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一昨年に創設した「一日の王」映画賞も、
第3回となった。
ブログ「一日の王」管理人・タクが、
たった一人で選出する日本でいちばん小さな映画賞で、
何のしがらみもなく極私的に選び、
勝手に表彰する。(笑)
作品賞は、1位から10位まで、ベストテンとして10作を選出、
監督賞、主演女優賞、主演男優賞、助演女優賞、助演男優賞は、
5名ずつを選出し、
最優秀を、各部門1名ずつを決める。(赤字が最優秀)
普段、レビューを書くときには点数はつけないし、
あまり映画や俳優に順位はつけたくはないのだが、
まあ、一年に一度のお祭りということで、
気軽に楽しんでもらえたら嬉しい。
【作品賞】(タイトルをクリックするとレビューが読めます)
①『怒り』
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②『湯を沸かすほどの熱い愛』
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③『溺れるナイフ』
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④『ディストラクション・ベイビーズ』
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⑤『淵に立つ』
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⑥『リップヴァンウィンクルの花嫁』
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⑦『葛城事件』
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⑧『ヒメアノ~ル』
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⑨『永い言い訳』
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⑩『海よりもまだ深く』
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今年は、例年以上に傑作、秀作が多く、この他にも、
『セトウツミ』
『殿、利息でござる!』
『日本で一番悪い奴ら』
『二重生活』
『シン・ゴジラ』
『オーバー・フェンス』
『だれかの木琴』
『何者』
『ふたりの桃源郷』
『クリーピー 偽りの隣人』
『尾崎支配人が泣いた夜 DOCUMENTARY of HKT48』
なども強く印象に残っており、
一年を通して大いに映画を楽しむことができた。
【監督賞】
山戸結希『溺れるナイフ』
中野量太『湯を沸かすほどの熱い愛』
深田晃司『淵に立つ』
岩井俊二『リップヴァンウィンクルの花嫁』
李相日『怒り』
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2016年に上映された映画で、「最も好きな作品は?」と訊かれたら、
私は、『溺れるナイフ』と答えるような気がする。
山戸結希監督作品『溺れるナイフ』は、それほどの好印象を私に残してくれた。
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「Yahoo!映画」のユーザーレビューでは「2.33点」(2017年1月18日現在)と低いが、
これは逆ステマに遭った為。
昨年は、(それが宣伝であると悟られないように宣伝を行う)ステルスマーケティング(略称「ステマ」)が話題になった年で、
映画などの口コミサイトに、5点満点が大量投下されたり、(あのアニメ作品等)
逆ステマとして、1点が大量投下されたりした。
『溺れるナイフ』は、この逆ステマの犠牲になった映画で、
公開前に(コメントなしの)1点が大量投下されていた。
山戸結希監督は、1989年生まれの、まだ20代の若き監督だ。
妬みや誹りに負けず、今後も頑張って欲しいという意味を込めて、
彼女に監督賞を贈りたいと思う。
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【主演女優賞】
筒井真理子『淵に立つ』
黒木華『リップヴァンウィンクルの花嫁』
宮沢りえ『湯を沸かすほどの熱い愛』
常盤貴子『だれかの木琴』
宮崎あおい『怒り』
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最優秀主演女優賞は、黒木華か、宮沢りえにしようと思っていたが、
『淵に立つ』の筒井真理子が今でも強く印象に残っており、
今後の期待を込めて、彼女(筒井真理子)を選んだ。
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【主演男優賞】
三浦友和『葛城事件』
森田剛『ヒメアノ~ル』
菅田将暉『溺れるナイフ』『セトウツミ』
綾野剛『日本で一番悪い奴ら』
柳楽優弥『ディストラクション・ベイビーズ』
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最優秀主演男優賞は、
とてつもない怪演ぶりで我々の度肝を抜いた、
三浦友和、森田剛、柳楽優弥の三氏で迷ったが、
甘いマスクの若き頃から、長いキャリアを経て、
ひとつの到達点として『葛城事件』の葛城清という役があったように思え、
三浦友和に決めた。
山口百恵の相手役をしていた頃は、
今の三浦友和を想像することは難しかったし、
素晴らしい男優となったことを素直に喜びたい。
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【助演女優賞】
りりィ『リップヴァンウィンクルの花嫁』
Cocco『リップヴァンウィンクルの花嫁』
松岡依都美『海よりもまだ深く』『日本で一番悪い奴ら』『永い言い訳』
篠原ゆき子『二重生活』『湯を沸かすほどの熱い愛』『続・深夜食堂』
杉咲花『湯を沸かすほどの熱い愛』『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』
最優秀助演女優賞は、
それぞれ甲乙つけがたく、
Cocco、松岡依都美、篠原ゆき子、杉咲花の誰が受賞してもおかしくなかったが、
やはり、『リップヴァンウィンクルの花嫁』でのりりィが忘れ難く、彼女に決めた。
昨年(2016年)11月11日に亡くなったが、64歳とはあまりにも早い死であったし、
彼女を忘れない為にも、最優秀助演女優賞受賞者として、記憶しておきたいと思った。
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【助演男優賞】
竹原ピストル『永い言い訳』
村上虹郎『ディストラクション・ベイビーズ』
妻夫木聡映画『殿、利息でござる!』『ミュージアム』『怒り』
リリー・フランキー『二重生活』『SCOOP!』
池松壮亮『だれかの木琴』『続・深夜食堂』『ディストラクション・ベイビーズ』他
最優秀助演男優賞は、
『永い言い訳』での好演が光った竹原ピストルに決めた。
ミュージシャンであるが、
俳優としても、熊切和嘉監督作品を中心に映画に出演していて、
私も、このブログにレビューを書いている2作、
『海炭市叙景』(2010年)
『私の男』(2014年)
などにも出演していた。
この時は脇役だったので、相応の印象しかなかったが、
今回はかなり重要な役で、ややぎこちなさはあったものの、
大宮陽一という男を、リアルな生活感のある男として演じ、素晴らしかった。
最近は生活感のない“のっぺらぼう”の男優が多いので、
リリー・フランキーやピエール瀧のように、俳優を超越した男優として、
竹原ピストルには、これからも映画に出演して欲しいと思った。
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2016年の印象としては、
『この世界の片隅に』『シン・ゴジラ』などの内向きの映画が多く、
話題にもなり、興行的にも成功した。
だが、是枝裕和監督が、
日本の映画業界はどんどん閉じ始めている。海外で取材を受けた時、僕はそう答えるようにしています。良くも悪くも、日本映画は国内のマーケットだけで投資を回収できる可能性がある。なので、海外に出て行こうとする意欲が作り手にも配給会社にもありません。東宝、東映、松竹、角川など日本の大手の映画会社は特にそうです。
そうなると企画が国内で受けるものに特化してくる。この状況に強い危機感を感じます。海外に出て行くことがエライわけでもスゴイわけでもないけれど、40歳以下の若手映画監督の名前を海外で聞くことは、ほとんどありません。このままでは、日本映画自体が世界から忘れ去られてしまう。
と危機感をあらわにしたように、
日本映画界の“ガラパゴス化”が一段と進んだようにも見えた。
そうした中、
インディペンデント映画で高い評価を得てきた若き監督たちの、
商業映画デビューが相次いだのも、昨年の特徴であった。
真利子哲也監督の『ディストラクション・ベイビーズ』(2016年5月21日公開)、
中野量太監督の『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016年10月29日公開)、
山戸結希監督の『溺れるナイフ』(2016年11月5日公開)
など、内向きでない作品が、映画ファンを大いに楽しませてくれた。
深田晃司監督の『淵に立つ』が第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で審査員賞を受賞するというニュースも、我々を喜ばせた。
昨年も映画を大いに楽しませてもらった。
今年(2017年)も、見たい映画がたくさん控えている。
ワクワクしながら待ちたいと思う。
そして、
映画の口コミサイト等の評価に惑わされずに、
自分の目でしっかりと見て、自分の考えで、
レビューを書いていこうと決意した。
乞うご期待。