私の映画レビューなど読まずに、
今すぐ映画館に駆けつけてもらいたい!
私が本当に言いたいのはこの一言だけなのだが、
理由を書かないと納得してもらえないと思うので、
以下、ダラダラと書き記したい。(コラコラ)
「鑑賞する映画を出演女優で決める」私としては、
木村文乃と山本美月が出演している映画『ザ・ファブル』は、
制作発表されたときから、鑑賞すべき作品としてリストアップされていた。
原作は、2017年度講談社漫画賞を受賞した南勝久原作の人気コミックで、
主演は、岡田准一。
岡田准一の出演作は、かなり見ているし、
好印象を抱いている男優だったので、
〈早く見たい!〉
という気持ちがつのっていた。
で、公開直後に、映画館に駆けつけたのだった。
標的を6秒以内に仕留める圧倒的な腕前から、
裏社会で恐れられる殺し屋、通称ファブル(岡田准一)は、
ボス(佐藤浩市)から、
「殺し屋を1年間休業し、大阪で一般人として普通の生活を送る」
というミッションを命じられる。
もし誰かを殺したらボスによって処分されてしまうという厳しい条件の中、
「佐藤アキラ」という偽名と、
相棒ヨウコ(木村文乃)と兄妹という設定を与えられ、
生まれて初めての日常生活に悪戦苦闘する。
そんな中、
偶然知り合った女性ミサキ(山本美月)が、
ある事件に巻き込まれたことから、
ファブルは再び裏社会に乗り込んでいく……
上映時間の123分が一瞬に感じられるほど面白かった。
とにかく岡田准一のアクションが凄いし、素晴らしい。
これまでにも、
『SP THE MOTION PICTURE「野望篇」』(2010年10月30日公開)
『SP THE MOTION PICTURE「革命篇」』(2011年3月12日公開)
『図書館戦争』 (2013年4月27日公開)
『図書館戦争』 THE LAST MISSION(2015年10月10日公開)
『蜩ノ記』(2014年10月4日公開)
『エヴェレスト 神々の山嶺』(2016年3月12日公開)
『関ヶ原』(2017年8月26日公開)
『散り椿』(2018年9月28日公開)
などで身体能力の高さを見せつけてきたが、
本作ほど、その能力をいかんなく発揮した作品はなかったように思う。
まず、冒頭のアクション。
ある裏組織を一人で壊滅させてしまうのだが、
動きが見えないほど素早いのだ。
のっけから、そのアクションに目を奪われてしまう。
次に、
休養を命じられ、預けられた真黒カンパニーの会長(光石研)と社長(安田顕)の前で、
机を飛び越えて瞬殺するシーン(ファブルの妄想シーン)があるのだが、
これが早すぎて見えないほどなのだ。
岡田准一は語る。
重心移動がわりと得意なことから、“初動の速さ”というのは僕がアクションをやるときに意識している体の使い方なので、今回もそういう技術は使いました。でも実は、あのときは速さを抑えているんですよ。カメラマンさんに“速すぎて追えない”って言われて(笑)(『キネマ旬報』2019年7月上旬号)
同じシーンのことを、
江口カン監督は、次のように語っている。
アキラが、テーブルを挟んで光石さんの浜田と安田顕さんの海老原を、どうやって仕留めるかを語るイメージ・ショットを撮ったときには岡田さんの動きが速くて、僕が「カット!」と言った瞬間にスタッフから「……速い」という驚きの声が上がりました。カメラも1テイク目には速すぎて、岡田さんの動きに付いて行けなかった。僕は今回のアクションで、リアリティラインをどこに置くかを最初に考えました。それはアキラの身体能力がオリンピック選手並みだと想定して、ギリギリ嘘にならないリアル感。派手さとリアリティのバランスを取りながら、岡田さんならそのリアリティラインを体現してくれるんじゃないかと思ったんです。彼の動きは、予想を超えていましたね。(『キネマ旬報』2019年7月上旬号)
そして、最後は、クライマックス20分間の超絶アクション。
登場人物に「ジャッキー・チェンか!」と言わしめるほどの凄さなのだ。
この映画『ザ・ファブル』には、
『ボーン・アイデンティティー』(2002年)などのファイトコレオグラファーを担当した、
フランス人のアラン・フィグラルズが参加しているのだが、彼もまた、
ここまでスピーディに動ける俳優は見たことがない。
と絶賛しているのだ。
岡田准一もクレジットで“ファイトコレオグラファー”として名前が出ており、
彼自身もいろんなアイデアを出して各アクションシーンに関わっていて、
そのアクションにかける情熱が半端ないことを窺わせている。
岡田准一のアクションは、褒めても褒めても褒め足りない程なのであるが、
私の好きな女優陣、木村文乃と、山本美月についても語らねばなるまい。
アキラの相棒・ヨウコを演じた木村文乃。
私は原作のコミックを読んでいないので、
ヨウコがどのようなキャラクターなのか知らないのだが、
映画で見る限り、
酒豪で自分に近寄ってくる男性を酔い潰して楽しむという趣味があったり、
周りをいつもジョークで盛り上げたり、
衣装も派手という個性的なキャラクターであった。
いつもは清純なお嬢様だったり、ツンデレ気味のクールビューティな役が多いのだが、
本作のようなキュートで弾けた性格の女性の役も素敵だなと思った。
アキラと偶然知り合い、
アキラが後に勤めることになるオクトパスの社員・ミサキを演じた山本美月。
幸薄く地味な役で、
危ない人間たちに翻弄されながらも、
自らの手で人生を切り拓き、健気に生きようとする一般女性を好演している。
裏社会に生きる男たちの中で、
泥水の中に咲く蓮の花のように美しい。
いつもファッショナブルで華がある山本美月が、
地味で控えめな女性を演じるギャップがたまらなく好い。
美しいだけではない。
ヨウコ(木村文乃)と繰り広げる“ジャンケンで決める変顔バトル”が超絶面白いのだ。
いつも負けて、山本美月の美しい顔が、木村文乃の手によって変顔にされる。
これも山本美月ファンには堪えられないシーンであろう。
ああ、それからお色気シーンもある。
ハラハラドキドキしながら楽しんでもらいたい。(コラコラ)
その他の見どころとして、
真黒カンパニーの社長・海老原を演じた安田顕や、
海老原の弟分・小島を演じた柳楽優弥の演技が本当に素晴らしい。
特に、柳楽優弥は、
彼の演技を久しぶりに見た人には、衝撃的であったのではないだろうか。
私は、以前、『ディストラクション・ベイビーズ』(2016年)を見ていたので、
それほどの驚きはなかったが、
柳楽優弥の演技も本作の大きな目玉であることは間違いない。
主題歌は、レディー・ガガ「ボーン・ディス・ウェイ」。
エンドロールで、この曲が流れると、
楽しかった本作の記憶が飛び跳ねるように蘇えってくる。
ああ、それから、この作品も、
エンドロールの後にワンシーンが付け加えられているので、
場内が明るくなるまで、絶対に席を立たないようにね。
まあ、いろいろと書いたが、
本作の魅力の1割くらいしか伝えられていないような気がする。
最後に、冒頭の言葉を繰り返して、このレビューを閉じたい。
「今すぐ映画館に駆けつけてもらいたい!」
ぜひぜひ。