづらいことこの上ない。吸い取り紙の上から重石をしてもなかなか水が抜けなくて、生乾きでは腐敗してしまう厄介者だ。
 ちなみに世界最大の花といわれるショクダイオオコンニャクはこの仲間だ。開花時は悪臭が酷く、某西欧の植物園で開花させたときに見物に来た人が臭いで倒れたという。テンナンショウの臭いを直接嗅いだ経験はないがそれほどの悪臭ではなさそうだ。一度体験せねばならない。

ツルアジサイ(ユキノシタ科)

2006年06月14日 | 自然観察日記
 見事な群落である。沢に面する露岩を一面に覆ってツルアジサイが盛りであった。小規模な巻き付きや垂れ下がりにはしばしばお目にかかっていて、春先の新芽の時期には少々頂いて山菜として利用している。
 実は最初イワガラミ(ユキノシタ科)かと思ったのだが、目を凝らして見えた装飾花が4枚であるからツルアジサイと判った。イワガラミの装飾花は1枚で出来ている。イワガラミなら時折スギなどの大木に巻きついて垂れ下がる姿を目撃したことがあるのだが、ツルアジサイのこれほどの個体ははじめての出会いである。

ウスバシロチョウ(アゲハチョウ科)その2

2006年06月13日 | 自然観察日記
 シロチョウの名があるがアゲハチョウの仲間。小学校の頃このチョウを追っていたことがある。長岡の平野部を挟んで東山の個体と西山の個体に何かを見出そうとしていたのだが、病気を患い頓挫したことがあった。
 それはそうと、この沢の休耕田の跡にできた低木を交えた草原にはかなりの個体が飛び交っている。写真はまだ翅が乾かないから草の上に止まっているもので、こんな姿が随所に見られる。気温が上がって、ウスバシロチョウの乱舞が少年の頃に追い回した思い出と重なってしまった。
 

オオハナウド(セリ科)

2006年06月13日 | 自然観察日記
 この時期、山野に大型のセリが目立つ。大きな葉で切れ込みも大雑把ならオオハナウドであろう。しばしば大群落を作って白い絨毯の様相を示す。セリ科の花は観賞価値は高くないけれど昆虫の仲間にはとてももてはやされるものが多い。
 甲虫類からハナアブ、あるいは蝶などの鱗翅類などがしばしば訪れては吸蜜や花粉を集めている。入れ替わり立ち代りの飛来には、たくさんの花がかたまって遠目からでもその存在が判るせいで、おまけに複雑な花の構造をしていないから、甲虫などはドサッと舞い降りてくる。受粉の効率はどれほどのものかは判らないが、昆虫が訪れない花よりはずっとましだろう。

カナウツギ(バラ科)

2006年06月12日 | 自然観察日記
 新潟にはほとんどないのだけれど、コゴメウツギという太平洋側ではごくありふれた潅木があるが、それより少し大型なのがこのカナウツギ。まだ花の咲く時期でなかったのが残念だが、もっとも大して見栄えのするものでもないから写真でお見せするほどのものでもない。花を見に行ったというより、そこにあることを確かめに行った。少々藪こぎをしたせいで、昨日の話のヤマヒルの餌食になったことになる。
 このカナウツギ、どうしてこの越後の中ほど三条の山地にあるのかが疑問なのである。この地にはかなりの個体数があるが、県内の他にはない。他県の分布を調べるとやや東~北日本に偏っていて富士山近辺に多いというが、局所的というわけではないようだ。越後の生育地はいわゆる隔離分布ということになる。
 さて、この種が分布的な特異な面を見せている訳はなぜだろうか。フォッサマグナと関係付ける人もいるという。いずれにせよ面白い歴史がこの植物にはあるのだということを紹介したいために取り上げた。自然の長い悠久の時間を推理するのも「また楽しからずや」である。

イワナ

2006年06月11日 | 自然観察日記
 今年はこれが最初の釣果。返しのない針を使って出来るだけダメージを与えないようにしている。次回訪れたときにもっと大きくなって会えればいいのだが。ところで、この沢にはヤマヒルがいて少し藪の中を歩いたときに入り込まれたのか、足に食いつかれてしまった。家に帰って家内の指摘で気づいた。ズボンが血に染まっていたからだ。食われても痛くもないからいつ被害にあったかも判らない。丸々と血太りになってコロンと落ちてしまったのだろう、主は見つからない。越後の沢にはヤマヒルが住む沢と住まない沢があって梅雨以降入渓には気をつけなければならない。とはいっても少々の献血くらいは多めにみてやろう。

ヒメサユリ(ユリ科)

2006年06月11日 | 自然観察日記
 4,5年ぶりだろうか、ある沢に入ってみた。かっては頻繁に入渓していたのだが、多くの釣り客が入り込むようになり渓流つりの楽しみが失われてしまったから足が遠のいた。
 しかし、今回大いなる気分転換とブログ用の写真を撮るつもりで出かけてみた。久しぶりの入渓だが、おそらく2年前の豪雨のためだろう渓相が一変していた。全体に土砂が押し出したせいか淵が浅くなりイワナつりに格好なポイントが減っていた。それでも、「このポイントは○○cmの大物を上げたところだ」などなどと思い出しながらいい心の洗濯となった。釣果は15cmクラスが二尾と低調だったが、それはそれで満足である。
 ここは、植物の分布という点で興味深い場所で、イワナよりこちらの方が面白かった。ちょうどヒメサユリが盛りで渓流の清い流れと桃色の愛らしい花の競演に立ち会えたことがこの上なく嬉しい。
 ヒメサユリは新潟・福島・山形の3県にまたがる地域にしか生育していない逸品である。三条市の下田に半自然状態でヒメサユリの観光園が出来ているのだが訪れたことが無い。この花はこういういロケーションで見るのが一番似合っていると私は考えている。
 

ガクウツギ(ユキノシタ科)

2006年06月10日 | 自然観察日記
 ウツギというがガクアジサイの系統。西日本の野生種で園芸化されている。我が家にはないが一枝頂いて挿し木の最中でまもなく鉢に下ろせるであろう。水無月は梅雨の季節。アジサイ族が幅を利かせる季節だ。各地にアジサイ寺など名所があるが、そうだなぁ 越後でアジサイを自慢しょうとしたら旧新津の護摩堂山辺りがいいのだろうか。
 むしろ越後には野生のアジサイがいい。もう少し時間が経つとエゾアジサイが咲き出す。これは群青色に近い濃青色が魅力的なヤマアジサイの地方種で関東や西日本にはない野生のアジサイとして自慢である。一度初夏から夏の越後の山を訪れたらいかがだろうか。