一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『ズートピア』 ……「あきらめない」が信条のウサギ警察官が活躍する傑作……

2016年04月29日 | 映画
私は、映画レビューを書いていることもあって、
一般の人よりも映画館へ行く回数は多い(と思う)。
映画館では、上映前に、予告編を流す。
〈早く本編を見せてくれ!〉
と思うことの方が多いが、
ときには面白い(正確には、「面白そうな」)予告編に出合うこともある。
最近見た予告編では、『ズートピア』がそうだった。
動物たちが高度な文明社会を築いた世界「ズートピア」を舞台に、
ウサギの女の子ジュディが夢をかなえるために奮闘する姿を描いたディズニーアニメで、
普段は、あまりアニメ映画は見ないのだが、
この『ズートピア』は見たいと思った。


どんな動物も快適な暮らしができる環境が整えられた世界。


各々の動物たちには決められた役割があり、
農場でニンジン作りに従事するのがウサギの務めだったが、
ウサギの女の子ジュディは、
サイやゾウ、カバといった大きくて強い動物だけがなれる警察官に憧れていた。
警察学校をトップの成績で卒業し、
史上初のウサギの警察官として、
希望に胸を膨らませて大都会ズートピアにやってきたジュディだったが、


スイギュウの署長ボゴは、そんなジュディの能力を認めてくれない。


なんとかして認められようと奮闘するジュディは、
キツネの詐欺師ニックと出会い、
ひょんなことからニックとともにカワウソの行方不明事件を追うことになるのだが……



映画を見た感想はというと……
子供向けのアニメ映画と思いきや、
大人が見ても、十分に鑑賞に堪えうる作品であった。
ていうか、
大人の方が楽しめる映画だった。
大人にしか解らないオマージュや小ネタも多く、
〈これは子供には解らないだろうな~〉
というシーンが案外多かったような気がした。
例えば、
北極トガリネズミのミスター・ビッグが登場するシーン。


大人なら、マーロン・ブランドを思い浮かべ、
〈『ゴッドファーザー』のパロディだな〉
と思うが、
子供にはそれが判らない。


免許センター職員として、
パソコン入力、話し方、笑い方などが超スロー・ペースなナマケモノが出てくるシーンも、








〈ナマケモノに配役するなんて、お役所仕事を皮肉っているな〉
と、大人なら笑えるのだが、


子供だと、ただナマケモノの動きや話し方に面白味をおぼえるだけだろう。


また、
動物たちが人間のように暮らす楽園“ズートピア”にも、
人間社会と同じように差別や偏見があり、
その都度、見る者に、
大切なメッセージを投げかけてくれる。
このような、ちょっとした行いや言葉の機微も、
子供には解らないことではなかったかと思う。


主人公のジュディはウサギなので、
巨大な動物がひしめく“ズートピア”では、ある意味弱者であるのだが、
それでも、大きな夢を追って大都会にやってくる。
ところが憧れていたズートピアは、
何もかもが完璧というわけではなく、
より複雑で、厳しい現実が隠されている。
のっけから、そういったものに気づくことになる。
それと同時に、自分自身でも気づいていなかった自身の欠点に気づかされる。


そうした欠点を受け入れることで、
ウサギのジュディは、よりよく成長して行く。
困難に出遭う度に、ジュディが口にする言葉は、
「あきらめない。何があっても!」


主人公ジュディの日本語吹き替えは上戸彩。
映画を見る前は心配していたが、
ものすごく上手くてビックリ。
違和感なく楽しく見ることができた。


ドーナッツに目がない気の優しい猫ベンジャミン・クロウハウザーの吹き替えは、
人気お笑いコンビ、サバンナの高橋茂雄。


ポップスター、ガゼル役の吹き替えは、


ガールズグループ「Dream」「E-girls」のメンバーで、
昨年夏にソロデビューを果たしたDream Ami。
主題歌「トライ・エヴリシング」日本語バージョンも担当している。


この他、芋洗坂係長や厚切りジェイソンも吹き替えに参加している。

ミステリーとしても一級で、
スリルやサスペンスも存分に味わうことができる。
ハラハラ、ドキドキさせられ、
犯人の意外性にも工夫が凝らされている。
笑いあり、涙あり、感動ありの、
傑作アニメ映画『ズートピア』。
子供でも楽しめるが、
大人だったら、もっと楽しめること請け合い。
お子さんと、
お孫さんと、
映画館で、ぜひぜひ。


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