近くの山の暗い林間を通ったときのことだった。1000本近くはあるだろうと思われるシイタケのほだ木が林間に続いていた。そこに突然ピンクの「もののけ」がひょいと見えたのだ。なんとも不自然な取り合わせだった。ここは昼間でも暗い杉林だった。
あの世の空間を見てしまったのだろうか。確かに、シカはシイタケをよく食べにきてはほだ木を倒していく。猿はシイタケの軸が好きなようで笠を捨てて軸だけ食べる。キツツキはほだ木の中の虫を食べに来てほだ木の皮を剥いて周りを散らかしていく。
それを防ぐもののけなのだろうか。そう言ってしまえばそうなのだろうが、このアンバランスな光景が人間と動物との悩ましい葛藤の表現なのかもしれない。部外者からは喜劇と見えるが、関係者からは切実な願いのアイテムなのだ。