原題:『かくしごと』
監督:関根光才
脚本:関根光才
撮影:上野千蔵
出演:杏/中須翔真/佐津川愛美/酒向芳/木竜麻生/和田聰宏/丸山智己/河井青葉/安藤政信/奥田瑛二
2024年/日本
罪滅ぼしとしての認知症について
今年5月に公開された『不死身ラヴァーズ』(松居大悟監督)と同様に本作も記憶喪失を巡る作品であるが、『不死身ラヴァーズ』はファンタジーだからどうにでもなるが、本作のように「現実」となるとなかなか問題の解決は難しい。
原作の『嘘』における最大の嘘が犬養洋一(=里谷拓未)の嘘だったとするならば、本作の最大の嘘は主人公の里谷千紗子の父親の里谷孝蔵の付いたものではなかっただろうか。例えば、洋一の父親の犬養安雄が千紗子の家を訪れて諍いが起こった時に、もしも本当に認知症だったならばあれほど俊敏に行動できるかと疑問を抱いたからである。ラストで施設に入れられた安雄のショットが挿入されていたが、どうも安雄は娘の千紗子に対する罪滅ぼしのために認知症の振りをして実家の戻らせて、喜ぶと思って千紗子の「嘘」に付き合ったように見えるのである。