一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『 ソーシャル・ネットワーク』……その現場にいるような臨場感……

2011年01月20日 | 映画
SNS(ソーシャル・ネットワーキング・システム)と聞いて、まず思い出すのは、私の場合mixi(ミクシィ)である。
現在2000万人以上の人が入会しているmixiであるが、私が入会していた2005年頃は、まだ100万人にも満たない会員数であった。
既に入会している登録ユーザーから招待を受けないと利用登録ができないという“完全招待制”(2010年3月1日より招待状無しでも参加できるようになった)で、ユーザーの素性が明らかで、健全で安心感のあるコミュニティが維持できるというのがウリで、なんだか新鮮に感じ、少しの間ハマっていた時期があった。
だが会員数が増えるにつれて匿名が増え、SNSの特性は失われて魅力がなくなり、2005年末に私は退会した。
日本では、このmixiや、モバイル向けのGREEやモバゲータウンが有名だが、海外では世界最大の会員数を持つフェイスブック(Facebook)が断トツであろう。
現在、世界中に5億人(日本国内のユーザーは約180万人と、人気はイマイチ)を超えるユーザーを持つフェイスブック。
映画『 ソーシャル・ネットワーク』は、そのフェイスブックの創設者であるマーク・ザッカーバーグが、フェイスブックを立ち上げるまでと、その後の二つの裁判を通してフェイスブック創設の裏側にあったカオスを描いている。
……とは言っても、現在26歳のマーク・ザッカーバーグが、フェイスブックをハーバード大学寮の一室から始めたは弱冠19歳の時であったから、わずか数年のドラマではあるのだが……


2003年。
ハーバード大学2年生のマーク・ザッカーバーグ(ジェシー・アイゼンバーグ)は、高校時代から腕利きのハッカーだったが、人付き合いに関してはおくてで、ガールフレンドのエリカ(ルーニー・マーラ)を怒らせ、別れを告げられる。


寮の自室に戻り、やけでビールを飲みブログに彼女の悪口を書いていたが、やがてハーバード中の寮の名簿をハッキング、女子学生たちの写真を並べてランク付けするサイト作りに没頭する。
このサイト【フェイスマッシュ】はたった2時間で22,000アクセスに達し、マークの名前はハーバード中に知れ渡る。
これが利用者全世界5億人以上のSNS【フェイスブック】の始まりであった……。


2004年。
資産家の家に育ち、次期オリンピックにも出場が期待されるボート部のトップ、双子のウィンクルボス兄弟は憤慨していた。
自分たちが企画した学内男女のインターネット上の出会いの場【ハーバードコネクション】立ち上げのためマークに協力を要請していたが、彼は【フェイスブック】を立ち上げてしまったのだ。
彼らは、早速、自分の父親の会社の弁護士を介し知的財産の盗用だ、として停止警告を送る……。


一方、【フェイスブック】の共同創業者&CFO、エドゥアルド・サベリン(アンドリュー・ガーフィールド)とマークはNYへ広告スポンサー候補との会合に出かけ、19歳で【ナップスター】を作ったショーン・パーカー(ジャスティン・ティンバーレイク)に出会う。
ショーンは【フェイスブック】が目標にすべき評価額は10億ドルだとアドバイス、そこまで成長させるためカリフォルニアに来るように持ちかける。


マークはスタッフを増やしサーバーを増設、ショーンは次々に投資家とのミーティングを設定するが、それに怒ったエドゥアルドは会社の口座を凍結する……。
やがてウィンクルボス兄弟はアイデアを盗用されたと言い、エドゥアルドは創業者としての権利を主張、マークを告訴する……
(ストーリーはgoo映画等から引用し構成)


監督は、『セブン』『ファイト・クラブ』『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』のデヴィッド・フィンチャー。
大好きな監督なので、期待して見に行った。
で、見た感想はというと……

「いやはや、すごいスピードの映画だった」

その早口の会話に圧倒されっぱなしの2時間であった。
ガールフレンドに振られるファーストシーンから、パソコンのディスプレイを眺めているラストシーンまで、それこそ一気に持って行かれてしまう。
めくるめく2時間。
映画を見ている間、私もその現場にいるような臨場感があり、アドレナリン大放出。
息詰まるほどの緊張感。
音楽もバブルの頃を思い出させる激しいリズム。
ずっと興奮状態。
ここまで見る者をグイグイと引っ張っていく力は、タダモノではない。
やはり、これは、脚本と演出の勝利であろう。
見事だし、傑作の部類に入る作品と言っていいと思う。


ただ、見終わった時に、感動はない。
あるのは、一種の徒労感。
空しさ。

皮肉なことに、
5億人の友だちを創った男から、人は次々と離れていってしまう。
5億人の友だちを創った男は、たったひとりの好きな女の子には振り向いてもらえない。


5億人も友だちを創った男なのに、誰とも繋がることができない。
5億人も友だちを創った男なのに、孤独。


だが、この作品は、そんなステレオタイプの結論を導き出したいために制作されたのではないだろう。
最先端のカルチャーを臨場感たっぷりに描き出すこと、
その中に観客を放り込み、撹拌すること、
そして、これまで誰も体験したことのない愉楽と空虚を同時に体感させること、
そこにこそ、この映画の真の目的があるような気がする。


私はけっこう楽しませてもらったが、中にはついていけない人もいるかもしれない。
パソコンに興味がなく、動体視力の落ちている人には、けっこうキツイかも。(笑)
まあ、私のブログを見ている人は、一応パソコンのある環境にいる人だろうし、私のブログの小さい字を判読できる人なので、きっと楽しめると思う。
(字幕を追うために、すこし後ろの席がオススメ)

今という時代を知るための、
知的、
体感的、
エンタテインメント作品。
あなたも、ぜひ……

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