一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『スマグラー おまえの未来を運べ』 ……今年後半NO.1の傑作かも……

2011年10月30日 | 映画
今年の紅葉はイマイチのようだ。
って、見には行ってないけど……(笑)

紅葉登山した人のHPやブログを見ても、
くすんだ色、褪せた色、ぼやけた色が、ほとんど。
やはり、
夏が猛烈に暑くて、
秋に急激に寒くならないと、
色鮮やかな紅葉は見られないのかも……
って、あまり興味はないけど……(爆)

そういえば、最近、
暑いのか寒いのかはっきりしない日が続いている。
先行き不透明な日本の将来を象徴してるかのよう……

雨の休日。
こういう日に山に登るのも面白いが、
今日は、映画を見に行くことにする。
なんやかんやで、
最近、あまり映画に行けてない。(「それだけ行ってりゃ十分」ってか?)
見たい映画がどんどん貯まってきているので……(笑)

まず、
好きな俳優がたくさん出演している映画
『スマグラー おまえの未来を運べ』
を見たいと思った。
妻夫木聡、永瀬正敏、松雪泰子、満島ひかり、安藤政信……


これだけでも十分凄いのに、
脇役で、高島政宏、松田翔太、大杉漣、阿部力、小日向文世なども出ているのだ。


見ないわけにはいかないだろう。
でも、ハズレということもある。
ブログで論じるほどでもなかったら、もう一作見ようと決めていた。

映画館は人でいっぱいだった。
雨で行き場を失った人々が、(大袈裟な)
「映画でも見ようか……」
と、流れて来たに違いない。

でも、その観客の多くは、
『三銃士 王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』や
『ステキな金縛り』や、
『猿の惑星:創世記』などが目的だったのか、
『スマグラー おまえの未来を運べ』を選んだ人は少なかった。
私を含め、わずか5人。(オイオイ、ちょっと少な過ぎだろう!)
PG-12指定だし、
イタい、グロい……との噂が飛び交っていたし、
まあ、仕方ないか……(笑)

で、映画はどうだったかというと……
これが凄い傑作だったのだ。
今日はもう一作見ようかと思っていたのだが、
「もう、この一作で十分」
と言えるほどの満足感を得たのだった。

砧涼介(妻夫木聡)は、役者志望の25歳フリーター。


役者への夢に挫折し、
パチスロ店でつまらない儲け話に乗って失敗、
多額の借金を背負う。
砧は借金返済のために、
裏社会の便利屋・山岡(松雪泰子)の紹介で、


秘密の運送屋=スマグラーの仕事をすることになる。
運送の仕事を仕切るジョー(永瀬正敏)とジジイ(我修院達也)とともに、
初仕事にかかった砧だが、
依頼された荷物はなんと、田沼組組長(島田洋八)の死体だった。


スマグラーの仕事の仕事は、危険な荷物の運搬と処理。


高額報酬の理由はそこにあったのだ。
一方、組長を失った田沼組の幹部、西尾(小日向文世)、河島(高嶋政宏)らが動き出す。


そして、その様子を冷ややかに見つめる組長の若妻・田沼ちはる(満島ひかり)。


いつしかチャイニーズマフィア最強にして伝説の殺し屋二人組、
背骨(安藤政信)と内臓(テイ龍進)の名前が挙がり、


やがて砧たちのもとに新たな依頼が舞い込む。
それは想像を絶する代物だった。
当然、失敗は許されない。


だが、砧はその人のよさが災いして、人生最悪の失敗をしてしまう。
もはや死を覚悟するしかないのか?
絶体絶命の大ピンチの中、
これまで真剣に生きることを放棄してきた彼が、初めて自分で決意し、
一世一代の賭けに打って出る。
果たしてその運命は……
(ストーリーはパンフレットより引用し構成)


妻夫木聡。
以前、彼のことを、
《彼の優れている点は、個性が強すぎないこと。
 何色にも染まる柔軟さがあり、
 いったん染まると、その色に成りきる力強さも併せ持っている》

と述べた。
今回は、個性的な俳優陣に囲まれ、
一見、彼が不利な状況のように見え、心配したが、
その無色性によって、かえって演技が際立ち、すごく良かった。
石井克人監督は、憧れの監督であったらしく、
「どんな役でもいいからやりたい」
と以前より思っていたようで、その心意気がビシバシを伝わってくるような演技だった。


永瀬正敏。
目の据わりがハンパじゃなかった。
やさぐれ感プンプン。
主人公を食った演技のようでありながら、寸止めでそれは抑えられている。
主人公を引き立てつつ、己の演技はいかんなく発揮している。
神業の演技。
スゴイの一言。


安藤政信。
もう一人の主人公は、間違いなく彼だ。
CGやハイスピードカメラを利用したアクションシーンをスタイリッシュにこなし、
しなる肉体、
松田優作ばりの目のむき方、
どれをとっても文句のつけようがない。
彼の演技を見るだけでも、チケット代は、十分にモトが取れる。




松雪泰子。
もともと漫画原作のキャラクターを演じるのは得意で、
『白鳥麗子でございます!』をはじめ、
これまでにも様々なキャラクターを演じてきている。
今回は、裏社会で生きるゴスロリ女社長役。


原作ではもともと男性の設定だったが、
映画化にあたり、
「お金も大好きだが、かわいいものも大好き」
という美貌の便利屋に変更された。
男ばかりの出演陣の中で彼女を見ると、
なぜかホッとできるから不思議。
そのあたりの効果も監督は狙っていたのだろう。
その期待に応え、彼女も見応えのある演技をしている。


満島ひかり。
いまや、あらゆる監督に引っぱりだこの彼女。
『悪人』(2010年)や『一命』(2011年)での好演が記憶に新しいが、
この作品でも存在感のある演技で魅せる。
抑揚のない声で、棒読みのような喋り方をするのだが、もちろん演技。
組長の若妻役で、特に作品後半には重要な役割を果たす。
彼女が出ているというだけで、その映画を見たいと思う……最近の私は。


その他、
高島政宏、


松田翔太、


大杉漣、


阿部力、


小日向文世、


我修院達也らが、
アクの強い演技で、作品をしっかり支える。


特に、高島政宏は、怪演、いや壊演(私の造語)で、
メッチャ盛り上げる。(拷問シーンはスゴイぞ~)

エンドロールのときに流れるsuperflyの「愛をくらえ」も


死と隣り合わせの闇社会を描いているので、
当然のことながら、暴力シーン満載。
映画に安心と平穏だけを求める人は見ない方がイイが、
秘密の運送屋(スマグラー)と一緒に、闇を突っ走ってみるのも面白いものだ。
万人受けする映画ではないので、年末の賞レースに絡んでくるかは判らないけど、
私の中では、今年後半NO.1の作品かも……
あと2ヶ月あるので断言はできないけれど、傑作であることは間違いない。
石井克人監督、やはり只者ではない。

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