広瀬すず主演のNHK連続テレビ小説『なつぞら』(2019年4月~9月)を楽しんでいた夏、
広瀬すずについての嬉しいニュースが飛び込んできた。
広瀬すずが舞台に初挑戦するというのだ。
彼女の初舞台となる作品は、
野田秀樹作・演出のNODA・MAP第23回公演「Q:A Night At The Kabuki」。
嬉しいことに、
私の好きな松たか子の出演も決まっており、
さらに嬉しいことに、
九州(北九州芸術劇場)での公演もスケジュールに組まれており、
さらにさらに嬉しいことに、
激しいチケット争奪戦に参加し、
北九州芸術劇場での千秋楽である11月4日のチケットをゲットしたのだが、
席が、なんと、前から5列目。
嬉し過ぎて、狂喜乱舞したのは言うまでもない。
で、公演日を首を長くして待ち、
11月4日(月・祝)、
北九州芸術劇場へ出掛けたのだった。
北九州芸術劇場のある「リバーウォーク北九州」に到着。
2018年11月に観た舞台『贋作 桜の森の満開の下』も、
2018年2月に観た舞台『アンチゴーヌ』も、
公演会場は、ここ北九州芸術劇場であった。
ワクワクしてくる。
建物の中に入ると、
巨大なクリスマスツリーが飾られていて、
その前では、キッズによるダンス大会が開催されていた。
開場までには少し時間があったので、
お気に入りのテラスで寛ぐ。
ここから見る小倉城が美しい。(鳩もウットリとして眺めている)
開場時間になったので、6階に向かう。
列に並び、入場。
さあ、開演だ。
「Q:A Night At The Kabuki」の「Q」は、
世界的ロックバンドQUEEN(クイーン)の「Q」で、
クイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」を含むアルバム「オペラ座の夜」の世界観を、
野田秀樹流に舞台化したもの。
野田が描くのは、ズバリ“禁断の恋”。
ベースとなるのは、
ウィリアム・シェイクスピア不朽の名作、『ロミオとジュリエット』。
対立する間柄にも関わらず、恋に落ち、
密かに結婚したモンタギュー家の一人息子ロミオと、
キャピュレット家の一人娘ジュリエット。
動乱の時代のなか、ジュリエットはロミオと添い遂げるべく、仮死の毒で偽装自殺を図る。
しかし、ジュリエットが本当に死んだと勘違いしたロミオは、
彼女の墓の前で服毒し、自ら命を絶ってしまう。
ほどなく仮死状態から目覚めたジュリエットは嘆き悲しみ、
遂にはロミオの短剣を手に、彼の後を追ってしまうのであった……
という物語であるが、
〈だが、もし、悲恋のロミオとジュリエットが、本当は生きていたとしたら……〉
という仮説を立て、
“その後のロミオとジュリエット”を、
日本を舞台に物語を再構築したのが、
「Q:A Night At The Kabuki」なのだ。
この物語には、
二人のロミオ(志尊淳、上川隆也)と、
二人のジュリエット(広瀬すず、松たか子)が登場する。
対立するモンタギュー家と、キャピュレット家を、
日本の平家と源氏に置き換えて、
ロミオを瑯壬生(ろうみお)、
ジュリエットを愁里愛(じゅりえ)に言い換え、
若き瑯壬生(志尊淳)と愁里愛(広瀬すず)がいる過去と、
中年の瑯壬生(上川隆也)と愁里愛(松たか子)のいる30年後(?)が、
行き来しつつ、あるいは同時進行で、物語が展開する。
舞台は、
第1部95分
(15分休憩)
第2部70分
の2部構成で、
クイーンの楽曲に乗せてテンポよく進んでいく。
昨年(2018年)11月に観た、同じ野田秀樹の舞台『贋作 桜の森の満開の下』よりも解り易く、面白く、
予備知識をそれほど必要とせず、
NODA・MAP公演が初めての人も大丈夫な内容となっている。
で、舞台初挑戦の広瀬すずはどうだったかというと……
所々、発音的に判りにくい箇所があったものの、
声はよく通り、セリフもよどみなく、
舞台においても素晴らしい女優であることを証明してみせたと言えよう。
のっけから躍動した演技で魅せ、
服を脱ぎ捨て水着になったり、
(とは言っても大正時代の水着のような肌の露出の少ないもの)、
瑯壬生(志尊淳)とのキスシーンに挑んだり、
(とは言っても唇と唇の間に紙がさしはさまれる)
広瀬すずのイメージを損なわない程度に驚きのシーンがあり、
動きと、表情と、演技で、観客を魅了する。
私は5mという至近距離で目撃(笑)したが、
やはり、美しく、可愛かった。(コラコラ)
もうひとりの愁里愛を演じた松たか子は、
発声も演技も完璧で、
すべてのセリフがはっきり聴き取れ、
これ以上ない演技で素晴らしかった。
松たか子の舞台は、これまで、
『ラ・マンチャの男』(福岡)
『ハムレット』(福岡)
『モーツァルト!』(大阪)
などを観てきたが、
どの舞台でも完璧な演技をしていた。
TVドラマよりも、映画よりも、舞台でいちばん映える女優なんだと、
再認識させられた今回の「Q:A Night At The Kabuki」であった。
若き瑯壬生を演じた志尊淳。
『探偵はBARにいる3』(2017年)や、
NHK連続テレビ小説『半分、青い。』の藤堂誠(ボクテ)役などで認識していたが、
これほど舞台慣れしているとは思わなかった。
経歴を調べてみると、
ミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズン(2011年から2014年)で、
8作品に出演し、
その他にも、
『タンブリング vol.3』(2012年8月~9月)
Dステ 12th『TRUMP』(2013年1月~2月)
『春どこ2012』(2012年2月)
『春のめざめ』(2017年5月)
など、舞台経験は豊富で、驚かされた。
広瀬すずを立てつつ、自らの演技もしっかりこなし、
動きも、美しく、しなやかで、
多くの女性観客が魅了されたことと思う。
中年の瑯壬生を演じた上川隆也。
元々、劇団(演劇集団キャラメルボックス)出身なので、
客演も含め、舞台経験は数えきれないほどある。
1995年、NHKドラマ『大地の子』の主人公・陸一心役に抜擢され、
その素晴らしい演技で第4回橋田賞新人賞を受賞するなどしてからは、
TVドラマでも多くの作品に出演し続けてきた。
(その分、映画出演は案外少ない)
「Q:A Night At The Kabuki」では、
松たか子との息もぴったりで、
貫禄の演技だったと言えよう。
舞台では、
このように“絶対的な安心感のある俳優”がひとり居るだけで作品自体が締まる。
“4人のロミジュリ”を演じる松たか子、上川隆也、広瀬すず、志尊淳の他、
橋本さとし、小松和重、伊勢佳世、羽野晶紀、竹中直人など、
野田秀樹の企みに引き寄せられたキャストが集結しており、
そこに野田秀樹自身も加わり、
前代未聞の物語が展開する。
感心する舞台は数多くあるが、
これほど面白く楽しい舞台はそれほど多くはない。
しかも、広瀬すずの舞台初挑戦という魅力が加わっているのだ。
見逃す手はない。
後は、東京公演(2019年11月9日~12月11日)を残すのみ。
幸運にもチケットがゲットできましたら、ぜひぜひ。