一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

中山仙境 ……絶景と絶叫、スリル満点の岩稜で遊ぶ秋の一日……

2010年11月21日 | 山岳会時代の山行
国東半島の周辺には、低山ながらも険しい岩峰の連なりがいくつもある。
3年前の2007年12月に、からつ労山の月例山行で、鋸山の異名をもつ田原山に登った時、その近くにある中山仙境にもぜひ登りたいと思った。
佐賀勤労者山岳会が編んだ『SAGAの山あるき。』(佐賀新聞社)では、佐賀県内の57座の山を紹介した後に、なぜか県外の山を4座だけ採り上げている。
小岱山、九千部山、三俣山、そして中山仙境である。
その紹介文を読んで以来、中山仙境が気になって仕方がなかったのだ。

《大分県国東半島に位置し、目前に豊後灘が見える。天気が良ければ四国の山々も拝める。国東半島の多くの山は溶岩台地で形成されているが、この山も同じで、岩と雑木林に囲まれた景色は登山者の心をとりこにする。
 登山者は少ないが、道はしっかりしている。岩場や鎖場などがあり、変化にとんだ山歩きができる。特に、中腹にある無明橋は幅40センチ、長さ1メートルほどの石橋で、下は千じんの谷とまではいかないが、スリル満点の橋だ》

そもそも「中山仙境」という名からして妖しい。
普通、山名には、「山」や「岳」が付く。
中山仙境と称する岩稜に、一応「高城」(たかじょう)という最高点(316.9m)はあるが、これがこの一帯の総称になっておらず、わざわざ「中山仙境」という名にしているところからして、なんだか特異な感じがする。
仙境とは、さしずめ「仙人のいるような秘境」という意味だろう。
いやはや楽しみな山である。

唐津から国東半島までは、遠い。
片道4時間ほどかかる。
おいそれとは行けない山だ。
今年のからつ労山の年間スケジュールに「中山仙境」が入っているのを見て、私は秘かに喜んだ。
〈これで念願が叶う〉と。

多久IC入口で、からつ労山のマイクロバスを待つ。
ここから乗り込むのは、私と、Kさんご夫婦と、Kさんのお孫さん2人。
お孫さんは、小学2年生の男の子と、小学5年生の女の子。
子供たちにも登山の楽しさを伝えていくのも山岳会の役目のひとつ。
賑やかな山行になりそうだ。


10:30
中山仙境の前田登山口に到着。
すぐに準備とストレッチ。


案内板の右下の「現在地」と書かれてある場所から出発し、岩稜歩きをした後、左下の方へ下りてくる。


10:50
前田登山口を出発。


登山道には常緑樹が多いが、所々にハッと目を惹く紅葉が見られる。


登山道には、番号をふられた札所が点在し、石仏が鎮座している。
信仰の山、修行の山であることを、ひしひしと感じる。



しばらくは、こうした緑のトンネルを歩いて行く。


途中に、登山道を塞ぐように倒木があり、その広い根の部分に穴がうがたれていた。


反対側から見ると、こんな感じ。
この穴から這い出してくる。(笑)


と、急に視界が開け、絶景が待ち構えている。


紅葉はそれほど期待していなかったが、なかなかである。


しばし、足が止まる。


北東の方角には、連なる岩峰群が見える。
これが実に素晴らしい!
高さはないものの、なんだか北アルプスの山々の連なりを連想させる。


絶景とはまさにこの眼前に広がる風景のことだ。


この鎖場を登ると、いよいよ無明橋。
〈おっと、誰かの絶叫が聞こえるぞ~〉
楽しみだ~(笑)


11:44
これがその無明橋。(渡り終えて撮ったもの)
向かって右側はするどく切れ落ちている。


だが、思ったほど恐くはない。
アキさんも、す~いすい。


私ももう一度向こうへ渡り、記念写真。


ここから先は、もう絶景の連続。


様々な色の重なり。

ブゼンノギク越しに遠景を楽しむ。


中山仙境の最高点「高城」山頂へは、ここを登ればスグ。


12:34
山頂に到着。
標識には「夷耶馬」と記されていた。


この山頂からの眺めも素晴らしい!
とても300m前後の低山とは思えない風景である。


山頂は狭いので、山頂からしばらく歩いた場所で昼食。


こんな風景を眺めながらのランチは最高だった。


目を右に転ずると、こんな風景。


さらに右下に目を向けると……言葉が出ない。


13:22
下山開始。
傍らに白い花が咲いていた。


13:36
隠洞穴を通過。


13:53
メタセコイヤの下を通過。


14:02
「中山仙境下山口」に到着。
ここが登山口ではなく下山口となっているのは、下山専門に使ってもらいたい為なのか……と思った。
岩の稜線は幅も狭く、すれ違うのは困難な箇所が多く、登山道を一方通行にして安全に歩けるように……とのことなのだろう。


14:09
マイクロバスの待つ「河川プール登山口駐車場」に到着。
スリル満点の楽しい岩稜歩きが終わった。


短い時間だったが、岩峰の低山歩きを存分に楽しめた一日であった。
その後「豊後高田市健康交流センター・花いろ温泉」で疲れを癒し、帰路についた。
今回は、歩行時間が短いこともあって、一般参加の方も多く、賑やかな山行であった。
これからも、お子さんや山を歩き慣れていない方々が参加しやすい山行をしばしば企画する必要性を感じた。
自分たちの楽しみを追求するだけでなく、山を愛する者として、山歩きの楽しさを多くの人に伝えていく役割も担えれば……と思った。

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