このブログで何度も言っていることだが、
私は沢尻エリカが好きだ。(コラコラ)
『パッチギ!』を見て一目惚れして以来、
2007年、彼女が主演する映画『クローズド・ノート』の舞台挨拶で不機嫌そうな振舞いを行い、世間・マスコミなどによりバッシングを浴びせられた後も、
スキャンダラスな話題でワイドショーなどで採り上げられるだけになってしまった停滞期も、
ずっと変わらず応援していた。
だから、『クローズド・ノート』から5年ぶりに出演した映画『ヘルタースケルター』(2012年7月14日公開)の時は本当に嬉しかったし、
映画自体も傑作であったので、このブログにも絶賛のレビューを書いた。(コチラを参照)
さほどに好きな沢尻エリカであるので、
出演した作品はすべて見るようにしている。
2月1日公開の映画『不能犯』も、楽しみに待っていた。
で、公開初日に、会社の帰りに映画館に駆けつけたのだった。
都会のど真ん中で連続変死事件が発生し、
現場では必ず黒スーツの男が目撃されていた。
その男・宇相吹正(松坂桃李)は、
SNSで「電話ボックスの男」と噂される人物で、
とある電話ボックスに殺人の依頼を書いた紙を貼ると実行してくれるのだという。
ただし、依頼人の殺意が純粋でないと、恐ろしい事態を招くという。
さらに、彼に狙われた者は確実に死亡するが、
その死因は、病死や自殺、事故など、いずれも殺人が立証できないものだった。
宇相吹の犯行は、“見つめるだけで相手を死に追いやる”ため、
罪には問われない《不能犯》だったのだ。
TARGET①金融会社社長・木島功の場合。
「人生、終わりにしたくなかったら、用意しとけ!」
金を返さない客に向かって、携帯電話で怒鳴る木島(水上剣星)。
そこへ宇相吹が近づき、
ガムシロップを注いだグラスをいきなり木島の顔にぶっかける。
いきり立つ木島だったが、
ニヤッと笑う宇相吹の赤く光る目に魅入られ……
TARGET②町内会長・鳥森広志の場合。
羽根田健(忍成修吾)は、怒りに震えていた。
部屋を覗いたり、
ゴミ袋の中を確認したりするなど、
異常な行動を重ねていた町内会長の鳥森(小林稔侍)が、
妻の桃香(水上京香)に乱暴したのだ。
羽根田は、警察に通報すると鳥森に詰め寄るが、
「奥さんのことを警察に全部しゃべるぞ」
と逆に脅される。
恐怖を抱いた羽根田は、宇相吹に殺人を依頼する。
TARGET③多田刑事の上司・夜目美冬の場合。
警察はようやく宇相吹の身柄を確保し、
ベテラン刑事の夜目美冬(矢田亜希子)が任意で取り調べる。
「僕は、やってません」
という宇相吹の言葉にピクリと反応する夜目。
以前、夜目は、電車で痴漢した高校生を現行犯逮捕したのだが、
彼は無実を主張した末に、留置場で自殺していたのだ。
その高校生の父親は、
鑑識官の河津村宏(安田顕)だったのだが……
TARGET④ジュエリーデザイナー・夢原理沙の場合。
「絶対許さない。お願い、こいつを!」
と、風俗店で働く木村優(真野恵里菜)は、
両親の離婚が原因で別々に育った姉の夢原理沙(芦名星)への嫉妬と憎悪を、
宇相吹にぶつける。
父親の借金返済に苦しんだ自分と違って、
母親に引き取られて幸せに育った姉は、
もうすぐ大病院の院長候補の男と結婚するのだ。
そして優は宇相吹に、抹殺よりももっと恐ろしい依頼をするのだった……
TARGET⑤元不良少年・川端タケルの場合。
多田友子刑事(沢尻エリカ)が自ら更生させた元不良少年・川端タケル(間宮祥太朗)が料理人を務める店で飲んでいると、
TVから公園での大爆発のニュースが流れる。
去年の暮れに起きた神社での爆破事件と手口が酷似していた。
多田は、悪の撲滅にあらためて闘志を燃やし、
部下で新人の百々瀬麻雄(新田真剣佑)と共に捜査を進めるが、
何の手掛かりもつかめぬまま、3度目に爆発が起こり、またしても犠牲者が出てしまう。
だが、この時、彼女は思いもしなかった。
まさか連続爆破事件と宇相吹の事件が繋がり、
壮大な事件へと発展するとは……
そして、ついに、二人の壮絶な対決の時がやってくる!
不能犯とは?
“思い込み”や“マインドコントロール”で殺すなど、
目的は犯罪だが、
常識的に考えて実現が不可能な行為。
そのため、たとえ相手が死んでも罪には問われない。
昔、ある本で、特殊な人体実験について書かれたものを読んだことがある。
死刑囚に目隠しをして、
死刑囚の手首と足首にメスをあてがう。
床には血を受け止める桶が置かれており、
死刑囚は自分の手足から血がしたたり落ちるぽたぽたという音を聞く。
実際は、メスをあてただけで切ってはおらず、
桶の中に落ちていたのは、血ではなくただの水だったのだが、
自分の躰から多量の血が流れ、
すべての血が出てしまったと思い込んだ死刑囚は、
眠るように静かに息を引き取ったという。
このように、人間は、
強いストレスによっても死に至る……という話。
本来は薬効として効く成分のない薬(偽薬)を投与したにもかかわらず、
良薬と思い込んだ患者が、
病気が快方に向かったり、治癒することがある。
これをプラシーボ効果と言うが、
この映画『不能犯』の主人公・宇相吹は、
このプラシーボ効果を悪用したような感じで、
相手の目を見て、催眠術をかけるように或ることを思い込ませ、
強いストレスを与えて死に至らしめる。
ただし、依頼人の殺意が純粋でないと恐ろしい事態を招く……というのがミソで、
それぞれの依頼人も意外な結末を迎える。
「……愚かだね、人間は」
という宇相吹の決め台詞が、効果的に各シーンを締める。
「スリラー・エンターテインメント」と謳っているが、
むしろ「ホラー」と表現した方がイイような、
『貞子vs伽椰子』(2016年)の白石晃士が監督というのが納得の凄惨なシーンもあり、
鑑賞者は、ある程度の覚悟を持って見る必要があるかもしれない。
宇相吹正を演じた松坂桃李。
『彼女がその名を知らない鳥たち』(2017年)もそうであったが、
これまであまりやったことのない役に挑戦し、好演している。
ダークヒーローの役は、怪演というより快演していて、新境地を開拓していると言える。
106分、この映画を面白く見ることができた第一の要因は、
とりもなおさず、松坂桃李の素晴らしい演技にあった。
私は、このダークヒーローに親しみさえ感じることができた。
松坂桃李には、今年も、
『娼年』(2018年4月6日公開)
『孤狼の血』(2018年5月12日公開)
という、挑戦的な作品が控えており、
さらに進化した松坂桃李を見ることができそうだ。
多田友子刑事を演じた沢尻エリカ。
初めての刑事役であったが、
とにかく格好良かった。
特に、走っている姿が美しく、魅せられた。
アクションシーンも無難にこなしていたし、
新たな沢尻エリカを見ることができて嬉しかった。
今年は、
『猫は抱くもの』(2018年6月23日公開予定)大石沙織役(主演)
『食べる女』(2018年9月下旬公開予定)小麦田圭子役
なども控えており、
沢尻エリカのファンにとっては楽しみな一年になりそうだ。
原作の漫画はまだ連載中なので、
この映画が好評ならば、続編も期待できそうだ。
そういう意味でも、見ておくべき一作と言えるかもしれない。
映画館で、ぜひぜひ。