一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『春待つ僕ら』 ……土屋太鳳の真っ直ぐな気持ちが伝わってくる青春映画……

2018年12月22日 | 映画


あなしん原作の同名人気コミックを、


土屋太鳳主演で実写映画化した青春ラブストーリーである。


所謂“キラキラ青春映画”なので、当初は見る予定はなかった。
ある日、用事で佐賀市内に出たとき、
空き時間ができたので、
〈映画でも見ようか……〉
と思ったのだが、
映画館は年末年始恒例の冬休みお子様映画祭りに突入しており、(笑)
正直、見たい映画があまりなかった。
で、失礼ながら、
〈『春待つ僕ら』でも見るか……〉
と思った次第。
1年前に見た『8年越しの花嫁 奇跡の実話』(2017年12月16日公開)での土屋太鳳の印象がすこぶる良かったし、
何事も真剣に取り組む土屋太鳳が主演なら、
悪い作品になってはいないだろうと思ったのだ。
その程度の軽い気持ちだったので、
あまり過剰な期待はせず、
映画館に足を踏み入れたのだった。



春野美月(土屋太鳳)は、
高校入学を機に友人を作りたいと思うが、
なかなか周囲になじめなかった。


ある日、アルバイト先に、
バスケ部の“イケメン四天王”こと、
浅倉永久(北村匠海)、
若宮恭介(磯村勇斗)、
多田竜二(杉野遥亮)、
宮本瑠衣(稲葉友)
の4人が現れ、美月の平凡だった日常をひっかき回す。


最初は4人を嫌っていた美月であったが、
一見チャラいが、実はバスケに真剣で、仲間を大事にする4人の素顔を知り、


次第に心を許していく。


「大事なものがきっと見つかると思うよ」
と、なにかと美月を励ましてくれる永久に好意を抱き始めたとき、


美月は、幼なじみの神山亜哉(小関裕太)と再会する。


アメリカ帰りの彼は、有名高校のバスケ選手として活躍中で、
美月に猛アタックを仕掛けてくる。


そんな亜哉を見て、穏やかではない自分に気持ちに気づく永久。


お互いを意識しつつ、
全国大会で対戦する永久と亜哉。


そんな二人を見て、美月は複雑な気持ちを抱くが、
一方で、弱い自分を乗り越えるため、
あることに挑戦するのだった……




友達のいない女子高校生とイケメンバスケ男子が織り成す恋。
ありがちな題材、ありがちな設定、ありがちなキャスティング……
なにもかにもが“ありがち”なのであるが、
平川雄一朗監督は、この“ありがち”映画を、
実に魅力的に撮っていて、感心させられた。


平川雄一朗が演出したTVドラマには、
『ROOKIES』(2008年、TBS)
『JIN-仁-』(2009年・2011年、TBS)
『とんび』(2013年、TBS)
『A LIFE〜愛しき人〜』(2017年、TBS)
など優れたものが多いし、
映画でも、
『陰日向に咲く』(2008年1月26日公開)
『ROOKIES〜卒業〜』(2009年5月30日公開)
『ラブコメ』(2010年9月25日公開)
『ツナグ』(2012年10月6日公開)
『僕だけがいない街』(2016年3月19日公開)
など、話題作を監督している。
確かな演出力が、平凡な題材を非凡なものにしていると思った。



春野美月を演じた土屋太鳳。


1995年2月3日生まれの23歳(2018年12月現在)なので、
正直、高校1年生には見えないが、(それは他の出演者にも言えることではあるが……)
この程度のことは、韓国映画や台湾映画では“あたりまえ”なので、
私はあまり気にはならなかった。
それよりも、土屋太鳳が主人公・春野美月のまっすぐな気持ちを巧く表現していて、
感動させられるシーンが多かった。


いつまでも高校生の役をキャスティングさせられるということは、
土屋太鳳が、“純粋”な気持ちを表現できるたぐいまれな女優である証であるのだろう。
今年放送されたTVドラマ『チア☆ダン』(2018年7月13日~9月14日、TBS)も良かったし、
何事にも一所懸命なところと、
その真剣な想いが見る者にも伝わってくるところが、
なによりも彼女の優れている点だと思った。
そんな彼女の長所が存分に活かされているのが、本作『春待つ僕ら』と言えよう。



浅倉永久を演じた北村匠海。


やはり、昨年見た『君の膵臓をたべたい』(2017年7月28日公開)での印象が強いが、
その他にも、
TVドラマ『仰げば尊し』(2016年7月~9月、TBS)や、
映画『勝手にふるえてろ』(2017年12月23日公開)など、
優れた作品に多く出演している。
本作でも、
幼い頃に両親を亡くしてから、ひたすらバスケットに打ち込んできた無口な高校生を、
とても上手く演じていた。
彼も、すでに、青春映画には欠かせない俳優になっている。



美月のクラスメイト・山田レイナを演じた佐生雪。


“イケメン四天王”が趣味で、
彼らをカメラで撮ることに情熱を燃やしている女子高生の役であったが、
存在感があり、とても印象に残った。


土屋太鳳とは、
映画『トリガール!』(2017年9月1日公開)や、
TVドラマ『チア☆ダン』(2018年7月13日~9月14日、TBS)でも共演しており、
相性も良さも抜群。
彼女を見ているだけで、爽やかな気持ちにさせられた。



若宮恭介を演じた磯村勇斗。
『恋は雨上がりのように』(2018年5月25日公開)
での印象が強く残っているが、


今年はTVドラマでの活躍が目立っていて、
『今日から俺は!!』(2018年10月14日~12月16日、日本テレビ)


『SUITS/スーツ』(2018年10月8日~12月17日、フジテレビ)
などで、存在感のある演技をしていた。


本作では、『今日から俺は!!』ほどのインパクトのある役ではなかったが、
彼のファンにとっては、見逃せない作品になっていたと思う。



その他、
美月のバイト先の先輩・柏木ナナセを演じた泉里香や、


亜哉の母で、神山医院の医師・神山ユーコを演じた緒川たまきが、
高校生ばかりの映画の中で、大人の雰囲気を漂わせて魅力的だった。



エンドロールで主題歌「Anniversary」が流れるが、
これは、土屋と北村が組んだ音楽ユニットTAOTAKによるもの。


これがなかなか好い。


善人ばかりが登場するので、
血気盛んな若者たちや、
競争社会で奮闘している中年世代にはやや物足りなく感じるかもしれないが、
私のような老人には、なんとも清々しさを感じさせる好い作品であった。
ぜひぜひ。

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