昨年(2014年)12月18日に更新した、
長崎ロケの映像が素晴らしかった青春恋愛映画『アオハライド』のレビューで、
私は次のように記している。
三木孝浩監督作品としては、
来年(2015年)2月28日公開予定の『くちびるに歌を』が控えている。
これもまた長崎県(五島列島)が舞台の物語。
私の好きな新垣結衣、木村文乃、木村多江も出演しているので、
必ず見に行くつもり。
その予告通り、さっそく『くちびるに歌を』を見に行ってきた。
(ちなみに私は長崎県佐世保市出身で、長崎県を舞台にした作品や、長崎県でロケした作品はなるべく……っていうか必ず見るようにしているのだ)
長崎県の五島列島にある中五島中学校。
産休を取ることになった親友の音楽教師・松山ハルコ(木村文乃)の代理として、
数年ぶりに生まれ故郷に戻ってきた柏木ユリ(新垣結衣)。
東京でピアニストとして活躍していたという、
美人の臨時教師に興奮する生徒たちであったが、
柏木は、なぜか冷たい態度しか示さず、
ピアノも弾こうとはしなかった。
嫌々合唱部の顧問になった柏木は、
もともと女子だけの合唱部に、男子を入部させ、
混声で全国コンクール出場に臨むという。
男子は、美人の柏木を目当てに入部しただけなので、
練習熱心ではなく、すぐにサボる。
女子部員たちは、イライラがつのり、
合唱部は大混乱。
そんなある日、
柏木は課題曲「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」の練習のため、
“15年後の自分へ手紙を書く”という宿題を出す。
責任感が強い部長の中村ナズナ(恒松祐里)や、
引っ込み思案だが合唱に魅せられた新入部員・桑原サトル(下田翔大)など、
明るくふるまう15歳の生徒たちが、
実は誰にも言えない悩みを抱え、
合唱に救いを求めていたことを知る。
悲しい過去の出来事からピアノが弾けなくなっていた柏木は、
そんな合唱部の生徒たちとふれあううちに、
過去のトラウマから解放されていくのを感じるのだった。
そして迎えた合唱コンクール当日、
柏木と生徒たちに、さらなる試練が……
原作は、
アンジェラ・アキの名曲「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」を題材にしたTVドキュメントから着想を得た中田永一(人気作家の乙一の別名義)の小説『くちびるに歌を』。
2012年本屋大賞にノミネートされ(第4位)、
読書メーターおすすめランキング第1位(2012年)となるなど、
刊行当時からとても話題になっていたので、
私はすでに読んでいた。
読んではいたが、
世間の評判ほどには感動しなかった。
「よくある話」程度の印象しか残っていなかったので、
映画化された作品を、実はとても心配していたのだ。
だが、それは杞憂であった。
原作が同じ中田永一の映画『百瀬、こっちを向いて。』と同様、
原作よりも数倍良くできた作品(映画)となっていた。
感動した点がいくつかあって、
まずは方言。
私の好きな新垣結衣、木村文乃、木村多江が、
長崎弁を喋っているだけで、ただただ感動であった。(笑)
木村文乃と木村多江は島民の役だったので、
最初から長崎弁を話していたが、
島の出身者だが、東京で暮らしていた新垣結衣演ずる柏木ユリは、
最初は標準語で話している。
だが、生徒たちとふれあい、
きちんと向き合うようになっていくにつれ、
話す言葉の語尾に、長崎弁が混じるようになってくる。
その象徴的な場面が、
「逃げるな!……あんたは一人じゃなか」
というシーン。
これは、予告編にはなく、特報の方にしかないので、
特報の動画をご覧いただきたい。
ねっ、イイでしょう~
木村文乃の長崎弁は、予告編の方にあるので、こちらもぜひ。
方言は聴覚での感動だが、
視覚での感動は、五島列島の風景。
これがとにかく美しい。
鬼岳の草原で風を感じながら歌う合唱部員と柏木ユリ(新垣結衣)。
このときの新垣結衣が、実に魅力的。
こんな美しい先生がいたら、
中学時代は一生の思い出になるだろう。
小説では味わえない感動、
それはやはり音楽。
音楽をテーマにした映画は、
大抵、ラストに、そのクライマックスがある。
『オーケストラ!』しかり、
『舞妓はレディ』しかり、
『ザ・テノール 真実の物語』しかり、
『味園ユニバース』しかり、
『マエストロ!』しかり、
(タイトルをクリックするとレビューを読めます。が、『マエストロ!』だけは映画は見ているがレビューはまだ書いていない)
この映画『くちびるに歌を』でも、ラストのコンクールのシーンには感動させられる。
そして、コンクール終了後にも……
監督は、冒頭でも紹介した三木孝浩。
『陽だまりの彼女』
『ホットロード』
『アオハライド』
など、(タイトルをクリックするとレビューが読めます)
青春映画では定評があり、
どの作品も「愛すべき佳作」といえる作品ばかり。
なかでも今回の『くちびるに歌を』は、
私がこれまで見た三木孝浩監督作品の中では、
いちばん好きかもしれない。
それほど楽しさと喜びを与えてくれたし、
幸福な132分であった。
現代の『二十四の瞳』(1954年)ともいえる『くちびるに歌を』で、
主人公の柏木ユリを演じた新垣結衣。
最初は、冷たい感じの教師で、
慈愛に満ちた高峰秀子演ずる大石先生とは真逆の印象だったが、
次第に生徒たちと心を通わせていくうちに、
優しい笑顔が見られるようになり、
そして、最後には、生徒たちに向かって、
「笑って」
と呼びかけるまでになる。
生徒たちと共に成長していく姿に、
現代の大石先生はかくのごときかなと思ったことであった。
初の教師役であったが、
ピアノ演奏も秀逸で(かなり特訓したらしい)、
新垣結衣にとって、
『トワイライト ささらさや』での母親役に次ぐ、
新境地を開拓した一作になったと言えるだろう。
柏木ユリ(新垣結衣)の親友で、
産休を取ることになった音楽教師・松山ハルコを演じた木村文乃。
最初から彼女がバリバリの長崎弁を喋るのを聞いて、
嬉しくてたまらなかった。
服装や肌色や言葉遣いなど、
いかにも長く島に住んでいる雰囲気を創り出しており、
まったく違和感がなかった。
もう、彼女から目が離せない。
桑原サトルの母・照子を演じた木村多江。
サトルが合唱部の部活ができるように、
心遣いをしてくれる優しい母親の役であったが、
慈愛に満ちたその表情が素晴らしかった。
新垣結衣、木村文乃、木村多江がいる島なら、
私はすぐにでも島に移住するであろう。(コラコラ)
生徒たちの中では、
主役とも言える合唱部の部長・中村ナズナを演じた恒松祐里が良かった。
本作を見るまで、彼女のことは知らなかったが、
演技も上手く、
端正な容姿で、
将来性を強く感じさせられた。
引っ込み思案だが合唱に魅せられた新入部員・桑原サトルを演じた下田翔大。
自閉症の兄の送り迎えをしながら部活を頑張る生徒の役で、
歌も上手く、それ以上に演技も上手く、とても印象に残った。
原作を読んだときのイメージそのままに抜け出してきた少年のように感じた。
合唱部の指揮担当の関谷チナツを演じた葵わかな。
三木孝浩監督作品『陽だまりの彼女』で、
主人公・真緒(上野樹里)の中学生時代を演じていたが、
そのときは上野樹里と雰囲気が似ていて、ビックリ。
本作では、メガネをかけたちょっと地味目の女生徒の役であったが、
『陽だまりの彼女』とはまた違った演技で魅せ、
彼女にも大いに将来性を感じさせられた。
エンドロールでは、
アンジェラ・アキの「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」が流れる。
これまで、この曲は何度も聴いているが、
15歳から遠く離れた世代の私は、
それほど感動したことがなかった。
だが、映画を見て、
見終わって聴いたこの曲に、心底感動した。
「こんなにイイ曲だったんだ~」
と思った。
この感動を、あなたも映画館でぜひ……
長崎ロケの映像が素晴らしかった青春恋愛映画『アオハライド』のレビューで、
私は次のように記している。
三木孝浩監督作品としては、
来年(2015年)2月28日公開予定の『くちびるに歌を』が控えている。
これもまた長崎県(五島列島)が舞台の物語。
私の好きな新垣結衣、木村文乃、木村多江も出演しているので、
必ず見に行くつもり。
その予告通り、さっそく『くちびるに歌を』を見に行ってきた。
(ちなみに私は長崎県佐世保市出身で、長崎県を舞台にした作品や、長崎県でロケした作品はなるべく……っていうか必ず見るようにしているのだ)
長崎県の五島列島にある中五島中学校。
産休を取ることになった親友の音楽教師・松山ハルコ(木村文乃)の代理として、
数年ぶりに生まれ故郷に戻ってきた柏木ユリ(新垣結衣)。
東京でピアニストとして活躍していたという、
美人の臨時教師に興奮する生徒たちであったが、
柏木は、なぜか冷たい態度しか示さず、
ピアノも弾こうとはしなかった。
嫌々合唱部の顧問になった柏木は、
もともと女子だけの合唱部に、男子を入部させ、
混声で全国コンクール出場に臨むという。
男子は、美人の柏木を目当てに入部しただけなので、
練習熱心ではなく、すぐにサボる。
女子部員たちは、イライラがつのり、
合唱部は大混乱。
そんなある日、
柏木は課題曲「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」の練習のため、
“15年後の自分へ手紙を書く”という宿題を出す。
責任感が強い部長の中村ナズナ(恒松祐里)や、
引っ込み思案だが合唱に魅せられた新入部員・桑原サトル(下田翔大)など、
明るくふるまう15歳の生徒たちが、
実は誰にも言えない悩みを抱え、
合唱に救いを求めていたことを知る。
悲しい過去の出来事からピアノが弾けなくなっていた柏木は、
そんな合唱部の生徒たちとふれあううちに、
過去のトラウマから解放されていくのを感じるのだった。
そして迎えた合唱コンクール当日、
柏木と生徒たちに、さらなる試練が……
原作は、
アンジェラ・アキの名曲「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」を題材にしたTVドキュメントから着想を得た中田永一(人気作家の乙一の別名義)の小説『くちびるに歌を』。
2012年本屋大賞にノミネートされ(第4位)、
読書メーターおすすめランキング第1位(2012年)となるなど、
刊行当時からとても話題になっていたので、
私はすでに読んでいた。
読んではいたが、
世間の評判ほどには感動しなかった。
「よくある話」程度の印象しか残っていなかったので、
映画化された作品を、実はとても心配していたのだ。
だが、それは杞憂であった。
原作が同じ中田永一の映画『百瀬、こっちを向いて。』と同様、
原作よりも数倍良くできた作品(映画)となっていた。
感動した点がいくつかあって、
まずは方言。
私の好きな新垣結衣、木村文乃、木村多江が、
長崎弁を喋っているだけで、ただただ感動であった。(笑)
木村文乃と木村多江は島民の役だったので、
最初から長崎弁を話していたが、
島の出身者だが、東京で暮らしていた新垣結衣演ずる柏木ユリは、
最初は標準語で話している。
だが、生徒たちとふれあい、
きちんと向き合うようになっていくにつれ、
話す言葉の語尾に、長崎弁が混じるようになってくる。
その象徴的な場面が、
「逃げるな!……あんたは一人じゃなか」
というシーン。
これは、予告編にはなく、特報の方にしかないので、
特報の動画をご覧いただきたい。
ねっ、イイでしょう~
木村文乃の長崎弁は、予告編の方にあるので、こちらもぜひ。
方言は聴覚での感動だが、
視覚での感動は、五島列島の風景。
これがとにかく美しい。
鬼岳の草原で風を感じながら歌う合唱部員と柏木ユリ(新垣結衣)。
このときの新垣結衣が、実に魅力的。
こんな美しい先生がいたら、
中学時代は一生の思い出になるだろう。
小説では味わえない感動、
それはやはり音楽。
音楽をテーマにした映画は、
大抵、ラストに、そのクライマックスがある。
『オーケストラ!』しかり、
『舞妓はレディ』しかり、
『ザ・テノール 真実の物語』しかり、
『味園ユニバース』しかり、
『マエストロ!』しかり、
(タイトルをクリックするとレビューを読めます。が、『マエストロ!』だけは映画は見ているがレビューはまだ書いていない)
この映画『くちびるに歌を』でも、ラストのコンクールのシーンには感動させられる。
そして、コンクール終了後にも……
監督は、冒頭でも紹介した三木孝浩。
『陽だまりの彼女』
『ホットロード』
『アオハライド』
など、(タイトルをクリックするとレビューが読めます)
青春映画では定評があり、
どの作品も「愛すべき佳作」といえる作品ばかり。
なかでも今回の『くちびるに歌を』は、
私がこれまで見た三木孝浩監督作品の中では、
いちばん好きかもしれない。
それほど楽しさと喜びを与えてくれたし、
幸福な132分であった。
現代の『二十四の瞳』(1954年)ともいえる『くちびるに歌を』で、
主人公の柏木ユリを演じた新垣結衣。
最初は、冷たい感じの教師で、
慈愛に満ちた高峰秀子演ずる大石先生とは真逆の印象だったが、
次第に生徒たちと心を通わせていくうちに、
優しい笑顔が見られるようになり、
そして、最後には、生徒たちに向かって、
「笑って」
と呼びかけるまでになる。
生徒たちと共に成長していく姿に、
現代の大石先生はかくのごときかなと思ったことであった。
初の教師役であったが、
ピアノ演奏も秀逸で(かなり特訓したらしい)、
新垣結衣にとって、
『トワイライト ささらさや』での母親役に次ぐ、
新境地を開拓した一作になったと言えるだろう。
柏木ユリ(新垣結衣)の親友で、
産休を取ることになった音楽教師・松山ハルコを演じた木村文乃。
最初から彼女がバリバリの長崎弁を喋るのを聞いて、
嬉しくてたまらなかった。
服装や肌色や言葉遣いなど、
いかにも長く島に住んでいる雰囲気を創り出しており、
まったく違和感がなかった。
もう、彼女から目が離せない。
桑原サトルの母・照子を演じた木村多江。
サトルが合唱部の部活ができるように、
心遣いをしてくれる優しい母親の役であったが、
慈愛に満ちたその表情が素晴らしかった。
新垣結衣、木村文乃、木村多江がいる島なら、
私はすぐにでも島に移住するであろう。(コラコラ)
生徒たちの中では、
主役とも言える合唱部の部長・中村ナズナを演じた恒松祐里が良かった。
本作を見るまで、彼女のことは知らなかったが、
演技も上手く、
端正な容姿で、
将来性を強く感じさせられた。
引っ込み思案だが合唱に魅せられた新入部員・桑原サトルを演じた下田翔大。
自閉症の兄の送り迎えをしながら部活を頑張る生徒の役で、
歌も上手く、それ以上に演技も上手く、とても印象に残った。
原作を読んだときのイメージそのままに抜け出してきた少年のように感じた。
合唱部の指揮担当の関谷チナツを演じた葵わかな。
三木孝浩監督作品『陽だまりの彼女』で、
主人公・真緒(上野樹里)の中学生時代を演じていたが、
そのときは上野樹里と雰囲気が似ていて、ビックリ。
本作では、メガネをかけたちょっと地味目の女生徒の役であったが、
『陽だまりの彼女』とはまた違った演技で魅せ、
彼女にも大いに将来性を感じさせられた。
エンドロールでは、
アンジェラ・アキの「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」が流れる。
これまで、この曲は何度も聴いているが、
15歳から遠く離れた世代の私は、
それほど感動したことがなかった。
だが、映画を見て、
見終わって聴いたこの曲に、心底感動した。
「こんなにイイ曲だったんだ~」
と思った。
この感動を、あなたも映画館でぜひ……