< [ 抑止力 ] 黄門様の印籠には 「核」が入っていた >
< [ 温暖化 ] 富士山麓がサボテンの群生地になった
鳥取砂丘で鯨が砂を噴き上げている >
竹内徹『短詩集 いざ! 言葉のデザイン帖』(東銀座出版社、2021.12)は、 こんな感じの短詩が散りばめられた詩集だった。読み方を変えれば、川柳とでもとれるが、言葉の深度ではやはりポエムと言える。最近のツイッターやラインなどの短絡的なやり取りが日本を跋扈しているが、同じ短いつぶやきでもこの短詩のひねりにはかなわない。プレパトに乱入しても充分通用する。
< [ 孫 来たる ] なにも たべない なにも しゃべらない なにも……
スマホに両目を埋め込んでいる >
< [ 認知症 ] 歳月を頑張り過ぎて つい 脳みそを齧ってしまった >
< 再延 できない 休止 できない 中止 できない 観客 入れない
で [ できた ] >
< [ 新詩人] 和装から割烹着へ 五・七・五でも 七・五・三でも
時代を自在に料理する >
本書冒頭の詩は、上記の「新詩人」だった。プレパトで俳句ブームが巻き起こっているが、短詩はあまり聞いたことがない。こんなとき、著者はさらりと短詩の密かな毒と高踏の価値を宣言した。どうでもいいような情報の氾濫や軽佻で残酷な事件が蔓延してきた現代の荒涼を笑うしかない著者の寂寥が伝わってくる。この短詩から、教科書に載らない前衛詩人の北園克衛のモダニズムも感じる。
オイラがときどき読んでいた田村隆一のアバンギャルドな詩と通じる柔らかな戦闘性も感じる。そういえば、著者は寺山修司と同窓であり、接点があったのかもしれない。著者はかつて『仮面中毒』(あざみ書房)という詩集も上梓している。内容は北園克衛に近いよりシュールな作風だった。
さりながら、谷川俊太郎はやはり詩人としての奥行といい感覚といい宇宙といい、群を抜いている。