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今年(2019年)の7月5日に公開された作品である。
サブタイトルに4名の女優(石橋静河、清原果耶、蒔田彩珠、恒松祐里)を記しているが、
この他にも、
岸井ゆきの、和久井映見、麻生久美子……など、
私の好きな女優がたくさん出演しているので、
当然のごとく
〈見たい!〉
と思った作品であった。
だが、「いつものごとく」っていうか「当然のごとく」っていうか、
佐賀では上映館がなかったのであった。
〈福岡まで見に行こう!〉
と思っていたが、
様々な事情で行けずにいたら、
あっという間に上映期間を過ぎてしまい、
見ることができなかったのである。
残念に思っていたところ、
12月4日にDVDが発売されることを知り、
年内に見ることができそうなので「ホッ」とした。
で、5ヶ月間待って、
昨日、やっと鑑賞することができたのだった。
坂の多い、どこにでもあるような田舎町。
中学生の笹沢コウタ(大西利空)は、
たったひとりの親友・伸二(小林喜日)と共に、
クラスメイトの“あーちゃん”こと天野千日(清原果耶)を、
“天の川の女神”と呼んで、ひそかに崇めていた。
しかしある日、
伸二は、千日を守ろうとして交通事故に遭い、死んでしまう。
十年後の7月7日。
東京、高円寺。
伸二の命日である七夕の日に、
冷凍食品の製造工場で働くコウタ(古舘佑太郎)は、
千日(石橋静河)と偶然再会する。
「すごい偶然ですよね。運命的ですよね。こんな日に、しかも東京で、ばったり“あーちゃん”に会うなんて。伸二君の命日の日に……運命でしょこれは!」
こう言って、ひとり興奮するコウタ。
このまま別れたくなかったコウタは、
「ラーメンでも食べませんか?」
と、目についたラーメン屋を見ながら叫ぶ。
冴えない感じのラーメン屋に入り、
同じく冴えない感じのお兄さん(峯田和伸)が作るラーメンを食べる二人。
自分が働いている会社の冷凍食品がいかに美味しいかを力説するコウタは、
「この店のらーめんより、よっぽど美味しいんだから!」
と言って、ラーメン屋のお兄さんをへこませる。
笑い転げる千日。
「また会えないかな」
というコウタの問いに、
「そうしよう。今日会ったところで、来年の今日……また。」
と答える千日。
それから二人は、毎年、七夕に会い、環七通りを散歩するようになった。
次第に“あーちゃん”に恋心を抱くようになるコウタであったが、
しかしある年、
伸二の「死」を背負いながら生きてきた千日は、
伸二との“過去の秘密”を語り
「もう会うのは終わりにしよう」
と告げるのだった……
十代のはじめの頃は、
男は誰しも、好きになった女の子が“女神”に見えるものである。
聖なる存在として、輝ける存在として、崇め奉る。
「おなら」はおろか、「うん○」さえしないのではないかと、本気で考えたりする。
確かにそんな時期があるのである。
だが、(いろんな意味で)女性を知り、大人になると、
そんな幻想は消えてしまう。
普通の男はそうである。
しかし、そんな幻想が大人になっても消えない男がいる。
それが、本作の主人公・笹沢コウタである。
好きな女性をいつまでも“女神”と崇める男は、
一般常識で判断すると、バカな男である。
“女神”と崇められる側の女性にとっても、迷惑な話である。
「気持ち悪い」とさえ思われてしまいかねない。
コウタから“女神”と崇められる千日(ちなみに「千日」は「ちか」と読む)も、
「私は“女神”なんかじゃないわよ」
と否定する。
不定はするが、
無条件で自分のことを肯定してくれるコウタの存在が、
過去に多くの傷を負っている(これは物語の後半で判明する)千日には“救い”となる。
だから、
一年に一度、コウタと会うことも、拒否しなかった。
だが、数年後、
いつまでたっても“女神”としか見ていないコウタに対して、怒りをぶつける。
「私はね、冴えない、なんの取り柄もない、地味な普通の、普通以下の女の子なんだよ。いまだに東京に全然馴染めないし、うまく友達もできないし。恋だってちゃんとできやしない。自分に自信なんかまったくない。付き合った男の人からは、つまんないとか、うざいとか言われて。すぐ逃げられるんだよ。そういう女の子なんだよ」
それから、自分の過去のことを語り出した千日は、
「ごめんなさい。今日で最後にする。今まで、ありがとう」
と言って、去って行く。
この後のことは書くまい。
後味は悪くない物語になっているので、
興味を持たれた方は、ぜひ映画を鑑賞してもらいたいと思う。
映画の評価としては、
「傑作」とまでは言えないが、
「愛すべき佳作」とは言えると思う。
「映画は娯楽」という観点から見れば、
とても楽しめた作品であるし、
個人的には、今年見た映画の中では、一番好きな作品かもしれない。
なぜなら、私の好きな女優がこれほど出演している映画は他にないからだ。
天野千日を演じた石橋静河。
コウタを演じた古舘佑太郎の饒舌で過剰な演技に対し、
静かな演技で魅せた石橋静河は本当に素晴らしかったし、美しかった。
天野千日の中学生時代を演じた清原果耶。
この役の清原果耶には、セリフがほとんど無かった。
あの演技派の清原果耶に言葉を封印し、
表情や動作だけで表現させた、
脚本を担当した岡田惠和と、菅原伸太郎監督の演出も「さすが」と言えるが、
演じた清原果耶を最大限に褒めるべきであろう。
言葉を封印してもなお彼女は魅力的であったのだ。
コウタが(ボランティアで訪れた)震災地で会った女の子を演じた蒔田彩珠。
ますます演技力に磨きがかかっていて嬉しかった。
コウタの弟・シゲの彼女・かずみを演じた恒松祐里。
ますます美しくなっていて、驚かされた。
コウタの住むアパートの隣人・アケミを演じた岸井ゆきの。
コミカルな演技で、大いに楽しませてくれた。
コウタの母を演じた和久井映見。
ちょっとトボけた演技で、和ませてくれた。
カメオ出演で、コンビニの店員を演じた麻生久美子。
出演時間は短かったが、見ることができただけで嬉しかった。
本作『いちごの唄』は、
ミュージシャンで俳優としても活躍する峯田和伸のバンド「銀杏BOYZ」の楽曲を基に、
脚本家・岡田惠和が書き下ろした小説を映画化したもので、
峯田和伸はもちろんのこと、
峯田和伸、岡田惠和とタッグを組んだことのある、
麻生久美子、みうらじゅん、田口トモロヲ、宮藤官九郎ら、
総勢11名の豪華キャストがカメオ出演している。
それを見つけるのも本作を見る楽しみのひとつと言えるだろう。
本当は、レビューのサブタイトルを、(長くなるのでスペースの関係でできなかったが)
…石橋静河、清原果耶、蒔田彩珠、恒松祐里、岸井ゆきの、和久井映見、麻生久美子は、女神だ!…
に、したかった、極私的に大好きな映画『いちごの唄』。
皆さんも、ぜひぜひ。