ももいろクローバーZの主演映画『幕が上がる』を見に行ってきた。
私の、ももいろクローバーZに対する知識は、
名前と顔が一致するのは百田夏菜子だけで、
他の4人は顔は知ってはいても、名前を言い当てることはできない。
やたらと元気の良いグループで、
NHKの紅白歌合戦に連続出場している。
その程度だ。
好感は抱いているものの、
当然のことながら、モノノフ(熱心なももクロファンの呼称)ではない。
では、なぜ『幕が上がる』を見に行ったのかというと、
①原作が平田オリザであること。
②監督が本広克行であること。
③脚本が喜安浩平であること。
④好きな女優・黒木華が出演していること。
の4つの要因に由る。
【平田オリザ】
1962年11月8日生まれ。
劇作家、演出家。劇団青年団主宰、こまばアゴラ劇場支配人。
代表作に『東京ノート』『ソウル市民』三部作など。
現代口語演劇理論の提唱者であり、
自然な会話とやりとりで進行していく「静かな演劇」の作劇術を定着させた。
戯曲集のほか『現代口語演劇のために』など理論的な著書も多い。
祖父は医師の平田内蔵吉、
父はシナリオライターの平田穂生。
母は心理カウンセラーの平田慶子。
母方の叔父に映画監督の大林宣彦がいる。
平田オリザの名を初めて知ったのは、
1981年に刊行された
『十六歳のオリザの未だかつてためしのない勇気が到達した最後の点と、到達しえた極限とを明らかにして、上々の首尾にいたった世界一周自転車旅行の冒険をしるす本』(晩聲社)
によってであった。
この旅行記の著者として、彼の名は鮮烈に記憶されている。
現在の写真を見ると、
尾木ママのような感じの優しそうな人物に見えるが、
実は、高校2年、16歳のときに高校を休学(のち中退)し、
自転車による世界一周旅行を決行。
その後世界26か国を放浪したという強者なのだ。
16歳で自転車による世界一周旅行なんてやったら、
普通はまともな生活はできなくなるものなのだが、(そうなのか?)
大学入学資格検定試験を経て、
1982年国際基督教大学に入学。
同年に処女作を執筆し、翌年に劇団青年団を結成するという、驚きの展開。
現在は、
東京藝術大学アートイノベーションセンター特任教授、
四国学院大学客員教授・学長特別補佐、
京都文教大学臨床心理学部客員教授、
大阪大学コミュニケーションデザインセンター客員教授、
首都大学東京客員教授、
シューレ大学アドバイザー、
日本劇作家協会理事をも務める。
いやはや、すごい人物なのである。
その平田オリザが、
2012年に、初めて書き下ろした小説が『幕が上がる』。
そして、その小説の映画化に名乗りを上げたのが、本広克行。
本広克行監督といえば、
『踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間!』(1998年)
『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(2003年)
『踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!』(2010年)
『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』(2012年)
などの『踊る大捜査線』シリーズが有名だが、
私としては、
そのスピンオフである傑作『交渉人 真下正義』(2005年)や、
私の大好きな映画『7月7日、晴れ』(1996年)の監督として記憶されており、
彼が監督したならば、ある水準以上の作品になるだろうと判断した。
しかも脚本が『桐島、部活やめるってよ』(2012年)の喜安浩平ならば、
いやがうえにも期待が膨らむ。
しかもしかも、私の大好きな黒木華も出演しているとなれば、
『幕が上がる』を見ないわけにはいかないではないか。
静岡県にある県立富士ケ丘高等学校の弱小演劇部。
2年生の高橋さおり(百田夏菜子)は、
無理矢理、演劇部の部長をやらされることになる。
顧問の溝口(ムロツヨシ)は演劇の知識も無ければ指導力も無い。
お姫様キャラのユッコこと橋爪裕子(玉井詩織)、
ムードメーカーのがるること西条美紀(高城れに)、
しっかり者の明美ちゃんこと加藤明美(佐々木彩夏)、
演劇強豪校からの転校生中西さんこと中西悦子(有安杏果)など、
個性豊かなメンバーが揃ってはいるものの、
さおりは演劇部をどうまとめていくか悩んでいる。
美術室を借りて練習に励んでいると、
美術教師の吉岡先生(黒木華)が適切なアドバイスをしてくれるようになる。
ネットで吉岡先生のことを検索すると、
なんと吉岡先生は、元“学生演劇の女王”であったのだ。
吉岡先生に演劇部の指導をお願いするさおり達。
条件つきで引き受けた吉岡先生の指導の下、
全国大会(全国高等学校演劇大会)出場を目指し、
彼女たちの演劇に打ちこむ日々が始まる……
いや~、面白かったです。
そして、感動。
“アイドル映画”を超えた、
少女映画、青春映画の秀作と言っていいでしょう。
従来の、少女を主役とした“アイドル映画”では、
相手役としてイケメンの若手男優を配し、
恋愛物のストーリーを組み立てるのが普通なのだが、
この『幕が上がる』は、恋愛は一切からんでいない。
純粋に、高校生の少女たちだけの物語なのだ。
前回紹介した『くちびるに歌を』もそうであったが、
性を意識しない少女たちの、
なんと清々しく美しいことか……
ストーリー紹介で、
私は舞台を「静岡県」と書いたが、
映画の解説には「地方都市の県立富士ケ丘高等学校」としか書かれていない。
(ちなみに、原作では北関東の県立高校)
映画では、富士山が大きく見える都市で物語が進むし、
演劇大会の会場の入口に「静岡県」の文字も見えていたので、
「静岡県にある県立富士ケ丘高等学校」と特定しても間違いではないだろう。
ロケもほとんどが静岡県で行われたようだ。
(ちなみに、ももクロのリーダー・百田夏菜子は静岡県出身)
この静岡県で撮影された風景が、とても好い。
時折、美しい富士山は出てくるものの、
絵葉書のようなありきたりの風景ではなく、
工場地帯や河原や土手など、
日常生活に根差した、どこか懐かしい風景が連続する。
そんな風景の中を自転車で疾走する少女たちが、
眩しいほどに輝いている。
原作が良くて、
監督が良くて、
脚本が良くて、
ロケ地が良くて、
そして、やはり、
ももクロの5人がすこぶる良かった。
最初はややぎこちないものの、
物語が進むにしたがって、
演技がどんどん上手くなる。
表情が豊かになる。
ももクロの5人が、
映画の中の少女たちと同じように、
成長していくのが、手に取るようにわかる。
このように、ももクロの5人の成長物語にもなっているのには、
いくつかの要因が挙げられる。
まず大きいのは、
順撮り(映画の物語が進行する順番通りに撮影すること)で撮られていること。
『キネマ旬報』(2015年3月上旬号)は、
映画『幕が上がる』を特集しているが、
その中の、本広克行監督と大林宣彦監督との対談で、
大林宣彦監督の「これは順撮り?」という問いに対し、
本広克行監督は次のように答えている。
本広 はい。日程的に無理をしてでも、ほとんどそうしました。今回は、ももクロのマネージャーさんが、この映画のために一カ月以上、忙しい彼女たちのスケジュールをしっかり空けてくれたんです。おかげで可能になったんですよね。
大林 順撮りの良さだね。こういう新人の娘たちを使って映画を作る場合は、それが基本なんです。
本広 やっぱりそうですか。最近のアイドル映画は時間をかけずに撮ってしまうことが多いようなんですが、きっちりと彼女たちと向き合うことが大事だと思ったんです。
大林 素人の娘にいくら演技指導したって学芸会にしかならないでしょ。だけど、彼女たちは紛うことなき青春の真っ只中にいるんだから、そのドキュメンタリーを撮れば一番輝くんです。僕は、「虚構で仕組んでドキュメンタリーで撮る」ということを一番大切にしているんだけど、特に少女映画は、演じる彼女たちの成長がそのまま役柄の成長と重なるのだから、そのためにも順撮りで撮るべきなの。
山口百恵が主演した『ふりむけば愛』(1978年)
薬師丸ひろ子が主演した『ねらわれた学園』(1981年)
原田知世が主演した『時をかける少女』(1983年)
など、アイドル映画を手掛けてきた大林宣彦監督の言葉だけに重みがある。
限られた日数での順撮りには、
ももクロメンバーの努力なくして成功しなかったと思われる。
同じ対談で、本広は次のようにも語っている。
本広 あんなに忙しいトップアイドルなのに、みんな常に完璧に台詞が入っているんです。誰ひとり「すみません、覚えてきてないです」なんていうことはなくて、NGも非常に少なかった。
台詞が完璧に入っているだけではない。
どんなに忙しくても居眠りしないし、
車両部の人から何からスタッフの名前を全員覚えて、呼んでいたとか。
だからスタッフもみんなモノノフになってしまって、
良い作品を作ろうとする機運が自然に高まっていったそうだ。
ももクロの5人をリードし、
素晴らしい演技で魅せた黒木華の存在も忘れてはならない。
『草原の椅子』(2013年)
『舟を編む』(2013年)
『小さいおうち』(2014年)
『銀の匙 Silver Spoon』(2014年)
『繕い裁つ人』(2015年)
など、私はこれまで、黒木華の出演する映画はかなり見ているが、
本作『幕が上がる』での彼女が最も魅力的だったと思う。
本広克行監督は、
アイドル映画はかくあるべき……という具合に、
ももクロの5人だけではなく、
黒木華をもまた、実に美しく撮っている。
現在公開中の
『ソロモンの偽証』前篇・事件(2015年3月7日公開)
にも出演しているので見に行くつもりでいるが、
『ソロモンの偽証』後篇・裁判(2015年4月11日公開予定)
もあるので、レビューはちょっと遅くなりそうだ。
私の年代から見ると、
人生において少女である時間は、
ほんの一瞬のようにも思える。
映画『幕が上がる』には、
ももクロの5人の“煌めく一瞬”が閉じ込められている。
本作を見ることは、
もはや忘れてしまっている己の“煌めく一瞬”を思い出すことでもある。
映画館で、ぜひぜひ。
私の、ももいろクローバーZに対する知識は、
名前と顔が一致するのは百田夏菜子だけで、
他の4人は顔は知ってはいても、名前を言い当てることはできない。
やたらと元気の良いグループで、
NHKの紅白歌合戦に連続出場している。
その程度だ。
好感は抱いているものの、
当然のことながら、モノノフ(熱心なももクロファンの呼称)ではない。
では、なぜ『幕が上がる』を見に行ったのかというと、
①原作が平田オリザであること。
②監督が本広克行であること。
③脚本が喜安浩平であること。
④好きな女優・黒木華が出演していること。
の4つの要因に由る。
【平田オリザ】
1962年11月8日生まれ。
劇作家、演出家。劇団青年団主宰、こまばアゴラ劇場支配人。
代表作に『東京ノート』『ソウル市民』三部作など。
現代口語演劇理論の提唱者であり、
自然な会話とやりとりで進行していく「静かな演劇」の作劇術を定着させた。
戯曲集のほか『現代口語演劇のために』など理論的な著書も多い。
祖父は医師の平田内蔵吉、
父はシナリオライターの平田穂生。
母は心理カウンセラーの平田慶子。
母方の叔父に映画監督の大林宣彦がいる。
平田オリザの名を初めて知ったのは、
1981年に刊行された
『十六歳のオリザの未だかつてためしのない勇気が到達した最後の点と、到達しえた極限とを明らかにして、上々の首尾にいたった世界一周自転車旅行の冒険をしるす本』(晩聲社)
によってであった。
この旅行記の著者として、彼の名は鮮烈に記憶されている。
現在の写真を見ると、
尾木ママのような感じの優しそうな人物に見えるが、
実は、高校2年、16歳のときに高校を休学(のち中退)し、
自転車による世界一周旅行を決行。
その後世界26か国を放浪したという強者なのだ。
16歳で自転車による世界一周旅行なんてやったら、
普通はまともな生活はできなくなるものなのだが、(そうなのか?)
大学入学資格検定試験を経て、
1982年国際基督教大学に入学。
同年に処女作を執筆し、翌年に劇団青年団を結成するという、驚きの展開。
現在は、
東京藝術大学アートイノベーションセンター特任教授、
四国学院大学客員教授・学長特別補佐、
京都文教大学臨床心理学部客員教授、
大阪大学コミュニケーションデザインセンター客員教授、
首都大学東京客員教授、
シューレ大学アドバイザー、
日本劇作家協会理事をも務める。
いやはや、すごい人物なのである。
その平田オリザが、
2012年に、初めて書き下ろした小説が『幕が上がる』。
そして、その小説の映画化に名乗りを上げたのが、本広克行。
本広克行監督といえば、
『踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間!』(1998年)
『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(2003年)
『踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!』(2010年)
『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』(2012年)
などの『踊る大捜査線』シリーズが有名だが、
私としては、
そのスピンオフである傑作『交渉人 真下正義』(2005年)や、
私の大好きな映画『7月7日、晴れ』(1996年)の監督として記憶されており、
彼が監督したならば、ある水準以上の作品になるだろうと判断した。
しかも脚本が『桐島、部活やめるってよ』(2012年)の喜安浩平ならば、
いやがうえにも期待が膨らむ。
しかもしかも、私の大好きな黒木華も出演しているとなれば、
『幕が上がる』を見ないわけにはいかないではないか。
静岡県にある県立富士ケ丘高等学校の弱小演劇部。
2年生の高橋さおり(百田夏菜子)は、
無理矢理、演劇部の部長をやらされることになる。
顧問の溝口(ムロツヨシ)は演劇の知識も無ければ指導力も無い。
お姫様キャラのユッコこと橋爪裕子(玉井詩織)、
ムードメーカーのがるること西条美紀(高城れに)、
しっかり者の明美ちゃんこと加藤明美(佐々木彩夏)、
演劇強豪校からの転校生中西さんこと中西悦子(有安杏果)など、
個性豊かなメンバーが揃ってはいるものの、
さおりは演劇部をどうまとめていくか悩んでいる。
美術室を借りて練習に励んでいると、
美術教師の吉岡先生(黒木華)が適切なアドバイスをしてくれるようになる。
ネットで吉岡先生のことを検索すると、
なんと吉岡先生は、元“学生演劇の女王”であったのだ。
吉岡先生に演劇部の指導をお願いするさおり達。
条件つきで引き受けた吉岡先生の指導の下、
全国大会(全国高等学校演劇大会)出場を目指し、
彼女たちの演劇に打ちこむ日々が始まる……
いや~、面白かったです。
そして、感動。
“アイドル映画”を超えた、
少女映画、青春映画の秀作と言っていいでしょう。
従来の、少女を主役とした“アイドル映画”では、
相手役としてイケメンの若手男優を配し、
恋愛物のストーリーを組み立てるのが普通なのだが、
この『幕が上がる』は、恋愛は一切からんでいない。
純粋に、高校生の少女たちだけの物語なのだ。
前回紹介した『くちびるに歌を』もそうであったが、
性を意識しない少女たちの、
なんと清々しく美しいことか……
ストーリー紹介で、
私は舞台を「静岡県」と書いたが、
映画の解説には「地方都市の県立富士ケ丘高等学校」としか書かれていない。
(ちなみに、原作では北関東の県立高校)
映画では、富士山が大きく見える都市で物語が進むし、
演劇大会の会場の入口に「静岡県」の文字も見えていたので、
「静岡県にある県立富士ケ丘高等学校」と特定しても間違いではないだろう。
ロケもほとんどが静岡県で行われたようだ。
(ちなみに、ももクロのリーダー・百田夏菜子は静岡県出身)
この静岡県で撮影された風景が、とても好い。
時折、美しい富士山は出てくるものの、
絵葉書のようなありきたりの風景ではなく、
工場地帯や河原や土手など、
日常生活に根差した、どこか懐かしい風景が連続する。
そんな風景の中を自転車で疾走する少女たちが、
眩しいほどに輝いている。
原作が良くて、
監督が良くて、
脚本が良くて、
ロケ地が良くて、
そして、やはり、
ももクロの5人がすこぶる良かった。
最初はややぎこちないものの、
物語が進むにしたがって、
演技がどんどん上手くなる。
表情が豊かになる。
ももクロの5人が、
映画の中の少女たちと同じように、
成長していくのが、手に取るようにわかる。
このように、ももクロの5人の成長物語にもなっているのには、
いくつかの要因が挙げられる。
まず大きいのは、
順撮り(映画の物語が進行する順番通りに撮影すること)で撮られていること。
『キネマ旬報』(2015年3月上旬号)は、
映画『幕が上がる』を特集しているが、
その中の、本広克行監督と大林宣彦監督との対談で、
大林宣彦監督の「これは順撮り?」という問いに対し、
本広克行監督は次のように答えている。
本広 はい。日程的に無理をしてでも、ほとんどそうしました。今回は、ももクロのマネージャーさんが、この映画のために一カ月以上、忙しい彼女たちのスケジュールをしっかり空けてくれたんです。おかげで可能になったんですよね。
大林 順撮りの良さだね。こういう新人の娘たちを使って映画を作る場合は、それが基本なんです。
本広 やっぱりそうですか。最近のアイドル映画は時間をかけずに撮ってしまうことが多いようなんですが、きっちりと彼女たちと向き合うことが大事だと思ったんです。
大林 素人の娘にいくら演技指導したって学芸会にしかならないでしょ。だけど、彼女たちは紛うことなき青春の真っ只中にいるんだから、そのドキュメンタリーを撮れば一番輝くんです。僕は、「虚構で仕組んでドキュメンタリーで撮る」ということを一番大切にしているんだけど、特に少女映画は、演じる彼女たちの成長がそのまま役柄の成長と重なるのだから、そのためにも順撮りで撮るべきなの。
山口百恵が主演した『ふりむけば愛』(1978年)
薬師丸ひろ子が主演した『ねらわれた学園』(1981年)
原田知世が主演した『時をかける少女』(1983年)
など、アイドル映画を手掛けてきた大林宣彦監督の言葉だけに重みがある。
限られた日数での順撮りには、
ももクロメンバーの努力なくして成功しなかったと思われる。
同じ対談で、本広は次のようにも語っている。
本広 あんなに忙しいトップアイドルなのに、みんな常に完璧に台詞が入っているんです。誰ひとり「すみません、覚えてきてないです」なんていうことはなくて、NGも非常に少なかった。
台詞が完璧に入っているだけではない。
どんなに忙しくても居眠りしないし、
車両部の人から何からスタッフの名前を全員覚えて、呼んでいたとか。
だからスタッフもみんなモノノフになってしまって、
良い作品を作ろうとする機運が自然に高まっていったそうだ。
ももクロの5人をリードし、
素晴らしい演技で魅せた黒木華の存在も忘れてはならない。
『草原の椅子』(2013年)
『舟を編む』(2013年)
『小さいおうち』(2014年)
『銀の匙 Silver Spoon』(2014年)
『繕い裁つ人』(2015年)
など、私はこれまで、黒木華の出演する映画はかなり見ているが、
本作『幕が上がる』での彼女が最も魅力的だったと思う。
本広克行監督は、
アイドル映画はかくあるべき……という具合に、
ももクロの5人だけではなく、
黒木華をもまた、実に美しく撮っている。
現在公開中の
『ソロモンの偽証』前篇・事件(2015年3月7日公開)
にも出演しているので見に行くつもりでいるが、
『ソロモンの偽証』後篇・裁判(2015年4月11日公開予定)
もあるので、レビューはちょっと遅くなりそうだ。
私の年代から見ると、
人生において少女である時間は、
ほんの一瞬のようにも思える。
映画『幕が上がる』には、
ももクロの5人の“煌めく一瞬”が閉じ込められている。
本作を見ることは、
もはや忘れてしまっている己の“煌めく一瞬”を思い出すことでもある。
映画館で、ぜひぜひ。