一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

NHKドラマ10『この声をきみに』 ……麻生久美子の顔と声に魅せられる……

2017年11月17日 | テレビドラマ


今秋のTVドラマで、
極私的にとても気に入っているドラマは、
NHKのドラマ10『この声をきみに』だ。
朗読教室を舞台に描く、楽しくも切ないヒューマンコメディーで、
私の好きな麻生久美子や、


ミムラや、


堀内敬子が出演していたので観始めたのだが、


これが、なかなかの作品で、
毎週……と言いたいところだが、選挙の政見放送などで放送されない週もあり、
毎回……欠かさず観ることになったのだ。


『この声をきみに』は、全8話で、
今日(11月17日)が最終話。
とても気に入ったドラマなので、
いつまでも忘れないために、(つまり私自身のために)
最終話の前に、このブログに書いておこうと思った。
書いておけば、いつでも思い出せるし、懐かしむことができる。


『この声をきみに』の楽しみは、
ストーリーの面白さもさることながら、
毎回紹介される朗読の本にもある。
知っている本もあるが、
知らない本もあり、
知らない本は、買って読んだりした。
たとえば『回転ドアは、順番に』(作:穂村弘 東直子/装画:三嶋典東)など。


若い頃は“朗読”にはまったく興味がなかったが、
50歳を過ぎた頃から、妙に“人の声”というものに魅かれるようになった。
“人の声”で紡ぎ出される物語に、
文字で読む物語以上の魅力を感じるようになった。
ことに、麻生久美子のような艶のある魅力的な声を聴くならば、
その世界にどっぷりと入り込んでしまう。
ストーリーの面白さもさることながら、
麻生久美子の声を楽しみに、毎回観ていたような気がする。




第1回「つまらない男」
大学で数学を教える穂波孝(竹野内豊)は、偏屈でさえない46歳。
話すことが苦手で、学生からの人気もない。
愛想を尽かした妻・奈緒(ミムラ)は子供と出て行ってしまう。
ある日、学部長から「話し方教室」へ行くよう命じられた孝は、
講師の江崎京子(麻生久美子)と出会う。
「こんな偉そうな女に教われるか」
という孝に、
「つまらない男」と言い放つ京子。
彼女の上司・佐久良(柴田恭兵)が仲裁に入るものの、
険悪な雰囲気でふたりは別れる。
しかし数日後、思わぬ場所で再会する。
それは、町はずれの小さな朗読教室だった。


第1回の朗読作品
『生きる』(作:谷川俊太郎)
『くじらぐも』(作:中川李枝子/絵:柿本幸造)
『恋のわらべ唄』(作:寺山修司)





第2回「友だちはカエルくん」
孝(竹野内豊)は朗読教室で聞いた、京子先生(麻生久美子)の魅力的な声が忘れられない。
再び教室を訪ねた孝は、主催者の佐久良先生(柴田恭兵)に温かく迎えられ、
船乗りの邦夫(杉本哲太)や、
無口なOL・泰代(片桐はいり)、
声優志望の実鈴(大原櫻子)など個性的な生徒たちと出会う。
しかし協調性がない孝は、みんなにうまく溶け込めない。
カエルの友情を描いた童話を聞くと、理屈っぽい質問を繰り返し、京子先生を困らせる……


第2回の朗読作品
『旅上』(作:萩原朔太郎)
『五十音』(作:北原白秋)
『ふたりはともだち』(作:絵 アーノルド・ローベル/訳:三木卓)
『はだかの王さま』(作:ハンス・クリスチャン・アンデルセン/絵:吉岡紗希)





第3回「雨にも負けぬ男」
孝(竹野内豊)と妻・奈緒(ミムラ)の離婚協議が始まった。
孝の前で、奈緒は初めて離婚を決心した理由を語る。
その怒りは、想像を遥かに超えた激しさで、孝は打ちのめされる。
それでも孝はこどもたちの機嫌を取ろうと、
息子が大好きな「くじらぐも」を読み聞かせることを思いつき、朗読教室に向かう。
しかしプライドが高い孝は、京子(麻生久美子)に、
こどものために詩の朗読を教えて欲しいとなかなか切り出せない……


第3回の朗読作品
『氷菓』(作:室生犀星)
『雨ニモマケズ』(作:宮澤賢治)
『くじらぐも』(作:中川李枝子/絵:柿本幸造)
『津軽』(作:太宰治)
『月夜の浜辺』(作:中原中也)





第4回「飛べ!くじらぐも」
孝(竹野内豊)は家族とよりを戻すため、
長男・龍太郎が大好きな詩「くじらぐも」の朗読レッスンに打ち込む。
しかし、空飛ぶクジラを非現実的だと思う孝は、詩の世界に入り込めず、悩んでしまう。
そして、龍太郎たちと会う日がやって来る。
心配する京子先生(麻生久美子)は、孝がいる公園に足を運ぶ。
すると、同じように様子をうかがう奈緒(ミムラ)の姿を見つける。
みんなが見守る中、孝の朗読が始まると、奇跡は起こった……


第4回の朗読作品
『くじらぐも』(作:中川李枝子/絵:柿本幸造)
『山椒大夫』(作:森鴎外)





第5回「キスはどうですか?」
ついに孝(竹野内豊)は、奈緒(ミムラ)との離婚を決意した。
朗読教室もやめようとするが、クラスメイトの邦夫(杉本哲太)たちに引き止められる。
一方、京子(麻生久美子)は理由も明かさないまま、教室を休み続けていた。
ある日、孝はナゾの車に連れ去られそうになる京子を偶然、見かける。
孝は声をかけるものの、京子は何も説明しようとはしない。
ただ孝に、朗読だけは嫌いにならないで欲しいと告げるのだった……


第5回の朗読作品
『今日』(訳:伊藤比呂美/絵:下田昌克)
『回転ドアは、順番に』(作:穂村弘 東直子/装画:三嶋典東)
『祈るように願う』(作:銀色夏生)
『心に太陽を持て』(作:ツェーザル・フライシュレン/訳:山本有三)
『サーカス』(作:中原中也)





第6回「もつれる2人」
孝(竹野内豊)と一夜を明かした京子先生(麻生久美子)は、
何事もなかったように朗読教室に現れる。
そんなミステリアスな京子の魅力に、ますます取りつかれて行く孝。
その一方で孝は、施設にいる父・定男(平泉成)の対応に頭を悩ましていた。
教室では実鈴(大原櫻子)が、雄一(戸塚祥太)に恋心を抱き始めていた。
しかし雄一が、一緒に朗読をしませんかと誘ったのは孝だった。
そして雄一は、孝の前で、思わぬことを告白する。


第6回の朗読作品
『数学的媚薬』(作:アレックス・ゴールト/訳:畔柳和代/装画:祖田雅弘)
『おじさんのかさ』(作・絵:佐野洋子)





第7回「ヒーローになる時」
京子(麻生久美子)の過去を知った孝(竹野内豊)は、衝撃を受けた。
そんな孝は佐久良先生(柴田恭兵)から、
彼女を救うヒーローになるのは君しかいないと言われ、戸惑ってしまう。
一方、教室では年一度の発表会を控え、題材選びで盛り上がっていた。
そうした中、孝は邦夫(杉本哲太)に誘われ、ナゾの会合に潜入する。
それは女子禁制の朗読会で、読まれるのはグルメ本ばかり。
美味しそうな言葉の世界に浸り、孝は欲望を解放する。


第7回の朗読作品
『注文の多い料理店』(作:宮沢賢治)
『天ぷらそばのツライとこ』(作・絵:東海林さだお)
『HERO』(作詞:桜井和寿)





そして、いよいよ11月17日(金)に、
最終回が放送されます。



最終回「美しくひびきよく」
孝(竹野内豊)の恋の告白も届かず、
京子先生(麻生久美子)が朗読教室をやめる決意は固かった。
発表会が近づく中、孝たちは京子の引止め作戦を思いつく。
そんなある日、息子の龍太郎から手紙が届き、孝は大喜び。
そして妻・奈緒(ミムラ)と久しぶりの再会を果たす。
一方、教室では泰代(片桐はいり)が発表会に読む本について悩んでいた。
片思いのヨガ教室の先生を会場に誘ってしまったのだ。
そんな泰代に京子はある本を薦める。


最終回の朗読作品
『チョウの数』(著:日高敏隆)
『おじさんのかさ』(作・絵:佐野洋子)
『ほぐす』(作:吉野弘)
『アエイウエオア王物語』(作:菅井建)
『ハート型の思い出』(作:寺山修司)
『手袋を買いに』(作:新見南吉)
『ふたりはともだち』(作・絵:アーノルド・ローベル/訳:三木卓)
『おおきなかぶ』(ロシアの昔話・再話:A.トルストイ/訳:内田莉莎子/絵:佐藤忠良)
『あいたくて』(作:工藤直子)
『世にも美しい数学入門』(著:藤原正彦)




脚本を担当したのは、大森美香。
そして、嬉しいことに、オリジナル作品。
大森美香といえば、
『あさが来た』や『聖女』が思い出されるが、
どちらも好きなドラマだったし、
『聖女』については映画『柘榴坂の仇討』のレビュー(←クリック)を書いたときに触れている。
『聖女』の主題歌は、JUJUが担当していたが、


この『この声をきみに』でも彼女が担当しているのが嬉しい。


『この声をきみに』の裏番組に、
これまた優れたドラマ『コウノドリ』をやっているので、
そちらを観ている人も多いと思うが、(私もTVerで後から観ている)
もし『この声をきみに』に興味を持たれた方がおられましたら、
ぜひぜひ。
人の声には“癒し効果がある”ことが実感できますよ。


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