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「ランドネ」という雑誌は、
山登りやキャンプ、ピクニックなどアウトドアのアクティビティに興味をもち、
自分らしく自然を楽しむ女性を応援する隔月誌(奇数月の23日に発売)。
「歩いて出会う。アウトドアの旅へ」
をコンセプトに、
自然のなかを歩き、ふもと町を旅する魅力を提案し、
そのために必要な基礎知識や、ウエア・道具などの情報を提供してくれている。
女性のための雑誌ではあるが、
山も、人生も、セミリタイアしている(私のような)男性にとっても、
実に面白く、ためになる雑誌である。
現在発売中の「ランドネ」(2020年7月号 No.112)は、
新型コロナウイルスの影響で、山へは行けず、
自宅で過ごすことの多い人へ向けての特別企画で、
山を愛する100人の、山にまつわるエピソードを紹介している。
それぞれの物語を読んでいると、
大きな自然に包まれて、
一歩ずつ歩みを進めて、
遠くの山並みに思いを馳せながら、
木々や草花の姿に心ときめかせたこと。
肌をなでる風の音を聴き、
むせ返るような土の香りを深呼吸して体に取り入れたことなどが、
今しがた体験したように己の体内に蘇ってくる。
雑誌の内容を紹介しながら、
私の心に響いてきた言葉を記していきたいと思う。
①「山との出会い」がテーマ。
四角友里(アウトドアスタイル・クリエイター)、
小島聖(女優)、
トクマルシューゴ(ミュージシャン)の3名が、
山への思いを綴っているのだが、
四角友里の次の言葉に心打たれた。
登山は、体を動かす行為だと思っていた私に、心を動かす行為なのだと、森が教えてくれた……
う~ん、深い。
深い言葉だ。
こういう言葉は男の私には思い浮かばない。
山や自然に対しては、男性よりも女性の言葉に心動かされることの方が多い。
②「お気に入りの山道具」がテーマ。
12人が、愛すべき山道具と、その思い出を綴っているのだが、
中島英摩(アウトドアライター)は、どんな山旅にもワンピースを一枚ザックに忍ばせているという。
それは、毎年のようにアメリカのトレイルを歩いている男性から言われた、次の一言に由るという。
ハイカーの女の子たちはバックパックにワンピースを一枚忍ばせていてさ、町に下りるとスカートがふわりとなびいて歩く姿が最高にかわいいんだ。
男顔負けのゴリゴリの山女が、
下山した途端、スカート姿に変身したら、
大抵の男はそれだけでノックアウトされてしまうだろう。(コラコラ)
下山後だけでなく、縦走中にも山小屋やテントの中などでも着用したら、
全身を締め付けるものから解放される快感が味わえるとのことなので、
オシャレな山ガールにとっては、ワンピースは必須アイテムと言えるのではないだろうか……
③「思い出の山ルート」がテーマ。
ここでは32人の山好きが、忘れられない思い出の山やルートを綴っている。
その中でも、とりわけ私の心に響いた体験談は、
華恵(モデル、エッセイスト)のものであった。
華恵については、昔、ブログに書いているので、コチラを見ていただくとして、
彼女が、(おそらく片想いの)ある男性と、
日和田山(標高305m、埼玉県日高市)に登ったときのこと。
彼は時折写真を撮った。パシャ、パシャ、と背後から聞こえる。私はとくに待ったりはせずゆっくり進む。自分が深呼吸をしたくなれば、自分のタイミングで止まる。離れすぎず、くっつかず。
景色が開け、ふもとの町が見えた。巾着田もきれいに広がる。彼も私もなにも言わずに、じっと町を見つめた。
多分、この先ずっと彼といっしょにいるわけではないだろう。そんなことをちらりと思うのに、それでも目に映る景色は愛おしく、空気もおいしい。そう思った。
この思い出は、すべて過去のこととなったいまでも、美しいままだ。
華恵が書く文章は本当に素敵だ。
離れすぎず、くっつかず。
とは、彼女と彼の関係性も表現しているのだろうし、
多分、この先ずっと彼といっしょにいるわけではないだろう。そんなことをちらりと思うのに、それでも目に映る景色は愛おしく、空気もおいしい。そう思った。
という文章には哀切さが漂う。
胸が締め付けられる。
④「忘れられない山ごはん」がテーマ。
山で食べるごはんを愛してやまない6名が、
山の思い出とともに"忘れられない味"を綴っている。
⑤「フォトグラファーが切り取った あの一瞬」がテーマ。
8名のフォトグラファーが、
山のなかで出会い、いまでも心に残る一瞬を、写真と共に紹介している。
大畑陽子が一番好きなのは朝日。
初めて富士山に登ったときのこと。
「行ってみよっか!」くらいの軽いノリで登り始めるが、
登れど登れど着かない頂上に心が折れそうになる。
頂上に着いたことで、やり尽くした感があって、ご来光なんてオマケくらいにしか思っていなかったが、ご来光を見た瞬間、
意もせず涙がぼろぼろ出て、自分のなかの汚いものが全部出たんじゃないかと思った。あのときの感動がいまでも忘れられなくて、私にとって朝日は特別なものになった。
という。
自分のなかの汚いものが全部出たんじゃないかと思った。
という表現には笑わされるが、
確かにご来光には浄化作用があると私も感じる。
⑥「私が山を好きな理由」がテーマ。
山好きイラストレーター4名が、
目の前に広がる風景や、心に刻まれた思い出を、
個性豊かな「絵」と文章で表現する。
この中では、伊藤佳美(画家)の次の言葉、
山が山になった所以、そこにある景色が、想像も及ばない歴史の上にあって、ただただ見せつけられて、血の奥の何か、かき立てられるような感覚の感触。
に感動させられた。
画家は、見えるものだけではなく、見えないものまで描いているのだ。
⑦「ランドネたのしみ隊に聞いた! 10の質問」がテーマ。
ランドネたのしみ隊が答えている。
⑧「おうちで楽しむ山カルチャー」がテーマ。
身近な木々や草花を深く知るきっかけをくれる「本」、
大自然を舞台にした「映画」、
心地よい「音楽」、
アウトドアで楽しむ「料理」を、
自然を愛する25人が綴っている。
ここでは、米川佐和子(蓼科山頂ヒュッテ・女将)が、
「自然に対する感謝の気持ちが、おのずとあふれ出る曲」
と語る、久石譲の「アシタカとサン」を紹介する。
この曲は、映画『もののけ姫』のラストシーンで流れるもので、
米川佐和子は、曲を聴きながら目を瞑ると、そこには、
美しい山並みが広がり、太陽の光、流れる雲、土の色、森の匂い、風や雨の音、木々のせせらぎ、鳥のさえずり……、自然のなかで過ごす一瞬一瞬の大切な思い出が、走馬灯のように思い浮かんでくるという。
この他、
インタビュー連載「だから、私は山へ行く。」では、
山で見つけた植物や景色などをモチーフにしたアクセサリーを制作するジュエリーブランド「YURI MIYATA」のデザイナー・宮田友理を紹介している。
宮田友理のアクセサリーの素晴らしさについてはこのブログでも書いているが、(コチラを参照)
今後は、
谷を霧が流れていく景色だったり、視界が一瞬で真っ白に変わる瞬間だったり……。山に登ったときに感じる空気の変化や神秘的な感覚を、自分なりの形に落とし込めたら、と思って毎日楽しく制作しています。
とのことなので、(今年の夏か秋には発表できそうとのことなので)
楽しみに待ちたいと思う。
今号「ランドネ」(2020年7月号 No.112)には、
読みもの企画がたっぷりと盛り込まれており、
読むだけで山へ行った気分にさせられる。
新型コロナウイルスが収束(終息)するまでは、
“おうち時間”のお供になる絶好の一冊だ。
ぜひぜひ。
「ランドネ」という雑誌は、
山登りやキャンプ、ピクニックなどアウトドアのアクティビティに興味をもち、
自分らしく自然を楽しむ女性を応援する隔月誌(奇数月の23日に発売)。
「歩いて出会う。アウトドアの旅へ」
をコンセプトに、
自然のなかを歩き、ふもと町を旅する魅力を提案し、
そのために必要な基礎知識や、ウエア・道具などの情報を提供してくれている。
女性のための雑誌ではあるが、
山も、人生も、セミリタイアしている(私のような)男性にとっても、
実に面白く、ためになる雑誌である。
現在発売中の「ランドネ」(2020年7月号 No.112)は、
新型コロナウイルスの影響で、山へは行けず、
自宅で過ごすことの多い人へ向けての特別企画で、
山を愛する100人の、山にまつわるエピソードを紹介している。
それぞれの物語を読んでいると、
大きな自然に包まれて、
一歩ずつ歩みを進めて、
遠くの山並みに思いを馳せながら、
木々や草花の姿に心ときめかせたこと。
肌をなでる風の音を聴き、
むせ返るような土の香りを深呼吸して体に取り入れたことなどが、
今しがた体験したように己の体内に蘇ってくる。
雑誌の内容を紹介しながら、
私の心に響いてきた言葉を記していきたいと思う。
①「山との出会い」がテーマ。
四角友里(アウトドアスタイル・クリエイター)、
小島聖(女優)、
トクマルシューゴ(ミュージシャン)の3名が、
山への思いを綴っているのだが、
四角友里の次の言葉に心打たれた。
登山は、体を動かす行為だと思っていた私に、心を動かす行為なのだと、森が教えてくれた……
う~ん、深い。
深い言葉だ。
こういう言葉は男の私には思い浮かばない。
山や自然に対しては、男性よりも女性の言葉に心動かされることの方が多い。
②「お気に入りの山道具」がテーマ。
12人が、愛すべき山道具と、その思い出を綴っているのだが、
中島英摩(アウトドアライター)は、どんな山旅にもワンピースを一枚ザックに忍ばせているという。
それは、毎年のようにアメリカのトレイルを歩いている男性から言われた、次の一言に由るという。
ハイカーの女の子たちはバックパックにワンピースを一枚忍ばせていてさ、町に下りるとスカートがふわりとなびいて歩く姿が最高にかわいいんだ。
男顔負けのゴリゴリの山女が、
下山した途端、スカート姿に変身したら、
大抵の男はそれだけでノックアウトされてしまうだろう。(コラコラ)
下山後だけでなく、縦走中にも山小屋やテントの中などでも着用したら、
全身を締め付けるものから解放される快感が味わえるとのことなので、
オシャレな山ガールにとっては、ワンピースは必須アイテムと言えるのではないだろうか……
③「思い出の山ルート」がテーマ。
ここでは32人の山好きが、忘れられない思い出の山やルートを綴っている。
その中でも、とりわけ私の心に響いた体験談は、
華恵(モデル、エッセイスト)のものであった。
華恵については、昔、ブログに書いているので、コチラを見ていただくとして、
彼女が、(おそらく片想いの)ある男性と、
日和田山(標高305m、埼玉県日高市)に登ったときのこと。
彼は時折写真を撮った。パシャ、パシャ、と背後から聞こえる。私はとくに待ったりはせずゆっくり進む。自分が深呼吸をしたくなれば、自分のタイミングで止まる。離れすぎず、くっつかず。
景色が開け、ふもとの町が見えた。巾着田もきれいに広がる。彼も私もなにも言わずに、じっと町を見つめた。
多分、この先ずっと彼といっしょにいるわけではないだろう。そんなことをちらりと思うのに、それでも目に映る景色は愛おしく、空気もおいしい。そう思った。
この思い出は、すべて過去のこととなったいまでも、美しいままだ。
華恵が書く文章は本当に素敵だ。
離れすぎず、くっつかず。
とは、彼女と彼の関係性も表現しているのだろうし、
多分、この先ずっと彼といっしょにいるわけではないだろう。そんなことをちらりと思うのに、それでも目に映る景色は愛おしく、空気もおいしい。そう思った。
という文章には哀切さが漂う。
胸が締め付けられる。
④「忘れられない山ごはん」がテーマ。
山で食べるごはんを愛してやまない6名が、
山の思い出とともに"忘れられない味"を綴っている。
⑤「フォトグラファーが切り取った あの一瞬」がテーマ。
8名のフォトグラファーが、
山のなかで出会い、いまでも心に残る一瞬を、写真と共に紹介している。
大畑陽子が一番好きなのは朝日。
初めて富士山に登ったときのこと。
「行ってみよっか!」くらいの軽いノリで登り始めるが、
登れど登れど着かない頂上に心が折れそうになる。
頂上に着いたことで、やり尽くした感があって、ご来光なんてオマケくらいにしか思っていなかったが、ご来光を見た瞬間、
意もせず涙がぼろぼろ出て、自分のなかの汚いものが全部出たんじゃないかと思った。あのときの感動がいまでも忘れられなくて、私にとって朝日は特別なものになった。
という。
自分のなかの汚いものが全部出たんじゃないかと思った。
という表現には笑わされるが、
確かにご来光には浄化作用があると私も感じる。
⑥「私が山を好きな理由」がテーマ。
山好きイラストレーター4名が、
目の前に広がる風景や、心に刻まれた思い出を、
個性豊かな「絵」と文章で表現する。
この中では、伊藤佳美(画家)の次の言葉、
山が山になった所以、そこにある景色が、想像も及ばない歴史の上にあって、ただただ見せつけられて、血の奥の何か、かき立てられるような感覚の感触。
に感動させられた。
画家は、見えるものだけではなく、見えないものまで描いているのだ。
⑦「ランドネたのしみ隊に聞いた! 10の質問」がテーマ。
ランドネたのしみ隊が答えている。
⑧「おうちで楽しむ山カルチャー」がテーマ。
身近な木々や草花を深く知るきっかけをくれる「本」、
大自然を舞台にした「映画」、
心地よい「音楽」、
アウトドアで楽しむ「料理」を、
自然を愛する25人が綴っている。
ここでは、米川佐和子(蓼科山頂ヒュッテ・女将)が、
「自然に対する感謝の気持ちが、おのずとあふれ出る曲」
と語る、久石譲の「アシタカとサン」を紹介する。
この曲は、映画『もののけ姫』のラストシーンで流れるもので、
米川佐和子は、曲を聴きながら目を瞑ると、そこには、
美しい山並みが広がり、太陽の光、流れる雲、土の色、森の匂い、風や雨の音、木々のせせらぎ、鳥のさえずり……、自然のなかで過ごす一瞬一瞬の大切な思い出が、走馬灯のように思い浮かんでくるという。
この他、
インタビュー連載「だから、私は山へ行く。」では、
山で見つけた植物や景色などをモチーフにしたアクセサリーを制作するジュエリーブランド「YURI MIYATA」のデザイナー・宮田友理を紹介している。
宮田友理のアクセサリーの素晴らしさについてはこのブログでも書いているが、(コチラを参照)
今後は、
谷を霧が流れていく景色だったり、視界が一瞬で真っ白に変わる瞬間だったり……。山に登ったときに感じる空気の変化や神秘的な感覚を、自分なりの形に落とし込めたら、と思って毎日楽しく制作しています。
とのことなので、(今年の夏か秋には発表できそうとのことなので)
楽しみに待ちたいと思う。
今号「ランドネ」(2020年7月号 No.112)には、
読みもの企画がたっぷりと盛り込まれており、
読むだけで山へ行った気分にさせられる。
新型コロナウイルスが収束(終息)するまでは、
“おうち時間”のお供になる絶好の一冊だ。
ぜひぜひ。