一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『青い塩』 ……シン・セギョンとの衝撃的な出逢い……

2012年05月15日 | 映画
井筒和幸監督作品『パッチギ!』(2005年1月22日公開)を憶えておられるだろうか?
キネマ旬報ベストテン1位、
毎日映画コンクール最優秀作品賞、
ブルーリボン賞作品賞を受賞した、
あの傑作を……
出演者は、塩谷瞬、沢尻エリカ、高岡蒼佑など、
今となっては、お騒がせ俳優ばかり(笑)なのだが、
本当に素晴らしい作品だった。
ことに、あの映画で初めて見た沢尻エリカとの邂逅は、
私にとっては実に衝撃的な出来事であった。


その美しさに圧倒されたし、
作品的にも深い感動を与えてくれた。
あの『パッチギ!』における沢尻エリカは、
(その後の様々なトラブルがあったとしても)
私の胸の中で、初恋の思い出のように、いつまでも輝いている。
なぜ、冒頭で沢尻エリカについて話しているかというと、
映画『青い塩』を見て、
この作品に出ていたシン・セギョンが、
あの『パッチギ!』での沢尻エリカ的衝撃を私に与えてくれたからである。


ソウルの伝説の闇組織から足を洗い、
母の故郷プサンでレストランを開いて、
穏やかに過ごしたいと願うドゥホン(ソン・ガンホ)は、
通い始めた料理教室で少女セビン(シン・セギョン)と出会う。


一見普通の女性に見えるセビンだったが、
その正体は闇組織の便利屋。
ドゥホンの動向を探るために近付いたのだった。
かつては優秀なライフル競技の選手だったが、
ある事件をきっかけに、闇社会へ足を踏み入れた過去を持っていたセビン。
彼女は、ドゥホンの人間的な人柄に触れるにつれ、戸惑いを感じてゆく。


少しずつ距離を縮める2人だったが、ついにセビンはドゥホン暗殺を命じられる。


正体を知りつつも彼女を組織から守ろうとするドゥホン。


スタイリッシュな都市ソウルと美しい塩田風景のプサンを舞台に、
2人の運命が絡み合う……。
(ストーリーはgoo映画より引用し構成)


監督は、大ヒットを記録した映画『イルマーレ』(2001年9月8日公開)で知られるイ・ヒョンスン。
『イルマーレ』は、海辺に建つ一軒家の郵便受けを媒介に、2年の時を隔てて男女が手紙を交わして愛を育むというストーリーで、当時、とても評判になった作品である。


2006年に、キアヌ・リーブスとサンドラ・ブロックでリメイクされたから、ご存じの方も多いと思う。
私もこの作品は何度か見ているが、
ストーリーの素晴らしさもさることながら、
その映像美に深く感動したのを憶えている。
あの作品から11年、
やや長すぎた沈黙を破り、
やっと公開されたのが、『青い塩』なのだ。

主演は、ソン・ガンホと、シン・セギョン。
ソン・ガンホについては、有名すぎるほど有名なので、
解説の必要はないとは思うが、ちょっとだけ紹介。

【ソン・ガンホ】
1967年1月17日生まれ。
1991年、兵役後に演劇界に入る。
彼の舞台を観たイ・チャンドン監督に抜擢され、『グリーン・フィッシュ』(1997)でスクリーンデビュー。
日本で韓国映画ブームのキッカケとなった大ヒット作
『シュリ』(1999)
『JSA』(2000)
で、人気実力派俳優としての地位を不動のものとする。
その後、韓国映画史に残るポン・ジュノ監督作品
『殺人の追憶』(2004)
『グエムル-漢江の怪物』(2006)
などの話題作に次々と出演。
海外での評価も高く、韓国を代表する俳優のひとりである。


この『青い塩』でも彼の存在感はピカイチ。
ソン・ガンホが出ているというだけで、
安定感が増し、作品が締まる。
シン・セギョンが魅力的に感じられたのも、
彼が隣りにいればこそ……だったと思われる。
とにかく、彼が出ていれば、それだけでその映画は「見る価値あり」である。


もう一人の主人公セビンを演じたシン・セギョンは、
冒頭にも述べたように、私にとっては沢尻エリカ級の衝撃であった。
彼女に関しては、ほととんど知らなかったので、嬉しい出逢いであった。
『青い塩』公式HPにある彼女のプロフィールには次のように記してある。

【シン・セギョン】
1990年7月29日生まれ。
1998年、9歳のときに人気ミュージシャン・ソテジのアルバムモデルを飾り、デビュー。
その後、
『マイ・リトル・ブライド』(2004)、
『シンデレラ』(2006)
など子役としての活躍を経て、いったん学業に専念。
2009年、TVドラマ『善徳女王』で王女の子供時代を演じて芸能界に復帰。
『明日に向かってハイキック』(TV/2009~2010)でブレイクし、人気を博す。
本作『青い塩』では、これまでの清純なイメージを打破し、
影のある孤独な少女を演じて話題を集めた。


本作『青い塩』ではクールな印象であったが、
彼女のかつての画像を検索してみると、
この作品に至るまでの素顔は『青い塩』のときとはまったく違っていて、
むしろまだ幼さが残っている感じの清純な印象であった。
それが本作で一変。
彼女をよく知る韓国のファンの間では、
デヴィッド・フィンチャー監督作品『ソーシャル・ネットワーク』(2010年)で清純な女の子を演じていたルーニー・マーラーが、『ドラゴン・タトゥーの女』で、ピアスにタトゥー、大胆なショートカット、鋭い目つきの女性に大変身した際の「超ド級の衝撃」であったかもしれない。
ストーリーは違うけれど、役柄がなんとなく『ドラゴン・タトゥーの女』におけるルーニー・マーラーと類似点があり、私も映画を見ている間中、ルーニー・マーラーや沢尻エリカが頭の中をぐるぐる回転していた。(笑)


主人公2人の他では、
ドゥホン(ソン・ガンホ)の元部下・エック役のチョン・ジョンミョンが良かった。
この作品で、女性ファンが急増することだろう。


塩辛いストーリーであるが、
ラストは、やや甘塩的で、
物足りなさを感じる人もいるかもしれないが、
私はそれほどでもなかった。

前作に増しての映像美、
それからシン・セギョンの美の衝撃、
それだけで十分に見る価値のある作品である。

2012年3月17日(土)に全国公開された作品であるが、
佐賀では遅れて現在「イオンシネマ佐賀大和」にて公開中。
ぜひぜひ。

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