「欅坂46」の平手友梨奈の、
映画初出演にして、映画初主演となる作品である。
【平手友梨奈】
2001年6月25日生まれ。愛知県出身。
2015年8月に結成された、秋元康総合プロデュースの女性アイドルグループ「欅坂46」のメンバー。
2016年4月6日リリースしたデビューシングル「サイレントマジョリティー」は、
初週26万1580枚を売り上げ、女性アーティストオリコン初週売上歴代1位を記録。
以降、
2016年8月10日リリース「世界には愛しかない」
2016年11月30日リリース「二人セゾン」
2017年4月5日リリース「不協和音」
2017年10月25日リリース「風に吹かれても」
2018年3月7日リリース「ガラスを割れ!」
2018年8月15日リリース「アンビバレント」
と、デビュー曲から7作目まで、
「欅坂46」の圧倒的センターとして存在。
その存在感は中高生を中心に多くの著名人からも支持を集める。
60代の私であるが、
最近では、「AKB48」よりも、「乃木坂46」よりも、
「欅坂46」に関心を抱いているし、
センターを務める平手友梨奈に魅力を感じている。
普段はおっとりした印象でおとなしいイメージだが、
パフォーマンスのときには、何かが憑依したような、
鬼気迫る表情とダンスで観る者を魅了する。
そのミステリアスな平手友梨奈が、
映画初出演にして初主演しているという映画『響-HIBIKI-』。
原作は、「マンガ大賞2017」大賞を受賞した柳本光晴の人気漫画。
平手友梨奈の他には、
北川景子、小栗旬、高嶋政伸、柳楽優弥、吉田栄作など豪華俳優陣が出演しており、
監督は、
『黒崎くんの言いなりになんてならない』(2016年)
『君と100回目の恋』(2017年)
『君の膵臓をたべたい』(2017年)
『となりの怪物くん』(2018年)
『センセイ君主』(2018年)
など、話題作を連発し、一定の評価を得ている月川翔。
〈見てみたい!〉
と思った。
9月14日に公開された作品であるが、
古湯映画祭などに参加していた為に、なかなか時間が取れなかったが、
先日(9月26日)、ようやく見ることができたのだった。
スマートフォン・SNSの普及により、活字離れは急速に進み、
出版不況に陥っている文学界。
ある日、文芸雑誌「木蓮」編集部に、一編の新人賞応募作が届く。
ネットでの応募を条件としている新人賞に、
手書きの原稿が届いたのだ。
応募要項を一切無視しているため、破棄されるはずだったその作品に、
編集者の花井ふみ(北川景子)が偶然目を留める。
「お伽の庭」と題されたその小説は、
圧倒的かつ絶対的な才能を感じさせるもので、
文学の世界に革命を起こす力を持っていた。
だが、鮎喰響という差出人の名前は書いてあるが、
連絡先となる住所も電話番号も書かれていなかった。
鮎喰響となんとか連絡を取りたいと思っていた花井ふみは、
ベストセラー作家・祖父江秋人(吉田栄作)の原稿を取りに行った時に、
祖父江秋人の娘・祖父江凛夏(アヤカ・ウィルソン)と一緒にいた女子高生と出会う。
その15歳の女子高生こそが、鮎喰響(平手友梨奈)であったのだ。
花井ふみとの出会いによって、
鮎喰響は、一躍、世の脚光を浴びることとなる。
しかし、響は、普通じゃない。
彼女は、自分の信じる生き方を絶対曲げない。
世間の常識に囚われ建前をかざして生きる人々の誤魔化しを許すことができない。
響がとる行動は、
過去の栄光にすがる有名作家・鬼島仁(北村有起哉)、
スクープの欲だけで動く記者・矢野浩明(野間口徹)、
生きることに挫折した売れない小説家・山本春平(小栗旬)など、
様々な人に計り知れない影響を与え、
彼らの価値観をも変え始める。
一方、響の執筆した処女作は、
日本を代表する文学賞である直木賞と芥川賞の、
ダブルノミネートという歴史的快挙にまで発展していく……
見た感想はというと、
平手友梨奈の存在感が圧倒的な、超痛快作であった。
映画初出演ということで、演技はまだまだであるが、
平手友梨奈の目力、存在感は群を抜いており、
さすがの北川景子、小栗旬、高嶋政伸、柳楽優弥、吉田栄作なども、
平手友梨奈の前では霞んで見えるほどであった。
〈もしも主人公が平手友梨奈でなかったならば、悲惨な結果になっていたかもしれない……〉
そんなことも想像させるほどに、その存在感を見せつけていたのだ。
スマートフォン・SNSの普及により、活字離れは急速に進み、
出版不況に陥っている“文学界”という舞台設定が好い。
“文学界”は救世主となる“天才”を待ち望んでいる。
“天才”とは言わないまでも、
圧倒的な才能を感じさせる“新人”を待望している。
だが、才能ある若者は、現代では文学には関心を示さない。
50年以上、本を読み続けている私の実感でもある。
才能ある若者は、もっと将来性のある、もっとお金になる分野に分散してしまっている。
スポーツ界でも同じ現象が起きている。
相撲界では、海外勢の活躍が目立ち、
「日本人は弱くなった」
と言う人もいるが、それは違う。
才能ある若者が、相撲に関心を示さなくなっただけなのだ。
もっとカッコイイ、もっと将来性のある、もっとお金になるスポーツに移行しただけなのだ。
誰があんな古くて暗い村社会のような相撲界に魅力を感じるだろう。
文学界は、いわばスポーツ界における相撲のような存在になりつつある。
有望な新人は現れず、ベテラン作家が、書くこともないのに惰性で書き続けている。
映画『響-HIBIKI-』では、
そんな低迷している文学界に突然現れた鮎喰響という天才女子高生を主役に、
腐りかけている文学界をぶち壊す。
それが痛快であり、面白い。
このミステリアスな鮎喰響という天才女子高生に、平手友梨奈がピタリとハマった。
〈もう、平手友梨奈以外は考えられない……〉
というほどに。
祖父江秋人(吉田栄作)の娘・祖父江凛夏を演じたアヤカ・ウィルソンも良かった。
アヤカ・ウィルソンといえば、『パコと魔法の絵本』(2008年)を思い出すが、
『矢島美容室 THE MOVIE〜夢をつかまネバダ〜』(2010年)以来、
8年ぶりの実写映画出演となる。
鮎喰響が所属する文芸部の部長で、
響の圧倒的な才能との差に苦しむ女子高生を演じているのだが、
明るい性格ながらも、複雑な思いを胸に秘めているという難しい役を、
実に巧く表現していた。
1997年8月3日生まれの21歳。(2018年9月現在)
8年ぶりに映画に出演した感想を、
久しぶりすぎて、忘れていたこともありましたが、『パコと魔法の絵本』の時とは違う視点で現場に入れました。久々の現場で少し緊張しましたが、現場に入ったら楽しくて、やっぱりこの仕事が一番好きだなと思いました。
と語っていたが、
これからも映画界で活躍してくれそうなコメントである。
次作を期待して待ちたい。
編集者の花井ふみを演じた北川景子。
モデルから女優になった頃は、
ただのキレイなおねえちゃんとしか思っていなかったが、
『花のあと』(2010年)の頃から、存在感が増し、
ここ数年、
『ジャッジ!』(2014年)
『HERO』(2015年)
『の・ようなもの のようなもの』(2016)
『君の膵臓をたべたい』(2017)
『探偵はBARにいる3』(2017年)
『パンク侍、斬られて候』(2018年)
など、このブログでもレビューを書いている作品に多く出演している。
ヒロインの役が多いが、
『ジャッジ!』でのコメディエンヌぶりも良かったし、
『パンク侍、斬られて候』での何かが憑依したような踊りも良かった。
本作『響-HIBIKI-』でも、
平手友梨奈を立てつつ、自らの存在感も十分に示しており、編集者役を好演していた。
『スマホを落としただけなのに』(2018年11月2日公開予定)も控えており、
これからも北川景子からも目が離せない。
主役が張れる小栗旬や、
柳楽優弥が、
〈よくこんな脇役のオファーを受けたな……〉
と思われるほどに、
鮎喰響(平手友梨奈)から説教されるような、ちょっと情けない作家を演じているのだが、
これも実にうまくハマっていて、
見どころの多い作品になっている。
ただの“アイドルを主役にした漫画が原作の映画”と侮ってはいけない。