山猿さんが持ってきたのはかわいい「骨付きチキン」だった。塩と胡椒だけで味付けしてきたのだという。小さくて食べやすいので次々手が出てしまう。またもや料理が得意の心優しい山猿さんの配慮だ。翌日の朝食も残りのチキンとなった。
自称「天竜七輪党」党首のオイラは、焚き火をやれば必ず七輪が登場する。主に魚や肉を焼いたり、コーヒーのためにお湯を沸かすのがルーチンワーク。当日は「くさや」を焼いた。「くさや」は焚き火の直火だとどうしても焦げてしまい、へたすると真っ黒になってしまう。そんなとき七輪はまろやかにくさやを焼いてくれる。
購入した木炭ではなく、焚き火で残った消し炭だけで火をおこすのも本旨なのだ。卑近な例だがこれでも循環型暮しの実践のささやかな事例であると胸を張る。これだけ消し炭があれば、やかんの水を何回か沸かせることができる。
沸かしたお湯でコーヒーをいれる。椅子に座ってコーヒー片手で空の雲や山を眺める。山猿さんは癌の手術をしないことを選んだが、家族の強力な意向で手術を行う。生きることをすぐにあきらめないで良かった。こうして、骨付きチキンでオイラに幸せを運んでくれるんだから。「また遊びに来るよ。新車でね」と言ってニヤッと笑って帰路についた山猿さんだった。