今日(4月24日)は或る事を予定していたのだが、
雨で流れてしまった。
で、映画を見に行くことにしたのだが、
春休みからGWにかけてのこの時期、
お子様向けのアニメなどが多く、
見たい作品があまりない。
そんな悪条件の中、(笑)
今年(2013年)の2月16日に公開された韓国映画『王になった男』が、
遅ればせながら、
私の行きつけの映画館で上映されていたので、
それを見ることにした。
絢爛豪華な王朝時代を舞台に、
実在した朝鮮15代目の王・光海の秘密に迫る、
史実にフィクションを取り混ぜた歴史大作で、
韓国本国では2012年9月13日に公開され、
観客動員1230万人を超える国民的大ヒットを記録。
2012年10月30日に行われた大鐘賞では、
史上最多となる主要15部門を受賞したとか。
大統領選挙イヤーになると、
政治的な映画が(プロパガンダ映画とまでは言わないが)現れるアメリカと同じく、
お隣、韓国でも、大統領選挙前には、この手の映画が現れる傾向にある。
昨年(2012年)の韓国の大統領選挙は、
2012年12月19日に投開票が行われたが、
その3ヶ月前に公開されたのが、本作『王になった男』。
現在の韓国の置かれた状況は、
そのまま『王になった男』の時代状況と重なり合う部分が多いし、
理想の政治的リーダーシップを訴える本作は、
韓国民の圧倒的な共感を呼んだのも肯ける気がする。
日本でも2013年2月16日より全国90館で公開され、
女性層を中心に観客動員数を伸ばし、
興行収入も公開後18日間で2億5000万を超えるほどのヒットとなった。
1616年、
暴君の悪名高き朝鮮第15代王の光海君(イ・ビョンホン)は、
権力争いの渦中にあり、常に暗殺の危機にさらされていた。
そんな折、彼とそっくりの容姿を持つ道化師ハソン(イ・ビョンホン)が、
王の影武者として宮中に上がることになる。
ある日、病床についたことをきっかけに、
妓生宿で腐敗した権力の風刺をしていたハソンが、
極秘の代役として王にすり替わる計画が実行される。
偽物の王が、本物の王に成り済まして政治の矢面に立つ15日間。
その中でハソンは、最初は戸惑いながらも、
次第に、操り人形ではない、民のことを考える真の王として周りを魅了していく……
主演は、イ・ビョンホン。
日本のオバサマたちに絶大な支持をもつ韓流スターだが、
かくいう私も彼を嫌いではない。
キッカケは、映画『甘い人生』。
2005年5月3日に見たのだが、
その日の映画ノートに、私は次のように記している。
とてつもない傑作だった。
もっと早くに見るべきだった。
イ・ビョンホン主演ということで、少しあなどっていた。
どうせ、ご婦人相手の甘ったるい娯楽作だと思っていた。
それにしても、これほどの傑作だったとは……。
見て良かった!
これを見ずして韓国映画は語れないと思う。
それほどの傑作だ!
「アクション・ノワール」を謳っていたが、こんなに凄いとは!
日本のアクション映画が、子どものケンカに思えてきた。
これでもか、これでもかと、残虐なシーンが続く。
もう終わりだろうと思うと、まだ先がある。
果てが見えず、ゾッとする。
壮絶な暴力シーンの連続だが、映像は美しい。
それに、哲学がある。
単なるアクション映画ではないのだ。
音楽もイイ。
クラシックが効果的に使われている。
ショパンの「バラード第1番ト短調、Op.23」が流れ出したときは、体がシビれてしまった。
シネコンでは座席指定だ。
館内を見回すと、ご婦人の団体ばかり。
ほとんどが、イ・ビョンホン目当ての客だ。
私の隣にも、中年のご婦人が座った。
映画が始まり、残虐なシーンが始まると、このご婦人は目を手で覆って見ようとはしない。
大きな音がすると、「ギャッ」と言って腰を浮かす。
つまり飛び上がるのだ。
イ・ビョンホンが殴られると、「あっ」「いや」「だめ」「死んじゃう」と声をだす。
場所が違えば、誤解を招きそうな言葉だ。
とにかくウルサイのだ。
「うるさい」は「五月蠅い」と書く。
館内にはたくさんの蠅が飛び回る。
映画が終わり、エンドロールが始まると、ご婦人達は一斉に立ち、出口へと進む。
「おいおい」と私は心のなかで叫ぶ。
「エンドロールが終わるまで座っていろよ!」と言いたいが、ゾロゾロ団体で移動するから言えない。
エンドロールが終わるまでが映画じゃないか。
事実、この映画には、エンドロールが終わったときに、ちょっとした仕掛けがある。
それまで含めて『甘い人生』だろ!
イイ映画を見たときほど余韻にひたっていたいのに…。
ご婦人方は、映画を見に来たのではなく、イ・ビョンホンを見に来たのであった。
そんな悪条件のなかで見たのに、『甘い人生』は傑作だった。
もう一度見たい!
ご婦人方がいない所で――。
他では、『夏物語』(2007年1月27日公開)という映画も印象に残っている。
「夏」という言葉が好きで、
ていうか「夏」のイメージが好きで、
昔からタイトルに「夏」のついた小説や映画を好んで読んだり見たりしている。
映画で言えば、
『おもいでの夏』『チクソルの夏』『解夏』『菊次郎の夏』『姑獲鳥の夏』『夏の嵐』『あの夏、いちばん、静かな海。』など、個性的かつ魅力的な作品が多い。
イ・ビョンホン主演映画『夏物語』も、傑作とは言えないものの、
夏のイメージは鮮烈で、長く印象に残る作品であった。
映画『王になった男』でも、イ・ビョンホンは、
理想を見失った暴君・光海君と、
王の影武者であり正義感あふれる庶民・ハソンの一人二役を、
実に見事に演じきっている。
彼なくして、この映画のヒットはなかったことだろう。
王妃役のハン・ヒョジュも良かった。
ドラマ『トンイ』『華麗なる遺産』などで人気の女優であるが、
二人の王の愛を受ける王妃を、とても魅力的に演じていた。
透明感のある美と、妖艶さをも併せ持ち、
泥沼のような欲にまみれた政治家や役人のなかにあって、
清浄な白い蓮の花のようであった。
その他、
王の代役を計画し、教育係となる忠臣ホ・ギュン役のリュ・スンリョン、
王の正体を知りながらも、影武者を懸命に助けるチョ内官役のチャン・グァン、
王の護衛官・ト部将役のキム・イングォン、
複雑な家庭環境を背負った毒味役の少女サウォル役のシム・ウンギョンなどが、
素晴らしい演技で作品を盛り上げていた。
とても面白い作品なので、
「あ~楽しかった~」
「イ・ビョンホンが素敵だったね~」
って、それで終わってもいいのだけれど、
この映画の歴史的背景を知っていると、
また違った見方もできるので、
最後にちょっとそのことに触れておきたい。
【映画の歴史的背景】
光海君の即位の前の14代王・宣祖の時代。
豊臣秀吉が大陸制覇の野望を抱いていることを危惧した朝鮮王朝は、
二大派閥の東人派と西人派から日本へ使者を送った。
西人派は「攻めてくる可能性が高い」と判断したのに対し、
東人派は「攻めてこない」と判断した。
当時は、東人派の勢力が優勢だったため国防の強化を見送ったのだ。
しかし、1592年豊臣秀吉による朝鮮半島への攻撃が始まる。
壬辰倭乱(文禄の役)の勃発である。
戦が始まると太平の世が続いていた朝鮮王朝と、
戦国時代が終わったばかりの日本とは兵力、武力に歴然の差があった。
王・宣祖は即座に最北へ避難したが朝鮮王朝は、中国大陸の明などの援軍により豊臣軍の攻撃を食い止めた。
1598年、豊臣秀吉の死により戦は終結。
この戦で活躍した光海君は15代王となった。
映画の中に出てくる北人派とは東人派から分かれた派閥のことである。
元は東人だったのが、北人と南人に分裂。
さらに北人は大北派と小北派に分かれた。
光海君を支えたのは“大北派"で、彼は小北派や西人派から命を狙われた。
よって、毒殺を極度に恐れていた。
(パンフレットより引用し構成)
この時代にも、日本が強く関わっていたことを、忘れてはならないだろう。
陸続きの巨大な国・明と、
海を隔てて隣り合い侵略を企む日本に挟まれ、
苦悩する姿は、今の韓国の姿とも重なり合うし、
映画のなかでの光海君のあの決断は、
今の韓国民をも勇気づけるものを確かに持っていたと思う。
歴史大作となると、
むやみやたらと上映時間の長い、
重厚で堅苦しい作品になることが多いが、
この『王になった男』は、
笑わせる場面が多く、
感動させられる場面はさらに多く、
上映時間も131分と長すぎず短すぎず、
とても楽しませてくれる作品であった。
映画『王になった男』を見て、
私も「一日の王」になれました~ってね
雨で流れてしまった。
で、映画を見に行くことにしたのだが、
春休みからGWにかけてのこの時期、
お子様向けのアニメなどが多く、
見たい作品があまりない。
そんな悪条件の中、(笑)
今年(2013年)の2月16日に公開された韓国映画『王になった男』が、
遅ればせながら、
私の行きつけの映画館で上映されていたので、
それを見ることにした。
絢爛豪華な王朝時代を舞台に、
実在した朝鮮15代目の王・光海の秘密に迫る、
史実にフィクションを取り混ぜた歴史大作で、
韓国本国では2012年9月13日に公開され、
観客動員1230万人を超える国民的大ヒットを記録。
2012年10月30日に行われた大鐘賞では、
史上最多となる主要15部門を受賞したとか。
大統領選挙イヤーになると、
政治的な映画が(プロパガンダ映画とまでは言わないが)現れるアメリカと同じく、
お隣、韓国でも、大統領選挙前には、この手の映画が現れる傾向にある。
昨年(2012年)の韓国の大統領選挙は、
2012年12月19日に投開票が行われたが、
その3ヶ月前に公開されたのが、本作『王になった男』。
現在の韓国の置かれた状況は、
そのまま『王になった男』の時代状況と重なり合う部分が多いし、
理想の政治的リーダーシップを訴える本作は、
韓国民の圧倒的な共感を呼んだのも肯ける気がする。
日本でも2013年2月16日より全国90館で公開され、
女性層を中心に観客動員数を伸ばし、
興行収入も公開後18日間で2億5000万を超えるほどのヒットとなった。
1616年、
暴君の悪名高き朝鮮第15代王の光海君(イ・ビョンホン)は、
権力争いの渦中にあり、常に暗殺の危機にさらされていた。
そんな折、彼とそっくりの容姿を持つ道化師ハソン(イ・ビョンホン)が、
王の影武者として宮中に上がることになる。
ある日、病床についたことをきっかけに、
妓生宿で腐敗した権力の風刺をしていたハソンが、
極秘の代役として王にすり替わる計画が実行される。
偽物の王が、本物の王に成り済まして政治の矢面に立つ15日間。
その中でハソンは、最初は戸惑いながらも、
次第に、操り人形ではない、民のことを考える真の王として周りを魅了していく……
主演は、イ・ビョンホン。
日本のオバサマたちに絶大な支持をもつ韓流スターだが、
かくいう私も彼を嫌いではない。
キッカケは、映画『甘い人生』。
2005年5月3日に見たのだが、
その日の映画ノートに、私は次のように記している。
とてつもない傑作だった。
もっと早くに見るべきだった。
イ・ビョンホン主演ということで、少しあなどっていた。
どうせ、ご婦人相手の甘ったるい娯楽作だと思っていた。
それにしても、これほどの傑作だったとは……。
見て良かった!
これを見ずして韓国映画は語れないと思う。
それほどの傑作だ!
「アクション・ノワール」を謳っていたが、こんなに凄いとは!
日本のアクション映画が、子どものケンカに思えてきた。
これでもか、これでもかと、残虐なシーンが続く。
もう終わりだろうと思うと、まだ先がある。
果てが見えず、ゾッとする。
壮絶な暴力シーンの連続だが、映像は美しい。
それに、哲学がある。
単なるアクション映画ではないのだ。
音楽もイイ。
クラシックが効果的に使われている。
ショパンの「バラード第1番ト短調、Op.23」が流れ出したときは、体がシビれてしまった。
シネコンでは座席指定だ。
館内を見回すと、ご婦人の団体ばかり。
ほとんどが、イ・ビョンホン目当ての客だ。
私の隣にも、中年のご婦人が座った。
映画が始まり、残虐なシーンが始まると、このご婦人は目を手で覆って見ようとはしない。
大きな音がすると、「ギャッ」と言って腰を浮かす。
つまり飛び上がるのだ。
イ・ビョンホンが殴られると、「あっ」「いや」「だめ」「死んじゃう」と声をだす。
場所が違えば、誤解を招きそうな言葉だ。
とにかくウルサイのだ。
「うるさい」は「五月蠅い」と書く。
館内にはたくさんの蠅が飛び回る。
映画が終わり、エンドロールが始まると、ご婦人達は一斉に立ち、出口へと進む。
「おいおい」と私は心のなかで叫ぶ。
「エンドロールが終わるまで座っていろよ!」と言いたいが、ゾロゾロ団体で移動するから言えない。
エンドロールが終わるまでが映画じゃないか。
事実、この映画には、エンドロールが終わったときに、ちょっとした仕掛けがある。
それまで含めて『甘い人生』だろ!
イイ映画を見たときほど余韻にひたっていたいのに…。
ご婦人方は、映画を見に来たのではなく、イ・ビョンホンを見に来たのであった。
そんな悪条件のなかで見たのに、『甘い人生』は傑作だった。
もう一度見たい!
ご婦人方がいない所で――。
他では、『夏物語』(2007年1月27日公開)という映画も印象に残っている。
「夏」という言葉が好きで、
ていうか「夏」のイメージが好きで、
昔からタイトルに「夏」のついた小説や映画を好んで読んだり見たりしている。
映画で言えば、
『おもいでの夏』『チクソルの夏』『解夏』『菊次郎の夏』『姑獲鳥の夏』『夏の嵐』『あの夏、いちばん、静かな海。』など、個性的かつ魅力的な作品が多い。
イ・ビョンホン主演映画『夏物語』も、傑作とは言えないものの、
夏のイメージは鮮烈で、長く印象に残る作品であった。
映画『王になった男』でも、イ・ビョンホンは、
理想を見失った暴君・光海君と、
王の影武者であり正義感あふれる庶民・ハソンの一人二役を、
実に見事に演じきっている。
彼なくして、この映画のヒットはなかったことだろう。
王妃役のハン・ヒョジュも良かった。
ドラマ『トンイ』『華麗なる遺産』などで人気の女優であるが、
二人の王の愛を受ける王妃を、とても魅力的に演じていた。
透明感のある美と、妖艶さをも併せ持ち、
泥沼のような欲にまみれた政治家や役人のなかにあって、
清浄な白い蓮の花のようであった。
その他、
王の代役を計画し、教育係となる忠臣ホ・ギュン役のリュ・スンリョン、
王の正体を知りながらも、影武者を懸命に助けるチョ内官役のチャン・グァン、
王の護衛官・ト部将役のキム・イングォン、
複雑な家庭環境を背負った毒味役の少女サウォル役のシム・ウンギョンなどが、
素晴らしい演技で作品を盛り上げていた。
とても面白い作品なので、
「あ~楽しかった~」
「イ・ビョンホンが素敵だったね~」
って、それで終わってもいいのだけれど、
この映画の歴史的背景を知っていると、
また違った見方もできるので、
最後にちょっとそのことに触れておきたい。
【映画の歴史的背景】
光海君の即位の前の14代王・宣祖の時代。
豊臣秀吉が大陸制覇の野望を抱いていることを危惧した朝鮮王朝は、
二大派閥の東人派と西人派から日本へ使者を送った。
西人派は「攻めてくる可能性が高い」と判断したのに対し、
東人派は「攻めてこない」と判断した。
当時は、東人派の勢力が優勢だったため国防の強化を見送ったのだ。
しかし、1592年豊臣秀吉による朝鮮半島への攻撃が始まる。
壬辰倭乱(文禄の役)の勃発である。
戦が始まると太平の世が続いていた朝鮮王朝と、
戦国時代が終わったばかりの日本とは兵力、武力に歴然の差があった。
王・宣祖は即座に最北へ避難したが朝鮮王朝は、中国大陸の明などの援軍により豊臣軍の攻撃を食い止めた。
1598年、豊臣秀吉の死により戦は終結。
この戦で活躍した光海君は15代王となった。
映画の中に出てくる北人派とは東人派から分かれた派閥のことである。
元は東人だったのが、北人と南人に分裂。
さらに北人は大北派と小北派に分かれた。
光海君を支えたのは“大北派"で、彼は小北派や西人派から命を狙われた。
よって、毒殺を極度に恐れていた。
(パンフレットより引用し構成)
この時代にも、日本が強く関わっていたことを、忘れてはならないだろう。
陸続きの巨大な国・明と、
海を隔てて隣り合い侵略を企む日本に挟まれ、
苦悩する姿は、今の韓国の姿とも重なり合うし、
映画のなかでの光海君のあの決断は、
今の韓国民をも勇気づけるものを確かに持っていたと思う。
歴史大作となると、
むやみやたらと上映時間の長い、
重厚で堅苦しい作品になることが多いが、
この『王になった男』は、
笑わせる場面が多く、
感動させられる場面はさらに多く、
上映時間も131分と長すぎず短すぎず、
とても楽しませてくれる作品であった。
映画『王になった男』を見て、
私も「一日の王」になれました~ってね