裏山の道草山で枯木を鋸で伐っていたときだった。いつもはナメコが出るはずの朽木にビロード状の苔が生えていた。そういえば、道端にもときどき目撃することのあるさりげない苔だった。
屋根やブロック・コンクリート側溝にも南極にも侵出する苔だそうだ。漢名は、「屋の上の赤苔」というわかりやすいネーミングだ。茎が赤いので赤苔。緑色の先端は「蒴(サク)」という胞子嚢で、そこから胞子を拡散する。この蒴も成熟すると赤茶色になっていく。
乾燥には強いが、大気汚染には弱い苔類。つまり、都会からどんどん駆逐されていく運命でもあるわけだ。苔はそんな指標の一つを表現しているのかもしれない。
そのヤノウエノアカゴケの近くでは、待ちに待っていた「フキノトウ」が咲いていた。まともなフキノトウを見るのはわが家では初めてだった。畑のフキノトウは畝の拡大のせいか、採りすぎのせいか、壊滅状態となってしまった。春の到来とともに大地をめぐる植物と人間との格闘はこれからが本格化する。