山里に生きる道草日記

過密な「まち」から過疎の村に不時着し、そのまま住み込んでしまった、たそがれ武兵衛と好女・皇女!?和宮様とのあたふた日記

今 和次郎の「考現学」が新しい

2012-03-03 00:48:36 | アート・文化
 テレビで今、「なにこれ珍百景」という番組をやっているが、それより以前に、赤瀬川原平や南伸坊らアーティストらが「路上観察」(トマソン)で珍風景を紹介していたことがあった。
 それを促したのは戦前から活躍していた今和次郎(コンワジロウ)でもあった。
 本人は庶民の生活を克明に実証調査していたのだが。
 おしめの柄描写、食堂の食器のひび一覧、公園の自殺者の場所図絵、主婦の台所動線図、通行人の持物調査など。
 
 オイラもそれらに影響されて、以来スカシブロックや路上観察・路地裏探検を忘れていない。
 ちょうど、新橋で今和次郎のギャラリーをやっているのがわかり、急遽見に行った次第。
 行ってみて、今和次郎は想像以上に守備分野が広く深いのが分かった。

 建築・デザインの草分け的存在だけでなく、東大セツルメントと連動して民衆の生活改善や東北人の自然(災害)への取り組みも調査している。
 しかも緻密なデッサンはまさにアートそのものだ。

 素晴らしいと思ったのは、建築家らがかもしだすエリート目線ではなく、民衆と同じ目線であろうとしたところである。
 今和次郎は民衆と同じようなジャンバーを着ながらスケッチや調査をしていたという。
 来場者の多くは背広・ネクタイのいかにもその筋の人が目立つ。
 貧民窟・戦後のバラック・東北の冷害災害被害・寒村の民家などにも積極的に立ち至った姿勢に、あらためて覚醒される思いだ。

 それは柳宗悦(ヤナギムネヨシ)らの民芸運動にも通底するものがある。
 「考古学」ではなく「考現学」という視点を拓いたところが素晴らしい。
 庶民の目線からブレないことが今日の閉塞を脱皮する鍵である。
 
 
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする