MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『ある子供』

2016-01-02 23:10:57 | goo映画レビュー

原題:『L'Enfant』
監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ/リュック・ダルデンヌ
脚本:ジャン=ピエール・ダルデンヌ/リュック・ダルデンヌ
撮影:アラン・マルコァン
出演:ジェレミー・レニエ/デボラ・フランソワ/ジェレミー・スガール
2005年/ベルギー

「効率的」に生きる危うさについて

 明らかに20歳の主人公のブリュノの分が悪いのであるが、ブリュノには彼なりの考えはあり、例えば、恋人のソニアとの間に生まれたばかりのジミーという赤ん坊を勝手に養子に出してしまうのも、お金持ちの家庭に引き取られた方がジミーのためになり、同時に大金が手に入る自分たちも助かるという考えがあったのであるが、ソニアが反対したらブリュノはすぐにジミーを取り戻す。あるいは仲間のスティーヴ・ランビオンと共にバイクに乗りながら女性のカバンをひったくるものの、車で追いかけられ海岸に隠れて、低体温症で小屋にスティーヴを残したまま土に埋めたお金を掘り返して小屋に戻ろうとした際に2人の警官が小屋からスティーヴを連れ出す様子を遠くから見つめたままだったが、後から自ら警察に出頭するのはスティーヴを見捨てた訳ではないことを証明するためである。
 ブリュノはただ「効率的」に生きようとしただけなのであるが、それを観ている者たちはそんなブリュノを愚かだと笑い飛ばせるだろうか。私たち大人ででさえ効率性を追求しながら生きており、いつブリュノのような過ちを犯してもおかしくはないからで、決して悪い男ではないからソニアは刑に服しているブリュノに面会しに来たはずなのである。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする