原題:『Le Fils de l'Autre』
監督:ロレーヌ・レヴィ
脚本:ロレーヌ・レヴィ/ナタリー・ソージョン/ノアム・フィトゥシ
撮影:エマニュエル・ソワイエ
出演:エマニュエル・ドゥヴォス/パスカル・エルベ/ジュール・シトリュク/マハディ・ザハビ
2012年/フランス
イスラエルが描かれる映画に関する覚書
テルアビブに住むフランス系イスラエル軍で高級将校を務めるアロン・シベールと医師オリットの息子であるヨセフはミュージシャンになる夢を持っており部屋にはビートルズやジミ・ヘンドリックスなどのポスターが貼ってあるが、厳格な父親のためだったのか兵役検査を受けて空軍に入隊しようとする。ところが思わぬことに彼は実の息子ではないことが判明し、その結果は、ヨセフよりも先に父親に報告される。18年前の湾岸戦争時に同じ病院で出産していたパレスチナ人のライラ・アル・ベザーズとサイードの次男として生まれたヤシンと避難した際に入ったシェルター内で取り違えられていたのである。やがてその病院でシベール夫妻とヨルダン川西岸に住むアル・ベザーズ夫妻が会うことから物語が大きく展開することになる。
イスラエルに関する映画は必ず眉に唾を塗って観ることが必要だと思う。例えば、本当はシベール夫妻の息子であるヤシンはフランスで大学の医学部に進学する優秀な息子であるが、アル・ベザーズ夫妻の本当の息子であるヨセフはビーチでアイスクリームを売ることさえ上手くいかないほど出来は決して良くない。ラストにおいても浜辺で暴漢に襲われて重傷を負うのはヤシンではなくヨセフである。ヤシンのヨセフに対する上から目線のモノローグも含めて何となくイスラエル側に加担して描いているように見えるのは私だけなのであろうか?
「イスラエル映画」を観る時、世界的なマーケットを勘案するならば、「ユダヤ人寄り」になることは仕方がないのかもしれない。「アラブ人寄り」では興行的に成り立たないからであるが、このような傾向が続く限り、どのような佳作が発表されるとしてもパレスチナ・イスラエル問題は解決する兆しさえ見えないであろう。