一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

モトーラ世理奈の主演作『風の電話』がベルリン国際映画祭で国際審査員特別賞受賞!

2020年03月01日 | 映画
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モデルで女優のモトーラ世理奈が主演を務める諏訪敦彦監督最新作『風の電話』が、


第70回ベルリン国際映画祭のジェネレーション部門で、国際審査員特別賞を受賞した。
授賞式は、現地時間2月28日(日本時間2月29日)に行われ、
脚本を担当した狗飼恭子が出席した。




※ジェネレーション部門とは、
「Generation 14plus」と「Generation Kplus」という2つのコンペで構成されており、
発掘作品や若者が出演する作品を対象としたもの。
諏訪監督作品で、同部門の選出は、2009年の『ユキとニナ』以来2度目となる。


『風の電話』(2020年1月24日公開)は、


東日本大震災で被災した岩手県大槌町に設置された、今は亡き大切な人と想いをつなぐ電話「風の電話」を題材に描いたロードムービー。






このブログでは、1月26日に、
……モトーラ世理奈が天才女優であることを証明した傑作……
とのサブタイトルを付けて、レビューを書いている。(コチラを参照)



先に行われた(2月23日20時、日本時間2月24日6時)『風の電話』のプレミア上映では、


会場となるUrania theaterの800席を超える客席は満席となり、
ジェネレーション部門らしく10代を含めた幅広い年代の観客が集まった。
上映が終了すると、観客からは3分間を超える拍手喝采で、
上映後に登壇した諏訪敦彦監督、モトーラ世理奈、渡辺真起子は、
ベルリンの映画ファンから熱い歓迎を受け、


上映後に行われたティーチインでは、
質問に対する回答の一つひとつに盛大な拍手や、
ときには笑いが巻き起こるとても温かい雰囲気の場となった。


質疑応答の一部を紹介すると、

「ストーリーはどのように作り上げたのですか?」
という質問に対し、諏訪敦彦監督は、

ハルいう一人の少女の旅を通して、現代の日本のポートレイトを撮りたいと思いました。実際、津波からは9年という時間が経ちました。9年経って見た目にはその傷は見えなくなっているが、人の心にはまだ傷が残っていて、建物を建てかえるように綺麗には出来ないと感じています。実際、その傷が見えなくなっているからこそ、映画の中で様々な時間とというものを見せたり感じさせることが出来るのではないかと感じました。

と答え、
「この映画を撮る中で、どのような影響がありましたか?」
という質問に対し、渡辺真起子は、

私のパートは広島ですが、広島で起こった戦争の時の苦しみは広島で生まれていない私にとっても、今でもまだ感じるとても大きなことだと思います。だけども、今、毎日は普通に過ぎていき、小さく体の中に何かが刺さっているような感じでした。それから東北で起きたことに関しては、身近にまだあることで、今でもその場所に行かなくても、まだその時の夢を見たりして過ごしています。それでも日常は過ぎていきます。その中で、この作品に関わるということも日常的に関わりながら、作れて行けたのではないかと思います。

モトーラ世理奈は、

私は2011年には12歳で小学校に行っていて、その時は何か大変ことが起きたと感じていても、私自身は何かをなくしたわけでもなくて、遠くで起きていることと思っていました。でも、私は20歳になって、この映画の撮影で初めて被災地に行ったとき、自分は12歳の時からすごく変わったけど、被災地は何も変わっていなくて、そのことが衝撃的でした。私の年代は、震災があったことをしっかり覚えている年齢だけど、学校とか勉強とか友達のこととかで自分のことに精一杯で、今まで震災に対して意識することができていなかったと気づいて、今私たちの世代がそのことに気づくことが大事だと思いました。この映画で、私たちの世代にもそのことが伝わってほしいと思うようになり、それが撮影で日本中を旅することで感じたことでした。

と、答えている。



授賞式で、審査員からは、

我々は穏やかでありながらも壮大なロードムービーに大変心を打たれました。そして、辛いけれど希望のある忘れることのできないラストシーン。この困難な時代に、喪失の空虚さと人と人との繋がりの温かさの両方を共存させることが、これまで以上に重要になってきています。この映画は優雅さと力の両方を持って、見事にそれを成し遂げています。

との講評があり、
狗飼恭子が、諏訪敦彦監督とモトーラ世理奈のコメントを代読した。




以下は2人のコメント全文。

《諏訪敦彦監督》
東京で受賞の知らせを聞き、とても感動しています。この日本のささやかな祈りを受け止めてくださった審査員の皆さんに感謝します。
「風の電話」は現実に存在しています。きっと今日も、傷ついた誰かが訪れ、亡くなった大切な人に話しかけていることでしょう。我々を信頼し、この映画の制作を支援していただいた「風の電話」の設置者である佐々木格(ささきいたる)さんに感謝を送りたいと思います。
そして、何よりも、このベルリンの地での初めての上映後、鳴り止まぬ拍手と励ましの声で、まるで家族のようにこの映画が暖かく迎えられた瞬間を私は忘れることができません。映画は観客のものです。ハルとともに旅をしてくれたベルリンの人たち、世界中の傷ついた若者たちに、感謝とともにこの賞をお送りしたいと思います。

《モトーラ世理奈》
嬉しいです。
すごく嬉しいです。
諏訪監督に出逢えて、私にとって素敵なことがたくさんです。諏訪監督、ありがとうございます。そして、おめでとうございます。
ベルリン映画祭のプレミア上映で、観客の皆さんが、風の電話に流れている風を、しっかりと感じてくれたんだと実感してとても感動しました。
私が演じた、ハルにこれからも世界中の人々の、心の中で旅をし続けてほしいと願っています。


昨年(2019年)から、
「モトーラ世理奈は凄い!」
と言い続けてきた私だが、
彼女の主演作が受賞したことが何よりも嬉しい。
上映終了している映画館もあるが、
まだ上映中の映画館も多い。(コチラを参照)
ぜひぜひ。
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